4Kネイティブ映像がもたらす“リアリティー”の世界:麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/3 ページ)
6月2日にスタートした4K試験放送「Channel 4K」。さっそくシャープ「TU-UD1000」を自宅シアタールームに導入したAV評論家・麻倉怜士氏にその魅力を聞いた。
「熊川哲也 Kバレエカンパニー『くるみ割り人形』赤坂sacas バージョン」(TBS)
麻倉氏: 以前、NHK放送技術研究所のリポートで「8Kのオペラはあまりズームしない」と言いましたが、今回の「くるみ割り人形」も同様でした。ステージものは実験的といいますか、今の段階ではフィックスに近いカメラワークで、観客席の一番良い席に座っているように見えます。ただ、将来的にはズームもするでしょう。フルHDへの移行期もそうでしたから。
そうすると今後、4Kテレビに欲しいのは、画面の一部をズームする機能です。解像度が高くなれば、広角で撮影した映像から一部を切り出しても十分に美しく見ることができます。ディレクターズインテンション(制作者の意図)からは離れてしまうかもしれませんが、見る側としてはとはズームしたいときもあります。リモコン操作で注目したい部分を大きく表示できると良いと思います。
「大人の極上ゆるり旅 4K版」
麻倉氏: 最後に取り上げるのは、テレビ東京です。関東一円の紀行番組が得意なテレビ東京は、4K放送でもお手軽なハンディーで撮影した紀行番組を作成しました。ノリは現在の番組とまったく同じです。
今回は鎌倉・江ノ島の冬紀行ですが、正直、4Kの良さがどこにあるのか分かりにくいですね。白飛びも多く、解像度も甘い印象。150インチスクリーンから4メートル離れて視聴したときは4Kという感じがしませんでした。しかしスクリーンに近づくと、4Kらしさもそれなりに感じられました。撮り方はフルHDと変わりませんが、この番組は意識的に画面に近づくと良いと思いました。そうした点を含め、放送局はいろいろな実験をしているのではないでしょうか。
――今後の番組で注目作はありますか?
やはり期待は日本映画衛星放送の「史上最高画質!ゴジラ4Kプロジェクト」です。放送時間が28分なので本編ではないようですが、オリジナルネガを基本とした現存する最良のフィルム原版を、1コマ1コマ、4Kスキャニングを行い、「誰も見たことのないゴジラ」を蘇らせました(編集部注:同番組は7月25日から放送されています)。あとは、放送日は公開されていませんが、スカパー!制作のポール・マッカートニーライブです。これは是非みたいと思います。
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