始めるなら今! Dolby Atmos対応Blu-ray Disc 6タイトルを一気にインプレッション:山本浩司の「アレを見るならぜひコレで!」(3/3 ページ)
昨年秋以降熱心なAVファンの間で話題を集めているのが、新しいサラウンド・フォーマット「Dolby Atmos」だ。今回は機器の最新動向からトップスピーカー設置のコツ、対応Blu-ray Disc 6タイトルのインプレッションまでをお届けしよう。
- 「シカゴ」
この4月22日にワーナーから発売されるのが「シカゴ」と「ゼロ・グラビティ」。「シカゴ」は2002年に劇場公開されたちょっと古い35ミリ映画だが、昨年Dolby Atmos用サウンドトラックが新たに制作され、わが国の一部の劇場でもDolby Atmos上映されている。本作は2002年に劇場公開され、第75回アカデミー賞で作品賞はじめ6部門でオスカーを獲っている。とくに注目すべきは最優秀音響効果賞と最優秀編集賞の受賞で、新たにDolby Atmosでエンコード&リマスターされた本作でも、オリジナル音声の魅力を活かしながら垂直方向の音場を拡大させた、立体的なサラウンドサウンドを楽しむことができる。
最大の見どころは、鍛え抜かれたダンサーたちによる群舞シーンだ。Dolby Atmosの立体音響効果が最も活かされているのは、チャプター5の「セルブロック・タンゴ」。夫や恋人を殺し、監獄に捕えられた女囚たちが、殺人理由を告白しながら歌い踊る迫力に満ちた場面だ。女囚たちのウィスパーボイスが、上方で円弧を描きながらパンニング、思わず周囲を見渡してしまうことに。Blu-ray Disc用スペーシャル・コーディングの見事さが実感できるこの場面が、Dolby Atmos最大の聴きどころだろう。アトモス面白度85点。
- 「ゼロ・グラビティ」
筆者は一昨年の12月に「イオンシネマ幕張新都心」で「ゼロ・グラビティ」を観たが、これがDolby Atmos初体験だった。音像の1つ1つを指で示すことができるくらいのリアルな移動感とオーバーヘッドスピーカーを活かした半円球状に広がるそのダイナミックな音場表現にはげしく心を揺り動かされたが、ついにその作品のDolby Atmos仕様Blu-ray Discが発売されたわけだ。
ワクワクドキドキしながらアトモス再生してみたが、なるほど従来の5.1ch 仕様のBlu-ray Discとは段違いの臨場感だった。徐々にクレッシェンドしていく音楽が最大音量になったところで完全無音となるオープニングでまず心を鷲掴みにされるが、その後の宇宙飛行士たちとNASAの交信音が、スクリーン上に指し示される飛行士たちの位置にリンクしながら円弧を描いていく。我が家の急ごしらえのアトモス再生システムでも、その面白さが実にリアルに把握できるのだった。
その後のシリアスな事故シーンで描写されるが、そこに実に様々な効果音が貼り付けられており、その緻密なサウンドデザインに心底感心した。映画館のビッグスクリーン環境では、その妙味を味わい尽くすことはできないだろう。その意味でも本作のDolby Atmos盤発売は記念すべく出来事だと思う。アトモス面白度 100点!
さて、Dolby Atmos盤Blu-ray Disc 6作品をざっとレビューしてみたが、いかがだっただろうか。これからも着実にアトモス盤は増え続けていくはずで、現代映画音響の成果を実感したい方は今すぐアトモス再生に取り組んでいただきたいと思う。
ところで、通常の5.1ch 収録ソフトなどをアップミックスしてオーバーヘッドスピーカーを加えて再生できる「ドルビーサラウンド」モードの搭載がアトモス対応AVアンプには義務づけられている。「SC-LX88」のこのモードの音質もよく磨かれており、ストレートデコードの音に比べて落差感がほとんどない。苦労してオーバーヘッドスピーカーを取り付けたのなら、手持ちの2ch/5.1ch 収録ソフトもアトモス用スピーカー配置で積極的に楽しむことをお勧めしたい。アトモスやるなら今だと思う。
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