第6回 携帯電話は“電話”? それとも“メール端末”?これまで仲よくやってきた携帯電話の通話機能とメール/Web機能だが,この2つは決して相性がいいものではない。
ブラウザフォンといえども,通話中にブラウズすることはできない。iモードのコンテンツは,通話の間のすき間時間をうまく利用するための小粒なプログラム群に過ぎない。ここでもう一度,ブラウザフォンには通話とブラウズ機能の2つの使い方があるということを,開発者・利用者ともに確認すべきではないだろうか。次世代ブラウザフォンの夢を見るのは,それからでも遅くはない。 ブラウザフォンには電話の機能とブラウザの機能が同居しているこれだけははっきりといえる。現在のブラウザフォンは,電話の機能とブラウザの機能がいっしょに入っているだけだ。機能的に統合されているとはいいがたい。なぜなら,ブラウザを使いながら通話することはないからだ。Webページに記述された番号リンクから,直接通話が可能ではあるが,それ以上の連携はない。 今や“iモード”利用者は2300万人。通話と直接連携していないiモードがここまでヒットした理由は,“すき間時間”の利用にあった。なぜか? そもそも携帯電話は,話している時間よりもむしろ待っている時間の方が長い。しかし,だからといって放っておくわけにもいかず,いつかかってきても受け取れるように携帯する必要がある。だったら「もてあましている携帯電話で何かしたい」と思うのは自然な流れだ。電話着信の妨げにならない程度にさまざまなゲームやニュースなどのコンテンツを利用できれば,ブラウザフォンユーザーにとっては価値が生まれるだろう。 そんな利用者のシンプルな要求に,コンテンツ開発者が参加しやすいHTMLサブセットを導入し,よりバラエティに富んだメニュー構成で応えたドコモのマーケティング戦略がiモードの成功の全てといっても過言ではないだろう。 このようにiモードをはじめとするブラウザフォンは「電話」として,そして「ブラウザ」としてそれぞれの方向で確立した。しかし,電話とネットアプライアンスが同居しているだけで何の連携もない。それが現状なのである。 さらに拡大する“すき間”通話とのバランスは今後どうなるか? すき間を埋めるコンテンツの代表選手はやはりゲームやニュース,メールだと思うが,これをさらに加速したコミュニケーションサービスが登場した。 KDDIの携帯電話ブランド「au」が,対応機種だけに提供するメッセージサービス「おしゃべりモード」(4月25日の記事参照)は,1つのメッセージを送るのに0.5秒程度しかかからず,チャット感覚でメッセージをやりとりすることができる。 同様のサービスをドコモAOLは「FMCサービス」として実現するとみられている。また,Nokia, Motorola,Ericssonが,携帯電話でメッセージをやり取りするための仕様作成プロジェクト「Wireless Village」(4月27日の記事参照)を立ち上げているなど,チャット形式のコミュニケーションはさらに加速する模様だ。 また,こういった「ブラウズ系」のコンテンツの拡大を加速させる動きもある。インテルが発表した「XScale Microarchitecture」に基づく初のチップは素晴らしい。最大1GHzの周波数を実現できるチップが,単3電池1本で数時間動作するという。考えられる可能性は計りしれない。 チャット系のサービス提供をもくろむ各社は「携帯市場の拡大」を狙っている。しかし,これは行き過ぎではないだろうか。ブラウザフォンでのチャットは,電話の着信を妨げることにもつながるからだ。 「電話をかけてみたら“データ通信中のため”つながらなかった」という経験をお持ちの方も多いだろう。 少なくともFOMAが目指す「通話中でもインターネット」が実用化するまでは,電話をしてもつながらないということが激増しそうだ。 すき間を埋めるだけのはずが,通話の機能にまで浸食し始めているのである。 携帯とネットアプライアンスに橋を渡せ!ところで,筆者が注目するのは,日常では成し得なかったことを実現する,こんなコンテンツサービス(3月28日の記事参照)だ。 コカ・コーラ,ドコモ,伊藤忠商事が手がける「i-vending Machine」は,iモードでジュースが買えるというサービスの実証実験だ。ポイントシステムや広告表示などの機能もあるが,何より,単に常に持ち運んでいる携帯が,そのまま財布代わりになるということが直感的ですばらしいのだ。 ブラウザフォンでのゲームやメール利用は,あくまでネットアプライアンスの機能を切り替えて使っているに過ぎないが,この「i-vending Machine」は,携帯電話の持つ物理的位置を,ウェブ上のコンテンツと同期させているところで一歩先を行っている。 この例は通話機能との連携ではないが,「通話」と「ブラウザ」この2つの機能が融合することで初めて新しいサービス,新しい市場が生まれるのではないだろうか。 まずは電話機能をサポートする画期的ソフトウェアの登場に期待をフリーのジャーナリストでありつつ,プロデューサー的な仕事も多い筆者は,自分のオフィスに腰を据えている時間があまりない。そこで愛用するのが「JFAX」というサービスだ。 このサービスに加入すれば,世界数十カ国に自分専用の電話番号を持つことができる。この電話番号にかかってきた電話はセンターに接続され,留守番メッセージやファックスがデータファイルとなり,自分のメールに送られてくる。 相手には何も説明する必要はなく,ただ普通の電話番号として伝えるだけでいい。このサービスは,もう3年以上も,筆者のビジネスを支え続けている。 たしかに,CPUが高性能になり,通信速度が速くなれば,今までに実現しなかったコンテンツやテレビ電話のような使い方(3月8日の記事参照)も可能になり,より自然なコミュニケーションを実現できるかもしれない。しかし,通信コストの面からも,テレビ電話が一般的になるのにはまだ時間がかかりそうだ(2月25日の記事参照)。 それよりも携帯電話の「通話」機能をブラッシュアップする方に技術を注ぎ込んでほしいと思うのは筆者だけだろうか。メールを読み上げたり,携帯にかかってきた留守番電話の内容を振り分けてメールで転送する機能が欲しい。これらの機能が,自由にカスタマイズできたら文句はない。 これらの技術を実現するのはハードウェアの役割ともいえるが,既成概念を崩したサービスとして形作るのはソフトウェア開発の範疇だ。次世代携帯電話の将来性を示す試金石は,斬新な発想の良質なソフトウェアの登場にほかならないのである。 IMT-2000スタート直前。今こそ旗揚げの時なのである。日本発のブラウザフォンだからこそ,日本のソフトウェアディベロッパーの底力を見せてほしいものだ。 関連記事 [増田(Maskin)真樹,ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
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