ハイレゾ再生の新しい潮流(前編)――NASが変わった! プレーヤーも変わる:麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/2 ページ)
“ハイレゾ”が新世代オーディオのキーワードとなり、対応機器の幅も広がっている。AV評論家・麻倉怜士氏による連載「デジタル閻魔帳」。今回は最新かつ注目のハイレゾ再生デバイスを紹介してもらった。
バッファローのオーディオ専用NAS
麻倉氏: “表に出せるNAS”というコンセプトを先に実現したのが、バッファローが2月下旬に発表した「DELA」(デラ)ブランドのNAS 2製品です。アルミ筐体(きょうたい)を採用し、TAOCのインシュレーターを付けたり、堂々とコンポーネント機器の1つとしてAVラックに設置できるようにしました。しかも、音と操作性が本当に良い。
バッファローの「DELA」(デラ)は、世界で初めてNASメーカーによって“オーディオ機器”として開発されたNAS。1TバイトのSSDを搭載した「N1Z」と2TバイトHDDを内蔵した「N1A」の2機種をラインアップしている
これまでネットワークオーディオには、バッファローやアイ・オー・データ機器、QNAPなどのNASがよく使われていましたが、決してオーディオ用途を考えたものではありませんでした。しかしオーディオメーカーにはNAS開発のノウハウがなかったため、仕方なく既存の製品を使っていたのです。
そのために私にもトラブルもありました。よく憶えているのは、一昨年の「インターナショナル・オーディオショー」で、あるブースのNASのコンセントを誰かが抜いてしまい、起動しなくなってしまったことです。しかも再起動にはファームウェアの再インストールが必要でした。後でバッファローに話を聞いたところ、ファームウェアもHDD上に格納されているため、しっかり終了プロセスを行わないと再起動できなくなってしまうのだそうです。そんな仕様はオーディオではあり得ないと怒るのは天に唾かもしれません。だって、そんな使われ方は絶対にしないIT用途のNASなのですから、そもそも怒るのが間違っているでしょう。
一方、「DELA」ブランドのNASでは、これらの問題をすべて解決し、さらに音的にも素晴らしいものに仕上げました。驚かされるのは、それが“徹底”していること。オーディオ的に良いとされることをすべてやっています。相当、バッファローもIT的な性根を改めたと見えます。
一般的なNASはなるべく軽量に作ろうとしますが、DELAは逆に天版を重くするなどオーディオ製品に求められる安定性を第一に考えました。SSDも読み出しスピードを追うより“コンスタントに読み出せる”仕組みを作り、ファームウェアはNANDフラッシュに格納することで、たとえ電源を突然切られたとしても壊れない仕様になっています。前面には有機ELディスプレイを備え、曲名やパラメーターも表示できます。そしてタブレットからの操作も可能にしました。
音にも驚かされます。実際にこれまでの定番的NASから「N1A」に交換したところ、音の透明感や伸びやかさが全く違いました。やはり専用に開発され、オーディオに適した仕組みを持つ製品は全く違います。目からウロコが落ちるようでした。一方、上位機の「N1Z」は、「がんばっている」というより、力を抜いても素直に良い音が出てくるといった印象。楽器のような、あるいはハイエンドオーディオのような音の出方といえば分かりやすいかもしれません。ですから、これからネットワークプレーヤーとNASの導入を考えている人は、一般的なNASはお勧めできません。
バッファローでは、まず他社製ネットワークプレーヤーのコンパニオンデバイスとして販売する方針で、15万円前後のHDDモデル「N1A」と80万円弱のSSDモデル「N1Z」をラインアップしました。かなり高価ですが、上位モデルはLINNの「KLIMAX DS」(250万円)などとの組み合わせを想定しているそうですから、それだけの音を求める人たちにはちょうどいいでしょう
また、DELAは背面に3つのUSB端子を持っていますが、このうち1つがUSB出力になる方向が考えられています。つまりのPC代わりにDACと接続し、そのままハイレゾ再生が行えるというものです。さらにタブレット操作でハイレゾ音源配信サイトから直接購入することも可能にする計画で、実現すればPCなしでハイレゾ音源の購入から再生に至る環境が完成します。PCオーディオの面倒なところは、ほとんどPCの設定で、それこそ本が1冊書けるくらいですから、新しい形の提案にも期待したいですね。
――後半ではポータブル環境の製品を取り上げます。
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