音が変わった! 2012年はAVアンプの当たり年(前編):麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/2 ページ)
AVアンプの新製品が相次いで登場している。今年はハイレゾ音源対応などがトレンドになっているが、一方で“音質”で昨年までとは一線を画す製品がいくつもある。その理由をAV評論家、麻倉怜士氏に解説してもらった。
ベテランエンジニアがイチから音を見直したデノン
麻倉氏:デノンは、10万円台の「AVR-2113」、5万円クラスの「AVR-713」、15万円台の「AVR-3313」とラインアップをそろえましたが、中でも非常に感心したのが「AVR-3313」です。
デノン「AVR-3313」は7.2ch対応のAVアンプ。AirPlayやハイレゾ音源再生もサポート。さらに夏にファームウェアアップデートを行い、192kHz/24bit対応(WAV、FLAC)やApple Losslessの再生、ギャップレス再生などに対応する予定だ。7月上旬発売予定で、価格は15万7000円
通常、AVアンプの試聴テストには2つのパターンがあります。CDで2chの音を聞くこと、そしてBDを使ってマルチチャンネルをチェックすることです。AVR-3313では、まず最初のCDの音を聴いたときに感心しました。試聴に使ったのは、定番のHolly Cole(ホリー・コール)の「I Can See Clearly Now」でしたが、冒頭のベースの音がこれまでと明らかに違いました。安定した低音で量感と同時にパンチもありました。腰があるといいますか、低域の密度感が実に高いのです。
もう1つ感心したのがボーカルの切れ味。シャープなのにきつくならず、クオリティーの高さを感じさせます。従来機では間接音の広がりが少なく、すぐに消え去るような印象だったのですが、今回は間接音の“噴霧”とでも言いましょうか、濃厚な音を味わえます。実はこれ、デノンの2chアンプ製品の“S1”に通じるような音なのです。
デノンの担当者に話を聞くと、ずばり「音を良くしました」と言っていました。これまではやることが多すぎて、目前の目標を消化するのに大変だったのですが、やはり市場調査などの結果を見ると、音に対する不満の声があったそうで、会社として真剣に取り組むことになったそうです。
具体的には、2chアンプとAVアンプを兼務しているベテランエンジニアが、最初からAVアンプの音質回路の設計に携わったそうです。これまではAVアンプ専門のエンジニアが基本設計をして、最終の詰めでベテランエンジニアがチェックするというやり方を採っていたのですが、今回は部品選定からレイアウト、基本設計、そして最終的な音の仕上げまでベテランエンジニアが主体的に関わり、とくに仕上げでは低音の量感と立ち上がり感を両立させる、電源を充実させるなどオーディオ的な考え方を色濃く反映させました。
対照的に中高域ではフォーカス感と解像度を徹底的に上げ、さらに音に安定感を加える。これは低音にも通じるのですが、チャンネル間の格差を小さくするなどを目指したといいます。やはりホリー・コールで聞いた冒頭のベースが“ガツン”とくる感じ、立ち上がりの鋭さなどは、今回の施策によって音が改善された証拠であると感じましたね。
私は、ビックカメラ有楽町店で毎月1回、オーディオ機器のイベントを行っていて、6月24日(日)には「AVR-3313」を取り上げる予定です。もう5年も続けているイベントですが、実はAVアンプを扱うのは初めてです。それこそ、音が良くなったから、扱えるのです。
後編では、オンキヨー、パイオニア、ヤマハなどを解説していきましょう。
関連記事
- デノン、3系統のHDMI出力を備えたAVアンプ上位モデル「AVR-3313」
ディーアンドエムホールディングスは、デノン・ブランドのAVアンプ上位モデル「AVR-3313」を7月上旬に発売する。 - デノン、AirPlay対応の低価格AVアンプ「AVR-2113」「AVR-1713」
デノンは、4Kアップスケーリングなど映像面を強化した7.1ch対応AVアンプ「AVR-2113」および5.1ch対応のエントリー機ながらネットワークオーディオ機能が充実した「AVR-1713」を5月中旬から順次発売する。 - オンキヨー、ネットワークオーディオを大幅強化したAVセンター「TX-NR818/NR717」
オンキヨーは、AVアンプの新製品「TX-NR818」「TX-NR717」を6月上旬に発売する。「e-onkyo music」が開始する世界初のドルビーTrueHDによる5.1ch音楽配信に対応。 - ヤマハ、AirPlay対応のミドルクラスAVアンプ「RX-V773」を発表
ヤマハは、7.1ch対応のAVアンプ新製品「RX-V773」を6月下旬に発売する。ネットワークオーディオ機能の強化に加え、音場補正などにも手も加えたミドルクラスだ。 - エントリー機まで192kHz/24ビット対応、パイオニアがAVアンプ2機種を発表
パイオニアのAVアンプ新製品2機種が登場した。エントリー機の「VSA-822」までAirPlayやDLNA 1.5をサポートしたほか、上位モデルの「VSA-922」では自動化されたフェイズコントロールを新搭載。 - ヤマハ、ネット機能充実のスタンダードAVアンプ「RX-V473/V573」
ヤマハは、AVアンプの新製品「RX-V473」「RX-V573」を5月下旬に発売する。実売5〜6万円という価格帯ながら、PCオーディオ/ネットワークオーディオ機能を充実させた。 - ヤマハ、定価4万2000円のエントリーAVアンプ「RX-V373」
ヤマハは、リーズナブルなAVアンプ「RX-V373」を4月上旬に発売する。iPhone/iPod連携を強化したほか、新しいエコモードも搭載。ホームシアター入門機として訴求する。 - 小さくても“豊か”な音に、ソニーのAVアンプ「TA-DA5700ES」
思うような場所にスピーカーを置けなくても理想的な音場、音量を上げなくても豊かな音。AVアンプは、われわれが日ごろ感じる不満を解消してくれるようになった。ソニーのAVアンプ開発者に詳しく話を聞いた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.