本命は“置き薬”ビジネス? 液晶パネル搭載冷蔵庫「DIGI」の狙い:滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(3/3 ページ)
「R2-D2」型のロボット冷蔵庫など、最近なにかと話題になることの多いハイアール アジア。しかし、実のところビジネスの“本丸”はまったく別のところにあった。液晶パネル付き冷蔵庫「DIGI」の狙いに迫る。
「そのあたりはいろいろ交渉中で、詳細はお話できないので、皆様のご想像にお任せしますが、アニメの金字塔的なコンテンツが加われば、一気に世界観が変わるのは確かですよね。inter galleryでしか見られない書き下ろしのイラストなどは、かなり影響力のあるキラーコンテンツになるのではないかと考えています。額縁は20インチ程度のサイズですが、32インチの大型モデルも検討中です。月額料金は数百円、もしくはいくつかのコンテンツを含めて、1000円程度にして販売したいですね」(同氏)
inter galleryに関しては、一般家庭はもちろん、例えばホテルチェーン、レストラン、オフィスといったB to Bビジネスでもおそらく引き合いがくるだろう。また、採用例が増えればコンテンツサプライヤーたちもサービス提供に名乗りを上げるはずだ。
また、最後に挙げられたのが、冷蔵庫をベースにした食品販売ビジネス「off ice」だ。冷蔵庫自体を無償で貸し出して、そのなかに食品を流通させることで利益を上げる仕組み。いわゆる「富山の置き薬」や、最近の例でいえば「オフィスグリコ」に近いイメージだろう。これはすでにサイバーエージェントのオフィスなどでテストが行われており、さまざまなところから問い合わせなども入っているという。ただ、それだけでは家電の革新をうたうハイアールアジアのビジネスとしては少々物足りない印象も受ける。柴田氏にそう伝えると、やはり先の展開をすでに考え始めていたようだ。
「普通の冷蔵庫を使ったテストマーケティングをこれまで行ってきましたが、こちらもDIGIを使ったoff iceの展開こそがわれわれらしさであり、その実現に向けて実はすでに大きく舵を切っています。DIGIのディスプレイを使えば、ジェスチャー操作で商品の発注やリクエストも可能になるため、在庫切れが減ります。現金販売は回収リスクが高いですが、FeliCaを利用した電子決済にすれば回収しやすいですし、1円単位の値付けも可能です。電子決済にはバーコードスキャンも必要になりますが、ジェスチャー操作に使ってカメラを利用すれば解決するでしょう。DIGIを活用することで、“置きビジネス”が100億倍面白くなると確信しています。また、現在はオフィスを中心にサービス展開を考えていますが、その先では家庭への展開も十分に可能性はあると思います」
「AQUA DIGI Type 2」(仮称)。Type 1の機能をより身近に使えるという目的で商品化される、ディスプレイ1枚の小型モデル。機能はType 1と同等で、オフィスなどで食品を販売する「off ice」対応商品としても開発する予定となっている
かつて三洋電機の一部門だった頃は赤字を垂れ流し、一度はつぶれたに等しかった組織が、ハイアールアジアとして生まれ変わり、今度は日本の家電業界を覚醒(かくせい)させようとしている。この動きからはますます目が離せない。
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