しゃれた外観にハイエンドの音、リンデマン「musicbook 15/55」を聴く:潮晴男の「旬感オーディオ」(2/2 ページ)
ドイツのLINDEMANN.(リンデマン)からUSB-DACを内蔵したCDプレイヤー「musicbook 15」が登場した。280ミリサイズのコンパクトなオーディオシステムだ。同シリーズのパワーアンプ「musicbook 55」と一緒にじっくり試した。
musicbook 15と55はともにリンデマンさんと盟友関係にあるドイツの工業デザイナーによって実にシンプルなスタイルに纏め上げられている。musicbook 15はCDドライブユニットを内蔵し、天面に電源スイッチとジョグホイールを配して各種の設定を行うほかこのホイールはボリュームコントロールとしても働く。動作も至ってスムースだ。
ボリューム回路を固定すればUSB-DACとしてPCM系が384kHz/24bitまで、DSD系は5.6MHzのネイティブ再生を可能にするが、PCM系にはウォルフソンのD/Aコンバーターを、DSD系には旭化成のD/Aコンバーターをそれぞれに採用している。またこのモデルではDSD再生を優先しているため、DSD再生時は、PCM系の回路を休止して音質の改善に努めていることも特徴だ。
プリアンプ部は左右完全対称設計を施すとともに、SN感と分解能の向上に力を注いだフルバランス回路を採用。さらにリンデマン独自の開発となるボリューム回路を加えてローレベルの表現力を高めている。
パワーアンプのmusicbook 55は、先に発売されたmusicbook 50のハイパワー版で、80ワット×2の出力を240ワット×2まで高出力化したモデルである。フルバランス回路で構成されたクラスD増幅のデジタルアンプだが、コンパクトなボディの特徴を活かした最短信号配線と強力な電源回路によってドライブ能力に優れた製品に仕上げられている。
ハイエンドモデルのSACD/CDプレーヤーよりプライスダウンが行われたとはいえ、2つの製品を組み合わせればかなり高価になる。しかしながらリンデマンさんの心の中に価格縛りはないようだ。ハイエンドとは物づくりにおける志の高さであることが彼には分かっているからである。
ダイアナ・クラールのボーカルを実在感たっぷりに描き出す
ダイアナ・クラール2年ぶりのCDアルバム「ウォール・フラワー」からママス&パパスが1965年にヒットさせた「夢のカリフォルニア」を聴いてみた。この作品は1960年代から1970年代にかけてのポップスの名曲を中心にプロデューサーであるデヴィッド・フォスターがアレンジを行い、オリジナル曲よりゆっくりしたテンポだが、ダイアナのボーカルがじっくりと味わえる作り込みがなされている。
musicbook 15とmusicbook 55のコンビは、ゆったりとした語り口で始まる彼女のボーカルを実在感たっぷりに描き出す。声にリアリティがありニュアンスの再現力も抜群に高い。バックに流れるオーケストレーションの表現も丁寧だ。サビの部分で絡むEギターのトレモロも綺麗だしピアノの音色も美しい。
パワーアンプをmusicbook 50につなぎ換えてみるといくぶん優しい音色に変わる。比較すると低域に向っての制動力に違いが出るがこの辺りは物量がものを言う部分なのでよく頑張っていると評してもよいだろう。ミュージックブック55のほうが低域までしっかりとした足取りでエネルギー感も良く伝える。
正直なところ、ぼく自身このサイズの製品でこんな音が聴けるとは予想していなかっただけにリンデマンさんの物づくりに賭ける意気込みに改めて感心させられた。存在を感じさせないお洒落な機器でいい音を聴きたい……、そんなオーディオ製品を求めるファンにはぜひともチェックしてほしい。
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