第2回 IMT-2000はパーソナル放送の扉を開く?

テレビやラジオを始めとする放送媒体は,大多数に向けてコンテンツを配信してきた。しかし今後,パーソナル向けにコンテンツを放送する流れも生まれそうだ。まもなくスタートするIMT-2000(FOMA)対応サービスにより,モバイルは“パーソナル放送”というジャンルに進出するかもしれない。

【国内記事】 2001年3月8日 更新

放送がようやく身近なものに

 パソコンで見る映像コンテンツが充実してきた。パソコンの前で一息入れながら主要ニュースを見る。筆者のオフィスはISDN接続なので,せいぜい40Kbps程度のストリーミング放送しか受信できず,映像はまだまだ粗い。しかし,音声は途切れることなくクリアに流れ,ニュースを視聴するのに事欠かない。

 こういったVOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスの大きな利点は,必要な番組だけを,いつでも好きな時間に見ることができることだ。テレビのように,放送開始時間を気にすることなく,またCMに邪魔されることもない。

 テレビ放送は基本的に大多数に向けてコンテンツを配信するものだ。例えば,視聴率がたった1%でも数百万人が見ることになる。それに対してVODは,それぞれの要求に応じて個人に配信される。視聴者との緊密度の高い,テレビとは全く違った性質を持ったメディアとなるだろう。

“ワタシ”に近い放送メディア

 NTTドコモの「FOMA」に代表されるIMT-2000対応携帯電話は,最大384Kbpsという高速通信を実現する。この速度を生かして,モバイル端末での映像受信の可能性が期待される。

 すでにNTTドコモは昨年末(2000年11月29日の記事参照),PHSを使った映像配信サービス「M-stage visual」に対応する端末「eggy」を発売し,64Kbpsでのストリーミング映像を配信している。1秒あたり3〜4コマと表現力に乏しいが,FOMAによって386Kbpsまで高速化されれば画質は飛躍的に向上するはずだ。

 また,松下や(2月6日の記事参照)東芝は(1月16日の記事参照),FOMA向けにワンチップのMPEG-4コーデックLSIを発表している。これが搭載されれば,手のひらの上でストレスなく映像を受信できるようになるだろう。

モバイル放送が生み出す新しいコミュニケーション

 FOMAの隠れた特徴は下り(受信)以外にも,上り(送信)の伝送速度も64Kbpsと高速だということだ。つまり画像や映像などの容量の大きい情報を高速に送信できるようになる。

 この上り64Kbpsの使い方についての将来を占う試金石となるのが「モバイルテレビ電話」のような双方向サービスだ。例えばソニーが提供するサービス「PercasTV」は,カメラの付いた端末があれば誰でも個人放送局が作れる。カメラで撮影した映像が,リアルタイムでインターネット放送される仕組みだ。

 結婚式に参加できなかった友達に向けて,会場の様子を配信したり,相互に放送しあってテレビ電話のような使い方もできる。PercasTVのサイトに行けば,個人が勝手気ままに運営している生中継を見ることもできる。

 ソニーは,これを新しいコミュニケーションの形として提供しようとしている。

 実際に映像配信を体験してみると,たとえ1秒あたり数コマであっても,その先の雰囲気を感じるには十分だということが分かる。文字や音声に「映像」が加わることで,モバイルによるコミュニケーションはより深いものになるだろう。

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[増田(Maskin)真樹,ITmedia]

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