映画『インターステラー』から見える、地球の未来と宇宙への挑戦の今11月22日(土)全国公開

食糧が枯渇し、地球上に住めなくなった人類は、宇宙に活路を見いだす――11月22日に全国公開される映画『インターステラー』は、そんな“少し未来の地球”を描いた作品だ。映画で描かれたようなことは本当に地球上で起きているのか? また、宇宙の探索はどこまで進んでいるのか? 実際に惑星探査に携わる東京大学の宮本英昭准教授と、映画ライターの新谷里映さんに、「地球の今と宇宙への挑戦」と、映画『インターステラー』について聞いていこう。

» 2014年11月04日 10時00分 公開
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 それは明日か10年後か、そう遠くない未来の話。環境汚染が進み、食糧が枯渇した地球上は、これまでのように人類が暮らせるような世界ではなくなっていた。竜巻のような大規模な砂嵐が頻繁に起きて、作物が作れない。疫病が流行り、人口がどんどん減り、食糧を確保して生き延びることが最優先。劇的な環境変化によってこれまでのように暮らせなくなった人類が採った道は「宇宙に活路を見いだす」だった――11月22日に公開される映画『インターステラー』は、そんな地球の未来と人類の挑戦を、鬼才・クリストファー・ノーラン監督が、マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイという旬な俳優陣を起用して描く話題作だ。

2014年11月22日公開、映画『インターステラー』

  「そんなの、空想のお話でしょ?」と思う人もいるかもしれない。しかしこの21世紀という時代には、かつて経験したことのない数の人類が地球上に暮らし、増え続けていること、過去最大の規模で環境破壊と資源枯渇が進んでいることは事実だ。そして地球や宇宙について研究する科学の最前線では実際に、現代の地球の課題を解決するために、宇宙にある資源を利用できないかという視点での研究が進んでおり、新しいビジネスの種も生まれてきているという。

 本記事では東京大学総合研究博物館で、太陽系博物学や惑星探査を専門とする宮本英昭准教授と映画ライターの新谷里映さんをお招きして、映画『インターステラー』から見えてくる地球環境の今の課題と、人類の宇宙への挑戦、そしてこの映画の持つ魅力について聞いていこう。

宇宙の研究を地球に生かす

東京大学総合研究博物館 宮本英昭准教授(左)と、新谷里映氏(右)

――宇宙の研究とか惑星の探査というのはすごくロマンがありますが、最初に、宮本先生がどんな研究をされているのか教えてください。

宮本: 私がやっているのは固体惑星科学という分野で、太陽系にいろいろな天体がありますが、特に地球のように固体の表面を持つ天体に興味を持っています。というのも、「地球は宇宙の中でどのような天体なのか?」ということを知りたいと考えているので。地球と似た天体とを比較するというのは非常に重要な手段なんです。地球外の天体を研究することによって、かえって地球をよく知ることができるんです。

――惑星の探査というと、例えば「はやぶさ」のプロジェクトなどにも関わっているのでしょうか?

宮本: はい、そうですね。「はやぶさ」や「かぐや」など、日本が進めている固体惑星探査には、何らかの形で参加させていただいています。これまでに行ったさまざまな探査で集められてきた、惑星や天体についてのデータの解析をしています。特に火星とか、小惑星がどのような天体で、どのような進化をたどってきたかというのが専門です。

――人口が増加して食糧問題が深刻だとか、環境汚染が進んで大変なことになっている、という問題は、ニュースなどでもよく取り上げられています。その一方で、科学技術によって問題は解決できるという意見もありますよね。今、科学の研究の最前線ではどういった見解なのか、そして我々が知っておいたほうがいいことがあったら教えてください。

宮本: そこは私の直接の専門ではないですし、すべてを本当に理解している方というのもおられないと思いますが、東大総合研究博物館で「宇宙資源展」というものをとりまとめた際に、さまざまな問題を研究する人たち百余名と話し合う機会がありましたので、そこから「一般的に専門家の多くがこう考えているようだ」というのはお話しできるかもしれません。

 たとえば今、地球上に人類が約70億人いると言われていますが、70億というのは非常に大きな数なんですね。人類が誕生したのは数百万年前かもしれませんが、人数的には数万年前までそれほど増えなかったと考えられています。70億人というのは、一説には、歴史を通して地球の表面を歩いたことがある人間の数をすべて足した数のうち、7%くらいに相当すると考えられています。「過去に地球が体験したことのない、未曽有のペースで人類が増えていて、それが今」というのは確かなようです。

人口爆発は何が恐ろしいのか

宮本英昭氏。専門は固体惑星科学、特に惑星地質学。1995年東京大学理学部卒、2000年博士(理学・東京大学)取得。アリゾナ大学月惑星研究所客員研究員を経て、2006年より東京大学総合研究博物館助教授(07年より准教授)。東京大学大学院理学系研究科・新領域創成科学研究科准教授を兼任。米国惑星科学研究所上級連携研究員。Science誌やNature誌などへの論文掲載多数。主要業績は、小惑星上の地滑りの発見や火星の最新の流水地形の発見など

――人口が増えると、何が問題なのでしょう?

宮本: まずは食べ物を考えてみましょう。人間は穀物も食べますが、ぜいたくなことに肉も食べます。牛肉を1キログラムをつくるのに穀物が約30キログラム必要になると言われています。肉のように、食物連鎖の上のほうのものを支えるには、食物連鎖の下の方の生物がたくさん必要になるわけです。

 地球上では(植物が)光合成をして、太陽から来るエネルギーを使って成長します。例えば牧草とか。それを他の生物が食べて成長し、その生物も他の生物に食べられて……という形で食物連鎖はつながっているのですが、光合成で作られたものの3分の1くらいを、人間が使っていると言われています。農耕に使える土地は、無限には増えません。歴史的には「どれくらいの数の人間が暮らせるか」というのは、「食糧がどれだけあるか」という観点で決まっていました。みながぜいたくな食べ物を食べ始めたらどうなるでしょうか?

 もう一つは環境汚染です。二酸化炭素の排出量が増えると温暖化する、とよく言われますが、二酸化炭素が増えることで、どんな恐ろしい変化が起こるのか、その全体像は実は正確には把握できていないのです。ただ、すでにいろんな変化は起こりつつある。例えば空気中の二酸化炭素が増えると、海水にも二酸化炭素が溶け込み、海水の化学的な性質が変わってしまって、食物連鎖が途切れてしまうとか。他にも、砂漠化の問題もありますし、肥料の窒素やリンが川や湖などを汚してデッドゾーン(無酸素領域)になってしまうとか、生物多様性が損失してしまい生態系が破たんしてしまうかもしれない、淡水利用が多すぎて水の供給が途絶えるなど……。ただ、地球の環境にどれほど負荷をかけたら取り返しのつかないことになるのか、引き返せなくなるのか、それはまだ誰にも分からない。いろんな計算をする人がいて、ある人は「もう間に合わない」と言っていますが。

 人口が増え続けて、食糧供給や環境汚染といった要因の一定のラインを越えたら、人間はどうなるか? 実は人類は過去に、そういう例をいくつか経験しています。イースター島をご存じですよね。

――モアイ像のあるイースター島ですか。

宮本: 4〜5世紀にポリネシア人がイースター島にたどり着いたのが起源で、モアイ像に代表されるすばらしい文化をつくったと言われています。あの島には危険な外敵などはいなかったので、イースター島の住民は農業をして暮らし、人口を増やしていったのですが、狭い島なのである日、資源が――食べるものが枯渇してしまったんです。

 17世紀くらいまでは立派な文明があったはずなのに、18世紀にヨーロッパ人がイースター島に上陸したときには、その文明は滅びていた。木はすべて切り倒され、草しか生えていなかったんです。数少ない住民は完全に原住民の暮らしに戻ってしまっており、誰もその素晴らしい文明を伝える人はいなかった。

 実はこういったことは、イースター島だけでなくあちこちで起こっているんですね。古代エジプトにもあったし、ギリシャにも似た例があった。人類は部分的にはこういったことを経験してきたわけですが、「一定のラインを超えて人口が増えたらどうなるか?」という問題を、まだ人類は地球規模では経験していない。その問題に直面しているのかどうかも、分からないわけです。

――地球規模でイースター島のようなことが起きたら、まさに映画『インターステラー』の設定のように、人類はこれまでのように地球上で暮らし続けられなくなる……?

宮本: いつそうなるのか、本当にそうなるのかは分からないですよ。ただ、地球上で人類が、今後も安定して暮らしていくことができるかどうか。それにはふたつの要素、論点があると考えられています。ひとつは「資源枯渇」、もうひとつは「環境の破壊」です。ここでいう「資源」とは、エネルギーとか食糧とか、広い意味での資源を指します。イナゴが農作物を食い尽くすように、人類が地球上の資源を使い尽くしてしまうのではないか? という論点です。もう一つの環境破壊は、人類が地球を汚すスピードが自然の持つ浄化能力を超えてしまう、ということですね。人間が浄化に取り組むこともできるでしょうが、それをするには莫大(ばくだい)な資源が必要になる可能性があり、そのために資源を枯渇させてしまう。

 地球は約46億年前に誕生しました。その長い歴史の結果として、地球には石炭・石油といったエネルギー源や、4000種を超える多種多様な鉱物が生みだされました。これらの資源を、人類は猛烈な勢いで消費しています。このまま完全に資源を消費し尽くしたら、どうなるだろう? という問題意識から始まったのが、2013年に東京大学総合研究博物館で行った「宇宙資源 = Pie in the sky」展なんです。

宇宙の資源を地球で活用する、という可能性

――宇宙資源展の資料を拝見しました。地球の資源は有限で、そう遠くない未来に採り尽くしてしまいそうだ。でも、他の惑星や、宇宙にある資源を地球に持ってきたら、人類が利用できるのではないか? という考え方は、すごくワクワクしますね。

宮本: 今すぐに、となると現実的には相当難しいのですが、将来的には、宇宙にある資源を地球に持ってきて活用する、しかもそれが地球人にとって非常に有益なビジネスになる……ということは実現するかもしれません。例えば鉱物です。人類は、地球上にある主要な鉱物について、高品位なものは使い果たしつつあると言われています。

――高品位な鉱物とは、どういう意味ですか?

宮本: 高品位とは、その成分が高い濃度で濃縮しており、かつ、エネルギー的に取り出しやすい状態にあるという意味です。金属を放っておくと、さびてしまいますよね。あれは金属が酸素と結びついて酸化した状態、つまり「酸化物」です。酸化した金属を元に戻すにはエネルギーがとてもたくさん必要なので大変です。それに比べれば、硫化物から中の金属を取り出す方が簡単です。地球では枯渇してしまって低品位のものしかなく、これを精錬するくらいなら、新たに宇宙から高品位な鉱物を持ってくる、というビジネスは、将来的にはあり得ます。

――具体的にはどういう鉱物でしょう?

宮本: 分かりやすい例は、鉄です。鉄は我々の文明を作っている主要な物質ですから、さびた鉄、つまり酸化鉄を含んだ鉄鉱石に膨大なエネルギーをかけて、鉄を取り出す……ということをしています。地球規模で見ると、人類は酸化鉄を還元して鉄を取り出すために、原発数十個分というとんでもない量のエネルギーをかけているんです。環境問題というと、二酸化炭素の排出量が話題になりますが、問題の根源にあるのがこれです。

 鉄をどうやって確保する? ということを考えたとき、地球は酸素がたくさんあるので、鉄の多くは酸化鉄の状態で存在しています。ここから鉄を取り出すには、たくさんのエネルギーが必要になる。でも、宇宙ならどうでしょう? 地球の環境はむしろ特殊で、一般に宇宙空間は酸化しづらい。実際に、99%以上鉄でできている隕石は発見されていますから、その母天体である小惑星は完全に鉄でできているだろう。そう考えると宇宙には、結構な量の鉄、しかもものすごく純粋な鉄が浮かんでいるんです。

――なるほど、そういった鉄の小惑星で、手頃なサイズのものを地球に持ってくれば……!

宮本: そういうことです。宇宙空間にある鉄の小惑星を持ってきたら、使いやすい金属の鉄にすでになっているわけです。さらに副産物として、プラチナなど希少金属も含まれています。将来的には、そういう取り組みも普通に行われるようになるのではないでしょうか。実際にやるとなったらいろいろ解決しなくてはならない問題がたくさんありますし、そもそもロケットを飛ばしてそういうものを持ってくるのにコストがかかりすぎて、とても採算が合わないので、今はやっていませんけれど……。

人類が宇宙に進出したらどんなビジネスが?

――今のお話は宇宙にある物質を地球に持ってきて使う、という話でした。逆に、映画のように人類が宇宙に行く、という可能性はどうでしょう。

映画『インターステラー』のように、人類がほかの星へ行く可能性は?

宮本: 現実に人類が降りたことがある地球以外の星は、ご存じの通り月だけです。でも、火星に人間を送り込むことなら、今すぐにでもできますよ。

――えっ、そうなんですか?

宮本: 技術的には、ですけどね。実は、大きなロケットを最も一生懸命作っていたのは冷戦の頃なんです。1970年代の段階ですでに、米国はかなり大型な探査機を火星に送り込んでいます。技術的には今すぐにでも火星に行くことはできる、これは研究者は皆知っています。ただコストが高すぎるんです。10兆円では効かないと言われています。

――じゃあ、火星になにかものすごく貴重なものがあって、それを地球に持ち帰ったら、地球の大きな問題が解決するかも……なんていうことになったら、火星に人類を送り込もうという話が起こるかもしれないわけですね。

宮本: NASAが火星に大型の探査機を送って、火星からサンプルを持ってこようというプロジェクトは、今まさに進んでいます。その前段階となる「Mars Rover 2020」という計画があるんですが、それは何のサンプルを採ってくるべきか、あらかじめ決めておこうという話なんです。私も5月にNASAに行って「ここに行くといいよ」という話をしていたんですが……

――ここに行くといいよ、というのは火星ですか?

宮本: そうそう。僕はね、火星に住むならここしかない、と思ってる場所があるんですよ。メラス・カズマ(Melas Chasmata)というんですけどね。メラス・カズマは空気も分厚いし、水も多分あるし、赤道域で日照もあるし、いいところなんですよ(笑)。それくらい我々は具体的な話をしています。火星の表面って、一般の方はなかなか見たことがないかもしれませんが、我々は地表にある30センチメートルのものも判別できるほど高解像度の画像を見ていますからね。Google Earthよりも詳しい画像を。

――30センチの大きさの岩があったら見分けられるということですか?

宮本: そう。火星研究者は、地球の航空写真より鮮明な画像で火星を調べているんです。「火星のことなら自分の家の裏庭より詳しい」というくらい。火星は空気が薄い上に水蒸気がないため、地球よりよほど調べやすいんです。現在、6機の探査機が火星を同時に探索していますからね。そのうち2機は地表を走り回りながら、写真を撮って地球に送ったり、地表を掘ったり、実験を行ったりしています。

――びっくりしました。そんなに研究が進んでいると思いませんでした。

宮本: 火星の風景って見たことあります? (米国の)アリゾナ州みたいなんですよ。ちょっと殺伐としたどこか、という感じで地球の風景とよく似ています。地球で起こるさまざまな現象も火星で同様のことが起こっていて、最近では「水が流れている」なんて報告もありました。

――火星に水が流れているんですか!

宮本: その報告は、本当かどうかまだ判明していないんですけどね。でも、火星の地表はちょっと掘れば氷が出てきますから、喉が渇いたら氷を溶かして水を飲むことはできますね。火星の内部の温度は結構高いので、地下深くには水の層があって、そこにはバクテリアくらいは生きてるんじゃないか? と言われています。火星は今でこそとても乾燥した惑星ですが、昔は地球と同じように、雨が降って、海があって……と水が循環していたのではないかと考えられています。

 あと、磁場があったとも言われていますね。磁場というのは実は非常に重要です。地球は真ん中が鉄でできていて、磁石のようになっている惑星なので、地表を磁場が覆っていて、それが放射線をさえぎっています。でも、磁石になっている惑星というのは多くないんですね。例えば火星には地球のように磁場がありませんから、地表にいたら、放射線をそのまま浴びてしまう。宇宙で怖いのは放射線です。低温よりも、空気がないことよりも放射線が怖い。宇宙空間は放射線が飛び交っていますから、人間が行ったら放射線にやられて死んでしまいます。

――惑星に生物が生きるためには、磁場などで放射線から守られていないと無理、ということですね。

宮本: 30億〜40億年くらい前には火星にも非常に強い磁場があって、生命がもし暮らすとしたら、地球よりもっと都合のいい状態だったのではないかと考えている人もいます。さらに、生命が生まれたのは実は火星で、火星から隕石かなにかで地球に運ばれてきたのではないか、それが地球の生命の起源ではないか――そういう説もあるくらいなんです。

――ええっ!

宇宙人はいますか?

宮本: その説が本当かどうかはともかく……「他の天体に生物が暮らすことができるか?」という問いの答えは「Yes」です。あと、この仕事をしていると必ず「宇宙人はいると思いますか?」って聞かれるんですけど、「絶対いる」と思っている研究者は多いですよ。地球上で宇宙人に会うことは、さすがにないでしょうけども。

 地球は太陽の周りを回っている天体の一つなわけですが、太陽のような星は銀河系に1000億個くらいあるわけです。じゃあ銀河が宇宙にいくつあるかというと、3000億個くらいではないかと言われています。3000億個ある銀河の中に、それぞれ1000億個ずつ太陽みたいな星があるとしたら、その中には地球みたいな人間が住める環境の天体もあるだろうと思うんですよ。多分、数億個じゃきかないくらいたくさん。

 そういう視点で考えたら、『インターステラー』の「人類が住める星を探しに行く」というストーリーは、現実にあり得ないことではない気はします。もちろん、どうやって探しに行くんだ、っていう話はありますけど(笑)。

日本の技術力は、宇宙で役に立つ

――宇宙へ人類が進出するとなれば、新しいビジネスも生まれてくるかもしれませんよね。今後こういうビジネスが注目だ、あるいはすでにこういうビジネスが生まれている……という例があったら教えてください。

宮本: 日本の企業は宇宙開発の分野、強いはずですよ。私は米国にいたときに「日本の企業と一緒にやりたい」という声を何度も聞きました。宇宙へ行くには地球の重力に打ち勝っていかなくてはいけないわけですが、そのためには重いものは困るわけです。持って行くのは、小さく軽いデバイスがいい。そして宇宙に出たら、太陽光発電などで電気を作って使いますが、こういった機械は高効率なものがいい。小さくて高効率なデバイスが求められます。

 それから、可動部があっても壊れない、軽くて丈夫なもの。火星のローバー(探査車)は、ロケットなどで持って行って、折りたたんでエアバッグの中に入れた状態で地面に落とすんです。地面に着いたら探査機がエアバッグの中から出てきて、パタパタッと動ける姿に組み上がって活躍するんですけど、運ぶときの振動や、落としたときの衝撃で探査機が壊れやすいんですね。可動部があるのに壊れない、小さくて軽くて強い、丈夫なものが必要になります。

 こういったジャンルは、まさに日本企業の一番得意なところですよね。あとは日本のロボット技術。これらは強いニーズがありますよ。

映画『インターステラー』の見どころ

新谷里映氏。雑誌編集者を経て2005年に独立。現在は映画を中心にライター&インタビュアーとして活動中。女性誌「MORE」「ESSE」、映画誌「日本映画magazine」「CINEMA SQUARE」、ウェブ「cinemacafe.net」「NYLON JAPAN」などでインタビュー、コラムなどを執筆。2014年4月からは、日テレ「PON!」(月曜レギュラー)、J-WAVE「I A.M.」内の「MY FIT MOVIES」 の映画コーナーを担当

――ここからは映画『インターステラー』の話に移りたいと思います。数々の映画を観ている新谷さんから見て、この作品を監督している、クリストファー・ノーランとはどういう特徴がある監督なのでしょう。

新谷: とにかく「予想がつかないストーリー」。彼がブレイクするきっかけとなった作品、2000年公開の『メメント』の時からそうなのですが、クリストファー・ノーランといえば、映像でもストーリーテリングの部分でも、どちらでも必ず見ている人を驚かせてくれる監督です。そして、その時代の飛び抜けた人材を連れてくる。

 映画の題材としても、非常に面白いものを選ぶんですね。『インセプション』では、人の潜在意識の中に入りこみ、夢の中の夢の世界で……という何段階にもなった複雑な内容を、映像として形にし、ちゃんと面白くことができる監督です。見ている人がスクリーンにのめり込んで見てしまう、そんな作品を作り続けているのがすごい。過去の作品を見ていても、彼は観る人の期待を絶対裏切らないですよね。

――彼は非常にリアリティを追求する監督ですよね。宇宙船とか宇宙服のデザイン一つとっても「こうしたらSFっぽくなるよね」というのはまず選ばない。

新谷: そうですね。クリストファー・ノーランはリアリズムにこだわる監督でもあるんです。たとえば、役者が電気のスイッチをひねると、ちゃんと作動するようにスイッチが作られている……というような。無駄な装飾もしたくない、デザインのためのデザインはしないということで、今回『インターステラー』でも、宇宙船や宇宙服は実用性優先で作っていたそうです。

――今回は、物理学者のキップ・ソーン博士が提唱するワームホールや、それを利用した時間旅行という概念を知って「これは面白い!」ということでプロットに採用したそうです。『インターステラー』では、主人公は幼い娘を地球に置いて宇宙に行くのですが、「必ず帰ってくる」と約束して出発します。ワームホールを通ると時間の概念が変わるそうなんですね。それを利用したすごいドラマが描かれているようです。

新谷: それは楽しみですね。そうなると今回は、人類が滅亡してしまう、という話に、地球の資源の問題や宇宙探索、さらに時空の話、家族の愛といったさまざまな要素が盛りだくさんに入っているわけですね。これだけのものを一つにきれいにまとめてしまう手腕が、クリストファー・ノーラン監督ならではといえます。

――俳優陣についても聞かせてください。マシュー・マコノヒーがいいパパ役というのはかなり意外なキャスティングですよね。

新谷: 主演のマシュー・マコノヒー、今回は元エンジニアのパイロットで、2人の子どもの良き父親でもあります。地球を救うため、家族のために命を賭ける……という設定のキャラクターを演じていますが、1〜2年前のマシュー・マコノヒーといえば、変わった役柄が多かったですからね。『MUD -マッド-』では脱獄犯を、アカデミー賞主演男優賞を取った『ダラス・バイヤーズ・クラブ』ではエイズに冒された男を、『マジック・マイク』や『ペーペー・ボーイ』ではイカれた男を演じていました。胸元開けてちょっとワイルドでセクシー……という感じで、”良き父親”とは真逆の路線をずっと行っていた彼が、家族愛をテーマにどんな演技を見せてくれるのか。そこも楽しみですね。

マシュー・マコノヒーは娘を想いつつ宇宙へ向かうエンジニアを演じる

――日本でもファンが多い共演のアン・ハサウェイはいかがでしょう。

新谷: アン・ハサウェイは『ダークナイト・ライジング』ですでにクリストファー・ノーラン監督とは一緒に仕事をしていて、キャットウーマンとして出演しているんですね。おそらくノーラン監督はこのときに彼女を気に入って、今回も起用したのではないかと思います。

 彼女も非常に実力のある女優ですね。最近だと『レ・ミゼラブル』でアカデミー賞助演女優賞を受賞。役作りのため約11キロも減量、丸刈りになるなどして、本物の歌を披露していました。今回は科学者・飛行士というまったく違う役柄ですが、ノーラン監督がこだわった衣装ですから、宇宙服一つとっても重かったり動きづらかったりして女優さんとしては体力的にも大変な苦労があったんじゃないかと思います。CGを使わず、アイスランドに行って撮影したという話も聞いていますし。過酷な現場の中で彼女がどんな演技を見せてくれるのか、一ファンとして私も非常に楽しみです。

アカデミー賞受賞の実力派女優アン・ハサウェイ

――最後に、お二人ともこれから『インターステラー』をごらんになると思うのですが、期待するポイントを教えてください。

新谷: ローランド・エメリッヒ監督の『インディペンデンス・デイ』や『デイ・アフター・トゥモロー』といった、ディザスタームービーはこれまでにもいろいろ作られていますよね。地球の危機や人類の危機を描いた映画、という点では『インターステラー』もディザスタームービーなのかもしれないですが、クリストファー・ノーランはもっと違うもの……リアリティや、父娘愛といった要素をとことん追求して、ディザスタームービーの一歩先を行く、“新ジャンル”の映画になっているんじゃないかと期待しています。

宮本: こういう、宇宙開発をかっこよく描いてくれる映画、宇宙を舞台とする映像は、基本的にうれしいですね(笑)。娘との約束、地球を救うというミッションも格好良くていいですし。

 人類は本当に今、大きな難問に直面しているわけです。僕らはそれになんとかして立ち向かわなくてはいけないし、そしてそれを解決するのは、科学技術の力であるべきだと思って研究しています。我々のからすると、こういった宇宙を描いた映像に触れることで、宇宙や天体の研究に憧れて志してくれる人たちが増えてくれたら、それはとてもうれしいことです。

――宮本先生、新谷さん、今日はどうもありがとうございました。

映画『インターステラー』予告編

11月22日公開、映画『インターステラー』とは?

 それは、明日か10年後か、現実に起こりうる遠くない未来。世界的な食糧飢饉、劇的な環境変化によって、地球の寿命は尽きかけていた。生きて帰れるか分からない、重大な使命を担う壮大な旅に選ばれたのは、まだ幼い子供を持つ元エンジニアの男と数少ないクルーのみ。彼らは、居住可能な新たな惑星を探す為、前人未到の未開の地へと旅立つ。

 それは人類の限界を超える不可能にも思える史上最大のミッション。果たして彼らは、自らの使命を全うし、愛する家族の元へと生還することが出来るのか!?監督は『ダークナイト』『インセプション』のクリストファー・ノーラン。主演は『ダラス・バイヤーズクラブ』でアカデミー賞主演男優賞を受賞したマシュー・マコノヒー。共演に『レ・ミゼラブル』で助演女優賞を受賞したアン・ハサウェイ。

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映画『インターステラー』

映画『インターステラー』予告【HD】2014年11月22日公開