PHSの知られざる活用法(番外編2)「PHSをトランシーバモードで使う」

2台のPHSで通話料がかかることなく通話ができる,トランシーバモードというものをご存じだろうか。この機能はワイヤレスTAなどに内線登録されたPHS同士でも実現できる。

【国内記事】 2001年3月28日更新

 PHSの知られざる活用法(上)では,ワイヤレスTAにPHSを内線登録して,家庭内コードレスの子機として活用する方法をご紹介した。

 やってみて気づいたのだが,見渡しがいいとけっこう電波が届く。筆者の部屋(集合住宅)の窓からふだん利用しているバス停までは遮るものがないため,数十メートル程度離れたバス停でも家庭内コードレスの子機として使えてしまう。バス待ちの時間にちょっとしたメールチェックをする上では,高いPHSの通信料ではなくフレッツ・ISDNの定額料金で使えるわけだから便利だ。

 反面,あまりに電波が飛びすぎるのはセキュリティの観点からするとやや不安がある。もちろんデジタルであるからアナログコードレスのように簡単な盗聴はできないだろうし,設定時には暗証番号を登録するため,安易な乗っ取りはまず起こり得ないと思うのだが……。

忘れられた機能? トランシーバモード

 さて,今回紹介したいのは,その本編では記さなかった,もう1つの使い方だ。実はPHSには,高速データ通信や構内コードレスの使い方のほかにも,その開発当初から盛り込まれていた便利な機能がある。それが今回紹介するトランシーバモードだ。

 街なかや行楽地など,外出先に持ち出した複数台のPHSの間で,公衆PHS回線を経由することなく,あたかもトランシーバのように使うことができるのだ。

 そんな機能は初耳だ,と言われる方も多いだろう。これもPHSの開発コンセプトの段階から盛り込まれているものとはいえ,現状をみると簡単にできるものではない。実際にトランシーバを使うには,事業者のショップに持ち込んで設定してもらわなければならない。

 もう1つの方法としては,ワイヤレスTAやISDNデジタルコードレス電話機などの親機に内線登録するやり方がある。同一親機に登録されたPHSの間では,トランシーバモードを使えるようになる。活用法の(上)で紹介したように,たとえば,NECのワイヤレスTA「Aterm IWX70」などがあればいいわけだ。

 トランシーバモードへの移行の仕方自体は簡単だ。内線登録されたPHSならモード切替ボタンで,公衆,OS(Office Station),トランシーバの各モードが切り替えられるようになっている。ここでトランシーバを選べばいい。ただし,トランシーバモードにすると,公衆PHSや,OSモードでの内線電話としては働かなくなる。トランシーバモードとそのほかのモードでの“同時待ち受け”はできない。

 トランシーバとして通話してみるには,トランシーバモードに切り替えた状態で,それぞれの内線番号をダイヤルすればいい。実際の使い勝手は普通の電話と同じだ。

トランシーバモードで電話をかけてみたところ。左(内線92)のPHSから右(内線91)のドッチーモに電話をしている

実際に使ってみる

 と説明してみたわけだが,このトランシーバモード,はたしてどの程度使えるのか?

 利用シーンを想定すると,トランシーバが効果を発揮するのはやはり家族連れで出かけた時だろう。とくに家族が別々の売り場に行ったり,待ち合わせをしたりすることも多いショッピングの場面では有効なのではないかと思う。

 そこで新宿にまで出かけ,デパートのなかで使ってみた。たしかに同じフロアのなかではちゃんとつながり,通話についても問題ない。平面的に見渡しのいい環境では良好に通信できるようだ。

 お互いが違うフロアへと移動してみる。1階違うと,フロアの端と端同士では,かなり雑音が混じるようになる。ただし片方がエスカレータ付近など,上下階に吹き抜けがあるところにいれば問題なく通話ができる。だが,それも2〜3F以上離れると厳しくなるようだ。ほとんど通話が成り立たず,着信もできなくなる。ただ,フロアが離れても双方がエスカレータ付近など吹き抜けた空間にいれば,1階と9階の間でもほぼ問題ない。

 以上を考えると,完全にトランシーバだけで連絡を取り合うのは厳しいようだ。とはいえ,これは新宿の大きなデパートの話。電波自体は見通しで約100m届くという仕様になっている。家庭内のコードレスと同程度と思えばいいだろう。たとえばもう少し小さいスーパーなどの建物内や,平面的に広がって見渡しのよい空間などではより有効に使えると思う。

 ちょっとしたことで携帯電話やPHSを使い,通話料金を払ってしまうことはよくあったが,このトランシーバモードを使えば節約することができる。こうしたちょっとした便利な使い方ができるのも,PHSの忘れられた魅力だ。こうした活用法が埋もれているのはつくづく残念でならない。

会社の事業所コードレスのPHSを登録してみたら…

 ところで話はそれるが,今回1つ明らかになったことがある。

 筆者は個人使用のスーパードッチーモや,機種変更して白ロム状態になったPHSを,ワイヤレスTAに登録してトランシーバやコードレスフォンとして活用しているわけだが,実はもう1台,PHSを持っている。

 それは会社から貸与された,事業所コードレスに登録されたPHSだ。業務用であり,外出先ではPHS,会社の建物内に行けばその内線環境でのコードレスになる。PBXとフロアに配置されたCS(基地局)の機能により,本稿で紹介してきたようなワイヤレスTAと同じ仕組みが,会社のオフィスで実現されている。最近では,こうしたコードレス環境を導入している事業所はけっこう多いのではないかと思う。

 この会社貸与のPHSを家庭のAtermに登録してみたところ,すんなりと登録できた。この時,会社はOSモード1,家庭ではOSモード2という形でPHSが判別し,それぞれの内線子機として働くことになる。PHSは複数のOSモード環境に登録することが可能だ。

 ところが会社貸与のPHSと家庭のPHSの間では,トランシーバとしての活用はできない。会社で登録されたPHS同士ではトランシーバ通話はできるのだが,会社でOS登録したものを家庭のAtermにも登録し,その家庭のTAにぶらさがったもの同士で,というトランシーバ利用はできないようだ。

 マニュアルによると,家庭内の装置と事業所のシステム双方に登録した場合には,後者のほうでのみトランシーバ通信できる仕様になっているらしい。ということで,ご主人が勤務先で使っている事業所PHSと,奥さんが契約しているPHS両方をAtremに登録して……という,現実にあり得そうな形での使い方は,トランシーバとしてはできない。

 会社貸与のものを利用するというちょっと虫のいい使い方はあきらめて,どこからか古い白ロム状態のPHSを探してくる必要がありそうである。

 番外編1にて,「Mac OS標準添付のリモートアクセスも,PAP認証をサポートしていない」と記述したが,やや言葉足らずであったため若干,補足・修正したい。

 アップルのサイトにもあるように,正確にはリモートアクセスはCHAPおよびPAP認証をサポートしている。ただしCHAP認証を試みて接続できなかった場合に自動的にPAP認証になるという仕様になっており,PAP認証のみを指定することができない。

 そのためフレッツ・ISDNのRASでいったんCHAP認証が確立してしまうと,そのままCHAPで接続してしまう。このためPAPを採用しているプロバイダーはやりとりができず,接続後に切断されることになる。

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[大水祐一,ITmedia]

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