唯一の“4Kテレビ”――東芝「65Z10X」で高画質BDを堪能する方法:山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(2/2 ページ)
東芝「65Z10X」をじっくり試聴する機会を得た。最近お気に入りの映画BD「鑑定士と顔のない依頼人」を多彩な画質調整項目を駆使してその高画質ぶりを味わい尽くし、そのの類稀な表現力の豊かさに再び感銘を受けることになった。
次に調整すべきは「コンテンツモード」。「オート」から「シネマ」を選び、その先の「4KマスターBD」を選択する。「鑑定士と顔のない依頼人」は4Kデジタルカメラで収録されており、フィルムグレイン(粒状性)が存在しない超ローノイズ作品なのだが、「Z10X」はこういうていねいな4Kマスタリングが施された最新映画作品がもっとも映える「4KマスターBD」ポジションを用意しているのだ。確かに「オート」から「4KマスターBD」に変更するだけで、より自然でしっとりとした質感の映像に変貌することが分かる。
このBlu-ray Diac再生において、一皮むけたよりクリアーな画質に変貌させたのが「ピュアダイレクト」ポジションへの変更だった。「映像調整」から「プロ調整」に入り、「1080p 画質モード」を「オート」から「ピュアダイレクト」に変更するのである。こうすることで、「Z10X」の画質を司る2基ある映像処理エンジンの前段をジャンプ、後段の画質エンジンにダイレクトに入ることで、フル12bit映像処理が可能になるのだ。
「4KマスターBD」と「ピュアダイレクト」設定で観る「鑑定士と顔のない依頼人」はほんとうに素晴らしかった。微小振幅のディティールをきめ細かく描き分け、名画の数々に圧倒され、目を潤ませ、ほんのりと頬を赤らめるヒロインの肌のテクスチャー表現など、画面をポーズさせてしばし眺めていたいほどなのである。
「Z10X」は、ホワイトバランスを決定づける「色温度」設定(デフォルトの「02」が基準色温度に近い6500ケルビン相当)の切替えやハイライト部のホワイトバランスをきめ細かく追い込めるRGBドライブの個別設定などが可能。また、平均輝度レベルの低い映像内の白を持ち上げる「ピーク輝度復元」や「ハイダイナミック復元」、液晶のホールドぼやけを低減する「インパルス」モードなど興味深い画質調整項目がある。
「鑑定士と顔のない依頼人」のBlu-ray Discを観ながら、それぞれの機能をオン/オフして画質を精査していったが、最終的には4K倍速モードを「オリジナル」から「インパルス」に変更するだけに止めた。
「映画プロ」モードに入り、「4KマスターBD」「ピュアダイレクト」そして「インパルス」設定にすることで、「65Z10X」は映画BD「鑑定士と顔のない依頼人」を前人未到の境地を思わせる超高画質映像で楽しませてくれたのである。
とくに色合いの美しさとナチュラルさは息をのむほど。「Z10X」のカラーマネージメント手法はとても興味深く、昨年のフルHDモデル「Z8X」から導入された「最明色」コンセプトに基づいて色合いを調整している。
これは「光の反射によって得られる物体色には、物理的な鮮やかさの限界がある」という科学的知見に基づくもの。その限界を超えると「反射」ではなく、その物体自体が光っているように見えてしまい、不自然な色になってしまうのだ。各色によって異なるその限界値を最明色と呼ぶのである。
東芝は、業務用カメラを用いて測定した色のルックアップ・テーブルを参照しながら、64軸の色相と明度を掛け合わせた6144ポイントの 3次元色空間座標において、すべての物体色の限界を決めた広色域復元データベースを構築。「Z10X」の信号処理回路に搭載し、すべての映像モードにそれを活用したいう。他社製品と一味異なる、品格の高いすっきりと濃厚な「Z10X」の色の美しさの秘密はココにあると断言してもいいだろう。
まったくスキのない高画質モデルの「Z10X」だが、弱点が1つだけある。それがディスプレイ下部に納められたスピーカーの音の貧弱さだ。もちろん「Z10X」の超高画質にバランスさせるには良質なステレオ・スピーカーを画面両サイドに置くべきだが、来年は先月の当連載でご紹介した三菱「LS1シリーズ」に負けない高音質テレビを期待したいと思う。
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