8Kの“フルスペック”カメラも登場――2020年のテレビの姿が見えるNHK技研公開
「NHK放送技術研究所」の一般公開が今週末に開催される。2020年の東京オリンピックを目指し、8Kの120Hz撮影に対応したカメラや1億3300万画素イメージセンサーなども登場した。
東京・世田谷の「NHK放送技術研究所」が今年も5月29日から一般に公開される。5月27日にはプレスプレビューが行われ、技研の藤沢秀一所長が2020年の実用化を目指す8Kスーパーハイビジョンなど展示のポイントを紹介した。「8Kに関しては番組技術から伝送、受信機まで要素技術をあますことなく展示している。2020年の東京オリンピックでは、こうした8Kを見ることができる」(藤沢氏)。
今回の技研公開で展示される研究成果は31項目で、そのうち半数を8K関連技術が占めている。一方で試験放送の開始が間近に迫っている4Kをメインにした研究発表はゼロだ。8Kスーパーハイビジョンを開発・推進する技研のスタンスを改めて浮き彫りにした。
その8Kは、2年後の2016年に実用化試験放送を開始し、東京オリンピックが開催される2020年ので本放送を目指している。今回は「フルスペック」の8K撮影を可能にするカメラ、1本のケーブルで8K映像信号を伝送できる光インタフェース、単板で8K撮影を可能にする1億3300万画素のイメージセンサーなど、カメラ技術を中心にさまざまな要素技術が展示され、試験放送に向けた準備が順調に進んでいることを伺わせた。
8Kの“フルスペック”とは、「UHDTV」(=海外におけるSHVの規格、呼び方)のITU-R勧告のBT.2020や国内規格のARIB STD-B56で標準化された主要パラメーターのうち、画素数が7680×4320ピクセル(=8K)、毎秒120フレーム、RGB各色12bit、そして広色域表色系のものを指す。展示されたカメラには静岡大学と共同開発したイメージセンサーと色分解プリズムを搭載し、より鮮やかな色も表現できるようになったという。
一方の光インタフェースは、24芯の光マルチリンクケーブルを用いており、伝送容量は1芯あたり10Gbps。フルスペック8K映像信号(約144Gbps)を1本のケーブルでディスプレイに映し出すことができる。コネクター部は一般的なBNCタイプだ。なお、このインタフェースは2014年3月にARIB STD-B58として規格化されている。
このほかにも2016年の試験放送で使われる符号化方式(MPEG-H HEVC/H.265)や高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式も展示。三菱電機と開発したHEVCリアルタイムエンコーダーは、H.265の仕様に正式に準拠した(昨年は最終版ではなかった)。さらに8K時代のHybridcastや8Kの先を行く裸眼立体視テレビなど、展示内容は幅広い。
また、技研講堂で上映される恒例「8Kスーパーハイビジョンシアター」では、2013年に東京で行われたミラノ・スカラ座来日公演の「リゴレット」をハイライト上映する(約10分)。世界最高峰と言われるイタリアオペラのステージを撮影したのは、技研が開発した「シアターカメラ」。3300万画素の高精細映像と22.2ch音声で「講堂が世界一の劇場に早変わりしたかのような臨場感」を楽しめるという。
NHK放送技術研究所の一般公開は、5月29日(木)から6月1日(日)まで(28日は招待者内覧会)。開場時間は10時〜17時までとなっている。
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