MrSpeakers、同社初の静電型ヘッドフォン「ETHER Electrostatic」の試作機を公開:春のヘッドフォン祭2016(2/2 ページ)
MrSpeakersの創設者、ダン・クラーク氏が同社としても初の試みになる静電型ヘッドフォン「ETHER Electrostatic」を紹介した。今年中に完成させ、商品として出荷する計画を立てている。
独特な音のキャラクターを実現した背景には「静電型システムのコア部分である、ダイアフラムや電極を飽きるほど数多く試作して、ベストな組み合わせを探ってきた」ことがあるとクラーク氏は説く。これからもトライアンドエラーは最終製品の完成まで続くことになるが「現在のプロトタイプはかなり信頼性の高いものに仕上がってきた。今はおもに湿気に対する耐久性であったり、全体のクオリティチェックに注力する段階に来ている」というクラーク氏のコメントからは、ヘッドフォン本体部分はいい感じに完成へと近づいていることがうかがえた。
なお、当面はMrSpeakersで本機専用のアンプを自社設計・開発する予定はなく、「適正な価格で製造できる複数のオーディオメーカーとコミュニケーションを取りながら、ETHER ESと一緒に使えるアンプとのシステムを構築したい。ヘッドフォンと同時期に発売できるよう計画を進めている」とクラーク氏は語っている。ヘッドフォン祭の会場では、日本未導入の米国ブランドのDAコンバーター、ヘッドフォンアンプと組み合わせてETHER ESをドライブしていた。残るヘッドフォンとアンプを接続するためのケーブルとそのコネクターについても開発が進行している途中だ。なお、試作機の段階ではスタックスの静電型ヘッドフォン用のアンプと、バイアス電圧やコネクター形状については互換性を確保しているようだ。また一方でETHER ESでは独自形状の端子を採用することも視野に入れているという。この辺については今後の展開にも注目したい。
気になる価格は?
最後に気になる販売価格の見込みについても触れておこう。クラーク氏は今回、「静電型ヘッドフォンを全ての人へ」という言葉をETHER ESの開発テーマとして掲げている。「従来の静電型ヘッドフォンはとにかく高価というイメージが強かったのではないだろうか。ETHER ESでは、既にハードウェアとして高い完成度に達成しているETHERのフレームを使うことで、本体価格を可能な限り現在のETHERに近づけたいと思っている。最終的な価格は平面磁界駆動型のETHERよりもわずかに高くなる程度に抑えられるのでは」とクラーク氏は見込みを述べている。先述のパートナーとともに開発を進めているヘッドフォンアンプについても、「静電型ヘッドフォンを全ての人へという、当社のテーマをいくつかもメーカーに共感いただいている。だいたい2000ドル前後(20万円台前半)に落とし込みたい」と抱負を語っている。既に静電型ヘッドフォンを使っているユーザーの“2台目需要”にも応えていく狙いもあるようだ。
エミライの開催した発表会には、ゲストとしてヘッドフォンコミュニティ「Head-Fi」の創立者であるJude Mansilla氏が出席。いま世界でMrSpeakersの製品が浴びている注目について、「以前はフォステクスの平面駆動型ヘッドフォンを改造しているメーカーと受け止められていたが、現在はドライバーを自社開発し、シャーシからネジの1個1個までこだわって開発しているユニークなヘッドフォンブランドとして名が通っている。Head-Fiのコミュニティの中でも、音質やコストパフォーマンスも含めて非常に競争力の高いヘッドフォンとしてリスペクトされている」とコメントした。なおHead-Fiでは今年の10月に日本語版のコミュニティサイトを起ち上げる計画がある。ヘッドフォン祭の機会ではローンチしたばかりの「Had-fi Japan」のβ版が紹介されている。
なお、エミライのブースではヘッドフォン祭の直前に発表された、先行モデルのETHER、ETHER Cの最新モデル「Ver.1.1」も試聴できた。各製品の詳細は既報の通りだが、開放型・密閉型モデルともにイヤーカップの内部に新開発のチューニングパーツを装着して、独自技術の「V-Planar振動板」による平面磁界駆動型ヘッドフォンから、また新たな魅力が引き出せる。チューニングパーツはユーザーが自在に着脱できるので、従来のETHERシリーズのサウンドも楽しめる。全製品のユーザーにはVer.1.1へのアップグレードキットが無償で配布されるという。
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