携帯電話にも燃料電池?──連続6カ月駆動を目指す

“燃料電池”は,電気自動車のためだけの技術というわけではない。米Manhattan Scientificsは携帯電話に燃料電池を採用しようと開発を続けている。

【国内記事】 2001年4月5日更新

 携帯電話に多くの機能が詰め込まれていくなか,今後,確実に問題になっていくのは消費電力だ。

 モノクロの液晶だったものが,カラーTFT液晶になり,着信メロディのためにスピーカーの容量も増大し,Javaなどのアプリケーション環境の搭載でCPUも高速なものが求められてきている。さらに,IMT-2000の端末では音声使用でもこれまでより多くの電力を消費する。

 端末を構成する各部品の低消費電力化も進められているが,根本的な解決には至っていない。NTTドコモの最新型端末である「503iシリーズ」では,570〜680mAhもの容量を持った電池が利用されている(3月19日の記事,2ページ目参照)。それでいて,連続通話時間/連続待受時間は従来機種と同程度だ。

小型端末の電池にも革新起きるか?

 現在,携帯電話に使われている電池は,ノートPCなどと同じリチウムイオン電池だ。リチウムイオン電池も年々容量をアップしているが,いっきに“何十倍の容量”とはいかない。

 米Manhattan Scientificsが開発を進めている「マイクロフュエルセル」という電池は,携帯機器の電源に革新をもたらしてくれるかもしれない。

 マイクロフュエルセルとは,電気自動車の電源して注目を集めている燃料電池の一種だ。自動車用などの大型の燃料電池と異なり,「従来のプレートスタックを,小型のコンポジットのスタックにし,ポンプなどを動かすための駆動部をなくした」と,日本でのマーケティングを担当する美浜の美濱健社長は話す。

 これにより,「大きく重い」「可動部が多い」「使用温度が800度〜1000度」という従来の大型燃料電池の欠点を克服した。マイクロフュエルセルでは,25度程度の常温で使用でき,燃料にも水素ではなくメタノール,エタノールかケミカルハイドライドを利用できるという。

これまでの大型燃料電池(左)とマイクロフュエルセル(右)の構造。構造を簡素化することで,ワット当たりのコストは増大したが,携帯機器にも搭載できる大きさと安全性を実現した(写真は3月23日,横須賀リサーチパークで行われたモバイル・ベンチャー・メッセ2001でのもの)

リチウムイオンの数倍のエネルギーを発生

 マイクロフュエルセルでは,リチウムイオン電池と同容量で3〜5倍,同重量で6〜7倍のエネルギーを発生するという。

 実際に,マイクロフュエルセルを利用した携帯電話の携帯型充電器「パワーホルスター」(写真)のプロトタイプは,数カ月正常に動作したという。

 現段階では,「触媒のコストが高い」(美濱氏)などの理由で,リチウムイオンの倍以上の価格となってしまう。また発生する電力も,まだ満足できるものではない。なかなかリチウムイオン電池を直接置き換えるまでには至っていないというのが現状だ。

 しかし,「基礎研究は終わった。商品化に着手していく」と美濱社長は語る。15〜20ccのアンプルで,携帯機器を6カ月動作させることをターゲットに,2002年を目処に研究を進めているという。

 通常の蓄電池と異なり,燃料電池では充電の必要はなく,単に燃料を補充するだけで利用できる。また,メタノールなどの燃料は入手しやすく,環境に与える影響も少ない。電気を生み出した際に発生するのも,若干の水分(霧状)と二酸化炭素のみだ。

マイクロフュエルセルのサンプル。これを筒状に丸めて燃料を入れれば,電力が取り出せるという

 「マイクロフュエルセルが実用化されれば,飛行機に乗っているときも,海外に行ったときも,電源の心配をすることがなくなる」と美濱社長は夢を語る。

 実現はまだ先のことだが,商品化された暁には,携帯機器の利用法を一変させる可能性を感じさせる技術だ。

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[斎藤健二,ITmedia]

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