スーパーハイビジョンは2016年に間に合うのか? NHK技研公開:麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/3 ページ)
恒例の「技研公開2013」が東京・世田谷のNHK放送技術研究所で始まった。今回は2016年に実用化試験放送が早まったスーパーハイビジョンについて、AV評論家・麻倉怜士氏に解説してもらおう。
――音のほうはいかがでしょう
麻倉氏:音も忘れてはいけません。今回展示された「音響一体型145インチSHVディスプレイ」も面白かったです。この145インチのプラズマ自体はパナソニックと共同開発したもので、去年も展示されていました。今回は、その画面の周囲に116個ものスピーカーを並べ、スピーカーアレーを構築しています。背後にある12個のサブウーファーと合わせ、ユニット数は計128個にもなります。
麻倉氏:また、画面の周りにあるスピーカーのうち、8つの白いユニットはリアやサイドの音を出すそうです。つまり、画面と一体化したフロントだけの省スペースシステムで、コンパクトに高い臨場感を得ることができます。SHVの22.2chをそのまま家庭にレイアウトするのは大変なことですから、そういう意味で重要な提案といえるでしょう。サイドとリアが合わせて8個とは少ないのでは? と聞いてみたら、レベルを上げているそうです。
今回の展示から、3年後の実験放送に対して“映像”についてはある程度のメドが立ったと思います。一方の“音”についても今後、関連企業からの提案合戦が始まるかもしれませんね。
4Kはどうなる?
――技研公開の展示では、あくまでも8Kが中心でした。実際にテレビも登場している4Kは、どう位置付けられるのでしょう。
麻倉氏:NHK放送技術研究所としては8Kを推進していますが、UHDTVの規格には4Kと8Kの両方があります。そして冒頭で触れた会見の中で、藤沢所長は「4Kと8Kが混在する」という予測を示しました。ただ、放送局としては4Kと8Kの設備を両方整えるのは大変ですから、8K撮影を基本とし、用途によって4KにダウンコンバートすればよいというのがNHK技研のロジックです。
冷静に考えれば、例え2014年に4K放送が開始されても、2016年に8Kが始まるとなれば、放送設備に二重の投資が必要になってしまいます。技研所長の言葉という点を差し引いても、8Kをベースにする方向は理にかなっていると思います。ただし、業界では8Kがそんなに早く普及すると見る人はあまり多くありません。
麻倉氏:今回、技研とアストロデザインが共同開発した小型の8Kカメラヘッド(記録などの機能は持たないカメラ)が展示されました。コンパクトなキューブ型の筐体(きょうたい)で、重量はわずか2キロ。そのサイズを生かし、ロボットカメラや水中撮影への活用なども期待されています。
藤沢氏は、「これからはビジネスとして新しい切り口を持たせる」と発言していましたが、小型化によって8Kカメラの使用範囲やシチュエーションが広がり、さらに別の何かに活用する新しいアイデアも出てくるでしょう。そうした展開も含め、総合的な撮影機器の普及戦略が求められると思います。
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