4年半の歳月を経て到達した新しいサウンド、アキュフェーズ「E-470」:潮晴男の「旬感オーディオ」(2/2 ページ)
以前取り上げた「E-600」と双璧をなすのが、昨年末に発売されたプリメインアンプ「E-470」だ。「E-600」は、純粋なA級動作であるのに対し、「E-470」はAB級。さて、その音の違いは?
前作の「E-460」から4年半ぶりのモデルチェンジとなるだけに、「E-470」には上位モデルから受け継いだいくつか技術的エッセンスが盛り込まれている。例えばアキュフェーズは現行モデルのプリアンプとプリメインアンプすべてにAAVA方式のボリューム回路を採用しているが、この回路を前作よりアップグレードして基本性能の向上を促している。そのおかげでSN感が飛躍的に改善され、音の静寂感がぐっと高まった。そしてこのボリューム・コントロールにはセンサー機構が加えられ、高精度の微調整が行えるほか、ノブにはアルミの削り出し素材を用いて手触りの感触を大切にしていることもうれしい。パワー段は前作と同じだがドライブアンプが強化され音に逞しさが加わっていることも進化した部分である。
プラグイン方式のオプション・ボードの増設でアナログレコード用のイコライザを装備できるし、ハイレゾ音源やネットワークオーディオにも対応するUSB-DACも用意されている。標準機を購入した後のグレードアップが可能なことも「E-600」と同様だ。
フロントパネルに設けられた出力を表示するVUメーターは従来通りのアナログ方式で、一目見てアキュフェーズの製品と分かるアイデンティティーがこうした部分にもしっかりと受け継がれている。またプラグイン方式のグレードアップだけでなく本体にもバランス型の入出力端子を設けてプリアウトとパワーインに分離できるスタイルを取っていることからも彼らがこのアンプに注ぎ込んだ情熱と自信を窺い知ることができる。形態はプリメインアンプだが、セパレート型として使ってもそれぞれのパートがしっかりとした性能を備えていなければ意味がないからだ。
カレン・ソウサの「エッセンシャルズ2」から「エブリバディ・ハーツ」というR.E.Mのカバー曲を聴いてみた。何でも“男泣きベスト10”というタイトルがあるそうで、そのベスト1がこの曲なのである。ちなみに2位はエリック・クラプトンの「ティアーズ・イン・ヘブン」、5位にU2の「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」が入っている。
カレン・ソウサの楽曲は冒頭からベースの低音があふれだす。非力なアンプだと、このうねるような音の描写を味わうことができないが、「E-470」はそんなそぶりを微塵(みじん)も見せない。そして何よりカレンの少し濡れたようなしっとり感のあるボーカルのつやっぽいこと。SN感の高まりとともに細やかな音のディティールを丁寧に拾い出すし、音の吹き出し方がスムースでスケールの大きい表現力を身に付けていることも特徴だ。「E-460」も上質感を備えた素晴らしいアンプだが、伸びやかさや鮮度感はさすがに「E-470」が一歩先を行く。4年半という歳月を経て到達した新しいサウンド……次なるステージへの誘いを感じさせてくれる製品である。
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