同じ4Kでも動画配信とは“桁”が違う――映画監督が見つけたUHD BDの存在意義とは?(3/3 ページ)
レーザーディスク以来、次々と登場する新しいメディアに「もうこりごり」と話していた映画監督の樋口真嗣氏。しかしBDとUHD BDを横並びで比較視聴すると考えが変わったようだ。最後には「買い支える」宣言まで飛び出した。
比較の最後は、チャプター7のロンドンのシーン。製品の画質評価によく使用されるという場面で、麻倉氏は芝生の細かさや枝ぶりといった点を挙げ、8Kカメラで撮った細かさがUHD BDではよく出ているとした。映像が寝室まで進むと、麻倉氏は夫婦が寝ているベッドの毛布を見どころとして指摘。堀田さんは「模様までハッキリ出ていますね!」と、解像度の高さがもたらす効果に仰天した様子だった。
シャンデリアの輝きや室内のテキスタイルなどを麻倉氏が指摘する度に堀田さんはUHD BDの高画質に終始圧倒されていた様子だった。樋口監督も室内と屋外の対比を見て「普通ロケだと露出が合わなくてこうはならない」と驚き、HDRの表現力を再確認していた
比較を終えて麻倉氏がゲストの両名に感想を求めると、堀田さんは「ぜんぜん違う映像に見えました。並べて比べて視ることってないから、ここまで違うと思わなかったです」と興奮気味に語った。堀田さんはさらに、小道具やセットなどの精細感にも言及。「画質が良いと、素材や布の反射などがぜんぜん違いますね。また、セットを見ても、UHD BDでは石の感じや古びた感じがリアルに伝わってきました。小道具さんもやりがいがあると感じます」(堀田さん)
樋口監督は、映画館でマリアンヌを見た際に「ゼメキスらしくない作品。映像で遊ぶタイプの人なので、この地味な題材で何をしているのか」と感じていたという。ところが今回の比較で印象は一変、鏡越しのシーンで本来映ってしまうはずのカメラが映っていないといった発見があり「(ゼメキス監督は)相変わらず凝りまくったことをやっている」と語った。
セッションの最後に麻倉氏はこれからのUHD BDに期待することを質問。堀田さんは「ローマの休日」などの旧作や、ジブリ作品などのアニメを4Kにしたらどうなるかと、高画質への興味を見せた。樋口監督はパッケージに対するこだわりに言及。初回限定版などのパッケージを所有することが、映画好きを表現する大切な方法の1つとし、良質なセルソフトが販売され続けられるよう訴えた。
「映画好きを表現するために買い続けて30年、人を家に呼んだときに『これ持っているんだ』『自分はこの映画をどれだけ好きか』というのをアピールするためにパッケージを買うんです。しかも廉価版ではなく初回限定ボックス版、すごく大事なことだと思います。我々の下の世代は分かりませんが、できることなら我々が死ぬまではパッケージを出してほしい。パッケージで育った人間なので、パッケージが出し続けられる限りは我々が買い支えます」(樋口監督)
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