「基本料0円、3分未満なら何度かけても0円」という、楽天でんわの新料金プランが話題だ。大手携帯会社の半額で通話サービスを提供する楽天でんわ。そのビジネスモデルの秘密とは……?
10月7日、楽天でんわは新しい通話料金プランを発表、提供を開始した。基本料0円で3分までの通話が何度でも0円という、スマホ向けの通話プランだ。通話時間が3分以下ならいくらかけても電話代は0円、3分を超えたら30秒ごとに20円ずつ(以下、料金はすべて税別)の通話料がかかる。
楽天でんわではもともと、基本料0円、30秒ごとに10円という料金プランを提供していた。新しい料金プランは先着5万人限定、新規ユーザーのみが申し込めるということで、「新規ユーザーの獲得キャンペーンなのでは?」という声も既存のユーザーからあるようだが、「それは違う、キャンペーンではなく新しい料金プランへの取り組み」と楽天でんわは説明している。
新料金プランの目的は何か。そして楽天でんわが目指すものとは……? 楽天でんわのサービスを提供するフュージョン・コミュニケーションズで、同サービスのリーダーを務める倉澤赳徳さんに話を聞いた。
楽天グループのフュージョン・コミュニケーションズが、楽天でんわのサービスを提供したのは2013年12月のこと。当時は、スマホの通信方式の主流が3GからLTE(4G)に切り替わりつつあるときだった。
大手通信キャリアがLTEスマホ向けに出した新しい料金プランは、30秒20円という通話料金が普通。キャリアごとに細かな割引などはあるものの、3Gのときの料金に比べると実質的に値上げになっていた。ここに挑戦しようということで提供開始したのが楽天でんわの始まりだ。
「LTEになって、携帯電話の通話料金は30秒20円と割高になってしまった。でも、楽天でんわを使ってもらえれば30秒10円。私たちなら適正な通話料金を提供できる。そう考えてサービスを開始したのです」(倉澤さん)
格安通話サービスというと、通常の公衆電話回線を使わずに、音声をデータパケットで送受信するIP電話を思い浮かべる人も多いだろう。楽天でんわはIP電話ではなく、携帯キャリアと同じく、一般の電話回線網を使って通話を行うサービスなので、普通に携帯電話同士で話すのと通話品質が変わらないのが特長だ。また、電話をかけたときに相手のスマホに表示される電話番号も自分が普段使っているものなので、仕事などでも安心して使うことができる。
同じ公衆電話回線を使っているのに、なぜ楽天でんわは通常の携帯電話料金よりも安く通話ができるのだろうか。
NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルといった携帯キャリアは、それぞれ通話用の通信網を持っている。通話時に自社の通信網しか使っていなければ、格安のネットワークコストでユーザー同士が通話できる。一方、他社の通信網を通る場合には、その会社への接続料を支払わなくてはならない。接続料は実は会社によって違うのだが、以下、実態に近い2円/30秒という数字で説明していく。
例えば、A社の端末からB社の端末に電話をかけると考えてみよう。A社の通信網からB社の通信網に接続するときに、A社はB社に2円/30秒の接続料を支払う。ユーザーが30秒20円の通話料をA社に支払ったとすると、そこから接続料を引いた18円/30秒がA社の収入になる。
同じくA社の端末からB社の端末へ、楽天でんわアプリを使って電話をした場合、ユーザーは楽天でんわに10円/30秒を支払う。このとき楽天でんわ(フュージョン・コミュニケーションズ)はA社とB社に接続料をそれぞれ2円/30秒ずつ支払う。つまり、10円から4円を引いた、6円/30秒が楽天でんわの収入となるわけだ。
「LTEになって、携帯電話の通話料金はとても高くなりました。実際にそう感じているユーザーも多いのではないでしょうか。私たちがサービスを提供しているのは、ユーザーに適正な料金を提案したいと思うからなのです。
そしてもう一つ。今年の夏から、各キャリアは新しい料金プラン、通話料固定の定額プランを始めました。基本料金は、電話をかけてもかけなくても毎月2700円。これはつまり、たくさん電話をかける人が使ったコストを、かけない人が負担するという仕組みです。よほどたくさん通話をする人以外にとっては実質的な値上がりですし、新規の申込時には定額プランしか選べなかったり、機種変更する場合でも定額プランを選ばないと端末代の割引が適用されなくなったりしてきています。でも、調査データによれば『携帯ユーザーの6割以上は通話定額プランは必要ない』と思っている。一部のヘビーユーザーのコストを多くのライトユーザーが負担する構造はフェアではない。そこで今回新しく提供を開始したのが、基本料0円、3分以下0円の新プランなのです」(倉澤さん)
楽天でんわはIP電話ではない。ただ、格安通話サービスということで、他社のIP電話サービスと比較されることが多かったという。楽天でんわの「10円/30秒」という料金は携帯キャリアのLTE用通話料金よりも安いが、「IP電話サービスと比べると最安ではなかった。新料金ではそこも解決し、“最強の電話サービス”を目指して、ユーザーのみなさんに新しい選択肢として知って欲しいと思ったのです」と倉澤さんは話す。
10月7日にスタートした新プランは、基本料0円、通話料も3分以下なら0円。3分を超えると、20円/30秒の通話料金がかかる。「新プランでは、携帯キャリアの通話料金はもちろん、他社のIPサービスと比較しても、210秒まで最安です。価格をてこ入れしたことで、『値段も品質も一番の通話サービス』になったはず」(倉澤さん)
新しい料金プランを2015年1月10日までの期間限定としたのは、テストマーケティングの側面が強い、と倉澤さんは言う。
「『3分話さない人は何%くらい?』『無料なら……とものすごい回数電話をかける人は何%くらい?』『平日と土日とで使われ方はどう違う?』『通話料0円の人は平均で何分かけている?』……といったことを、新プランの提供期間中に調べたいと思っているのです。キャンペーン期間が終わったら、既存のユーザーさんは旧プランと新プランを選べるようにすることを考えています。12月末までに何らかのアナウンスをしますので、それまで待っていてください」
楽天でんわがサービスを提供してもうすぐ11カ月。楽天でんわのユーザーは30〜40代の男性が多く、多くは会社員。仕事で自分の携帯電話を使わざるをえない人たちが多いという。
もうすぐ同アプリは100万ダウンロードを迎える。「私たちが目指しているのは、通話料を適正化することなんです。私たちは、スマホの通話料金の適正料金は10円/30秒くらいだと思っています。今の料金はそのほぼ2倍。携帯電話の通話料金の市場規模は2012年度で約2.4兆円と言われていますが、ユーザーの1割くらいを取れたら、この寡占市場を切り崩すことができるかもしれない。そのためにも、ぜひ楽天でんわの新プランを試してみてください」
楽天でんわのサービスを使うには、楽天でんわアプリをスマホにインストールし、そこから電話をかけるだけで良い。UIや使い勝手にこだわったアプリだ。
アプリの画面は下のスクリーンショットを見てほしい。グループ分けして電話番号を登録できるほか(画面中)、Android版は発信履歴に加えて着信履歴もアプリに残るので、スマホに元から備わっている通話機能を完全に置き換えて使えるはずだ。
Webページに載っている電話番号に発信したい場合は、電話番号のリンクを長押しすると電話番号をコピーできる。そのあとでアプリを起動すると、コピーした電話番号がアプリ上に表示されるので、楽天でんわ経由でその番号にかけることができる(画面右)。
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提供:フュージョン・コミュニケーションズ
アイティメディア営業企画/制作:Business Media 誠 編集部/掲載内容有効期限:2014年11月26日