「絶対、テレビをコモディティにはしない」、ソニーの意志表示
ソニーが発表したブラビアの新ラインアップは、2つの4Kテレビを頂点に“大画面化”と“高付加価値化”を印象付けるものだった。テレビ事業の2013年度黒字化も見えてきたという同社の戦略は?
ソニーは4月11日、2機種の4Kテレビを含む“BRAVIA”(ブラビア)新製品を発表し、ラインアップを一新した(→関連記事)。同社は、赤字の続くテレビ事業について、「単に数を追うのではなく、各商品の付加価値を上げる」として、シェア争いから距離を置く姿勢を明らかにしていたが、今回の新製品はそれを体現したラインアップといえる。
新製品は40V型以上の大画面テレビがほとんどで、それ以下のサイズは32V型の「KDL-32W600A」のみ。目に見えて大型化が進んだ。また「EX540シリーズ」の22V型のように継続して販売するモデルはあるが、年末に発売した84V型のKD-84X9000をのぞけば、昨年は6シリーズ14モデルあったラインアップを、4シリーズ10モデルにまで絞り込んだことになる。
シリーズごとに「4K対応モデル」や「フルHDプレミアムモデル」など、位置付けが明確になったのは、「1つ1つを強い商品に育てる」という意思表示。同時にすべての製品に映像エンジン「X-Reality PRO」を搭載し、内蔵の無線LANでスマート機能に対応するなど、スペックの“底上げ”も図っている。
「2012年には固定費やオペレーションコストの削減が予定通り進んだ。2013年度の黒字化計画も達成する自信がある」(ソニー業務執行役員 SVP、ホームエンタテインメント&サウンド事業本部の今村昌志本部長)。
4Kテレビも50V型はインチ1万円以下に
注目の4Kテレビは55V型と65V型の2サイズで、84V型と合わせて3サイズをラインアップすることになった。実売想定価格で65V型が75万円前後、55V型が50万円前後と、55V型でようやく「インチ1万円」を切るレベルだが、「昨年末に投入した84V型4Kテレビは、価格(168万円)もあって販売台数は多くはないが、購入者の満足度は非常に高い」という。今村氏は、購入者から寄せられたコメントを示しながら、「ユーザーの潜在ニーズに応えることができれば、高付加価値製品の需要は見込める」と自信を見せた。
潜在ニーズの1つは、もちろん高精細な大画面=4Kテレビだ。まだ4Kのネイティブコンテンツは手に入らないが、それだけでは4Kテレビを否定する理由にならないという。例えば55V型を超えるような大画面テレビに現在の地上デジタル放送を映すと明らかに解像度が不足して見えるが、フルHDテレビではそれ以上を望めない。しかし4Kテレビであれば、アップコンバートと超解像技術の質次第で満足度は飛躍的に高まる。業務用の4Kカメラや映画事業も手がけるソニーのX-Reality PROには、ネイティブ映像と比較しながら超解像のアルゴリズムを検討できるといった強みもあるという。
4Kネイティブコンテンツについても、「総務省が来年度中に4Kの試験放送を実施する方向で検討を始めるなど、新しい動きが出てきている。そう遠くない時期にお茶の間に4K放送が届けられるのではないか」(同社)という見通しを示した。ただし、年初の「International CES」でソニー・ピクチャーズと発表した自社による4K映画のネット配信については、「年度内に北米で配信事業を立ち上げることが第一。その後で、ほかの国への展開を考えていく」と慎重な姿勢を見せている。
このほか、同じくCESで発表した「Mastered in 4K」Blu-ray Disc(収録はフルHD)に関しては、「逐次、お届けしたい」と話す。Mastered in 4Kは、4Kマスタリングとx.v.YCCの拡張色域を組み合わせ、「トリルミナスディスプレイ」採用のテレビに表示すると、より正確な色再現が可能になる。ブラビアの新製品では、4Kテレビの「X9200Aシリーズ」と、フルHDのプレミアムモデル「W900Aシリーズ」が対応している。
今村氏は、「トリルミナスカラー」に対応した「ハンディカム」や「α」「サイバーショット」を例に挙げ、「ソニーは、ユニークな技術を全社を挙げて推進する」と意気込む。「絶対にテレビをコモディティにはしない。やることはたくさんある」。
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