ダイキンの“薄型”エアコン「UXシリーズ」に宿るデザインの力:滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(3/3 ページ)
ダイキン工業が発表した住宅用マルチエアコンの壁掛型室内機「UXシリーズ」は、滑らかな曲線を描く薄いエアコン。デザイナーにそのコンセプトと技法、そしてこだわりを聞いた。
見えないところにも気を使う
配色にもこだわった。UXシリーズにはシルバーとホワイトのモデルがあるが、それぞれ周囲の色を映すことでインテリアと馴染むという。「例えばホワイトの場合、つやが強く出過ぎず、かといって全くのつや消しでもありません。サテンホワイトという、光沢はあってもギラギラ光ってはいない感じを意識しました」
シルバーのモデルとホワイトのモデルは、配色に違いがある。シルバーは側面や底面を黒くすることで、視覚的により薄く見せる効果がある。一方、ホワイトはすべて白で統一されているが、これにも意味があるのだろうか。
「ホワイトの場合、白壁にかけられることがシチュエーション的に多いと思います。その場合、白の壁があって、白のパネルがあって、黒のボディとなると、逆に周辺環境との関係性を遮断してしまうことになるので、白で統一しました」
「シルバーの方も、モダンなコンクリート壁などに設置する場合は同じようなことがいえます。ただ、シルバーの方は白い壁にも合うんですね。その場合、見た時にどういう風に感じるかというと、本体前のシルバーのパネルが目立ちますので、黒の部分は影のように見え、より縦の幅がスマートに感じます。環境に馴染むという考え方は共通なのです」
そしてもう1つ、UXシリーズではほとんど見られる機会のない天面もきれいにデザインしている。
「例えば家の中に階段があって、吹き抜けがあり、そこに壁掛けのエアコンがあったとき。階段を上れば上からエアコンを見ますよね? それから、見えない部分にも気を使うこと。ユーザーがそれに気づいたとき、ここまで考えているんだ、と分かります。例えば、BMWやアウディのボンネットを開けると、普段は見えない部分が美しく作られていることに感動します。それに近いと思います」
耐久消費財としての家電の域を超え、空気の美しさをフォルムへと取り込み、高級オーディオ機器や高級車のような雰囲気をまとうなど、こだわりの嗜好品としての表情すら見える「UXシリーズ」。日本の表情の乏しいエアコン市場に、デザインによる新しい風を吹き込むことは間違いない。
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