復活した往年の名ブランド“REVOX”――「Re: sound S」シリーズを聴き比べ:潮晴男の「旬感オーディオ」(2/2 ページ)
1970年代、オープンリールのテープレコーダーを何とか手にしたいと頑張った人も多いはず。その往年の名ブランド、REVOX(ルボックス)が復活した。今回はスピーカー5製品を一気に試聴していこう。
ジャズの名曲で各モデルを試聴
試聴は周波数補正機能を内蔵したネットワークレシーバーを用いず、素の状態で「キューブ」から行った。CDソフトは「ストックホルムでワルツを」という邦題が付けられた映画のサウンドトラックから「テイク・ファイブ」を選んだ。
原曲の「テイク・ファイブ」は読者もご存じのとおり5/4拍子という変則拍子でディブ・ブルーベック・カルテットにより1959年の6月にレコーディンクされたアルバム「タイム・アウト」に収録されたジャズの名曲だ。作曲はアルトサックス奏者のポール・デスモンドだが、ブルーベックはブルガリア音楽からのインスピレーションにより4/4拍子だったこの曲を5拍子で演奏した。
初めてボーカルを付けての収録はカーメン・マクレエということだが、「ストックホルムでワルツを」は原題の「モニカZ」からも分かるように、スウェーデンのジャズ・ボーカリスト「モニカ・ゼタールンド」をモデルにその半生を描いた作品である。サウンドトラックはこの映画の中でモニカ役を演じるシンガーソングライターでもあるエッダ・マグナソン自身がスウェーデン語で歌っている。最近のサウンドトラックは音の良いものが多いが、このCDもていねいな録音で声の表情を実によく捉えている。
「キューブ」はさすがにフルレンジ1発なので低域に向っての再現能力には限界があるが、ボーカルはやせることもなくこのサイズの製品としてはよく頑張っている。もっとも周波数補正機能を内蔵したネットワークレシーバーと組み合わせて音を作り込んでいるようなので、その印象をお伝えすることができないのは申し訳ないが、近接試聴用としてならこのままでも十分その役割を果たしてくれると思う。
「ピッコロ」はユニットのサイズアップも手伝って中低音域にかけての不足感はかなり改善される。すっきりさわやかな音のイメージとともにボーカルもニュアンス豊かに描き出す。このモデルはいくぶん指向性が強いようなので、近接試聴の場合は仰角を付けると音の一体感が高まるようだ。
タワー型で一番コンパクトな「コラム」はとても90ミリ口径のユニットが取り付けられているとは思えないほど音作りが上手い。スピーカーユニットには総てサランネットが取り付けられているので外からは配列が分からないが、このモデルは上下がウーファーで中央がツィーターという仮想同軸の構成がなされている。ボーカルは軽快な足取りとともにしっかり感のある表現力を持ち合わせている。いい意味でリスナーの予想を裏切ってくれるスピーカーだと思った。
「エレガンス」はウーファーが4基になるため、耐入力もアップするが、ユニットの配列は仮想同軸型ではなく、ツィーターは上から2番目にセットされこれで試聴位置に対してのバランスを取っているようだ。このモデルも予想外に中低域が粘り厳しいプログラムソースでも無理を感じさせずボーカルの表情にもゆとりがある。音場感も豊かだが能率はそれほど高くないので、アンプには十分なドライブ能力のある製品を選びたい。
トップモデルの「プレステージ」は、こんなにスピーカーユニットがくっ付いているのにちゃんとフォーカスするし何よりも余韻をきれいに描き出す点に感心させられた。スピーカーユニットの配列は最上位がミッドレンジでその下がツィーター、あとの4基はウーファーである。サウンドのキャラクターは「エレガンス」と相似形だがニュアンスの表現は若干異なる。鷹揚(おうよう)という言い方をするとマイナスに受け取られそうだが、そうではなく低域にかけてゆったりとしているぶん、スケール感の描き出しも大きい。この形状からするとリビングルームでおしゃれにオーディオを楽しむためのスピーカーといった印象を受けるが、Hi-Fiユースにもしっかりと応えてくれる懐の深さを持っている。上品で上質なサウンドがこのシリーズに共通する印象だが、どのモデルも新世代機ならではの可能性を垣間見せる点で、使いこなせば間違いなく心強い相棒になってくれることだろう。
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