ベンチャー企業が世界に飛躍する「きっかけ」をつくる――福岡市のチャレンジ受賞者決定(1/2 ページ)

「地方でベンチャー企業が生まれにくい」と言われているが、本当にそうなのか。海外展開を目指す企業を支援するために、福岡市がちょっとユニークな試みを始めた。福岡市はどんなことを始めたのだろうか。

» 2014年11月04日 10時00分 公開
[PR/Business Media 誠]
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 「人材が不足している」「優良企業が育っていない」「人口が減少している」――。

 さまざまな理由で「地方発のベンチャー企業が生まれてこない」などと言われているが、本当にそうなのか。優れたビジネスプランや経営者の強力なリーダシップ、周囲からの支援などがあれば、地方から多くの企業が誕生するはず。また、何らかの“きっかけ”があれば、ベンチャー企業も世界に飛躍できるだろう。そうした企業に“きっかけ”を提供して、航海に出てもらおうという動きが、福岡市でスタートした。

 フクオカ・グローバルベンチャー・アワーズ実行委員会(サイバー大学、新日本有限責任監査法人、特定非営利活動法人 日本 MIT ベンチャーフォーラム、福岡市)は10月18日、国内外の起業家の英語によるビジネスプラン・コンテスト「第1回 Fukuoka Global Venture Awards」を開催した。国内外の起業家の交流拠点となること、グローバルに活躍するベンチャー企業を数多く創出していくことを目的にしていて、英語でのプレゼンテーションで審査されるだけにとどまらない。国内の企業はビジネスプランについてメンタリングを受けることができ、海外の企業は地元企業の訪問について支援を受けることができる。また、極めて優秀な成績を収めた者は、新日本有限責任監査法人が実施する「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー」の全国大会への推薦の制度を設けるなど、多面的にベンチャー企業のグローバル化を支援するものだ。

 ビジネスプラン・コンテスト当日は一次予選を突破した国内外の企業による英語でのプレゼンテーションが行われた。

 審査の結果、最優秀賞を手にしたのは「ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社」。実行委員会が期待するユニバーサル・サウンドデザイン社とは、一体どんな事業を手掛けているのか。以下、紹介しよう。

「第1回 Fukuoka Global Venture Awards」の発表会に詰めかけた観覧者は、熱心に企業のプレゼンテーションを聞いていた

難聴者が「聞こえた!」

 難聴になると、聞こえない側が補聴器を付けなければいけない――。「そんなの当たり前じゃないか」と多くの人が思われるだろうが、その発想を逆転させ、話す側がサポートするシステムを開発したのが、ユニバーサル・サウンドデザイン社だ。

 開発した商品は、卵型をした小さなスピーカー「COMUOON(コミューン)」(19万5000円・税別)。話し手が専用マイクに向かって話をすると、難聴者にとって聞きとりづらい反響音や周囲の雑音を抑えた音がスピーカーシステムから出てくるという。「本当に聞こえるの?」と思われるかもしれないが、九州大学耳鼻咽喉科の検証によって、中等度難聴者(感音難聴も含む)が補聴器を付けなくてもその有用性が実証されている。

難聴者とコミュニケーションを支援する「コミューン」

 医学界からお墨付きをもらったコミューンは、どのようにして開発されたのか。同社の中石真一路代表は、前職のEMIミュージック・ジャパン(現ユニバーサルミュージック)で働いていたときに「遠くまで音が届くスピーカーを使って何かビジネスができないか」と考えていた。難聴者が開発中のスピーカーの音を視聴したところ「聞こえやすい」と言われた。「最初は信じられませんでしたが、他の難聴者にも確認してもらったところ『本当に聞こえる』とのことでした」

 その後、活動の場をNPOに移して研究を続けるものの、資金調達が難しかったこともあって、2012年4月に同社を設立。テスト機を都内の中学校に貸し出し、難聴の生徒に使用感を聞いたところ、好評を得たため商品化に踏み切った。現在は、病院や自治体を中心に、50台以上納入しているという。

現在、難聴者は5億人いて、2025年には9億人まで増えると予想されている

2018年までに5製品を投入

 2012年、日本補聴器工業会が行った調査によると、74歳以上の約4割が難聴者または難聴を自覚している。しかし、利用率は低い。難聴者の14.1%しか補聴器を利用していないのだ。その理由として「費用面で購入できない」といった声もあるが、見逃してはいけないことは「補聴器を使っていることを知られたくない」という人が多いことだ。

 「難聴者と接してみて分かったことがあります。それは、話す側も聞く側も心理的な負担が大きいこと。その負担によって会話が少なくなってしまい、難聴者を“孤独”に追い込んでしまうんです。こうした問題がありますが、コミューンによって難聴者に笑顔が生まれるとうれしいですね」(中石代表)と話す。

 5年後の2019年、難聴に関連する市場規模は6000億円に達すると言われている。しかし、コミューンはこれまでになかった商品なので、市場がどこまで拡大するのか分からない。同社は現在、コミューンの基本機能を搭載した「テレビ」「携帯端末」などの研究を進めていて、2018年までに5製品を投入するという。

 最優秀賞を手にしたことで、ユニバーサル・サウンドデザイン社はどういった未来像を描いているのだろうか。「現在、米国とカナダでコミューンを使っていただいています。子音が多い英語でも効果が出ているので、海外でも市場が広がるのではないでしょうか」(中石代表)と手ごたえを感じている。

 難聴者が補聴器を付けずに学校の授業を受ける。補聴器を付けずにテレビを見て笑う。補聴器を付けずに電話で会話を楽しむ。そんな光景を目にする日も、そう遠くはないのかもしれない。

コミューンを使って、難聴者が授業を受けている
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提供:フクオカ・グローバルベンチャー・アワーズ実行委員会
アイティメディア営業企画/制作:Business Media 誠 編集部/掲載内容有効期限:2014年11月17日