IMT-2000“FOMA”で映像・音楽配信が難しい理由

IMT-2000がもたらす,映像配信や音楽配信の世界はそう簡単にはやってこない。それは技術的な面よりも,料金的な理由による。

【国内記事】 2001年2月23日更新

 今年の5月を待っても,映像や音楽の配信は期待はずれに終わるかもしれない。

 NTTドコモが5月からサービス開始を予定しているIMT-2000サービス「FOMA」は,ユーザーに何をもたらすのだろうか。1つ喧伝されているのは,「携帯で動画が見られるようになる」「携帯に音楽がダウンロードできるようになる」というものだ。

 しかし,これは技術的には可能であっても,現実には実現は難しい。その理由はユーザーニーズと通信料金の折り合いの問題だ。

携帯で動画は見られるが……

 携帯電話の画面はどんどん大きくなり,この春の新機種では2.1インチにまで到達しそうだ。さらにカラー化も進み,4096色のSTN液晶や6万5000色のTFT液晶の採用機種も現れてきている。家庭用のテレビに比べるとはるかに小さいが,画素は160×120ピクセル程度ありテレビを9分割表示した場合の1つ分くらいの表示能力はある。

 また,無線インフラなど遅い転送速度で映像を見るための圧縮方式「MPEG-4」も普及の兆しを見せている。MPEG-4は,Web上のストリーミングでも「QuickTime」や「Windows Media Player」が採用しており,64K〜384Kbps程度の転送速度でもなんとかストリーミング映像を見ることができる。携帯電話に向けて,MPEG-4の機能を1チップ化したものも開発されている(1月16日2月6日の記事参照)。

 FOMAでは,データ転送速度が64K〜384Kbpsと,MPEG-4の動画をストリーミングで見るのも可能な速度が提供される予定だ。

1曲700円(通信料のみ)は高い?

 このように,技術的には携帯電話で動画を見る方法は確立されてきている。しかし音楽配信といい,映像配信といい,問題となるのは,ユーザーニーズと価格との兼ね合いだ。現在,無線インフラのデータ通信料金は,主なところで以下のようになっている。FOMAも判明している部分を参考として入れてみた。

キャリア サービス名 方式 通信料 速度
NTTドコモ DoPa パケット 0.2円/128バイト 28.8Kbps
KDDI PacketOne64 パケット 0.1円/128バイト 64Kbps
NTTドコモ M-stage(PHS) 回線交換 15円/分 64Kbps
NTTドコモ FOMA 回線交換 64Kbps
NTTドコモ FOMA パケット 384Kbps

*「DoPa」とはiモードにも利用されている,NTTドコモのパケット通信網。ちなみにiモードの場合,5割増しとなる0.3円/128バイトという料金体系だ

 FOMAには,回線交換とパケットの2つのデータ通信方法が用意されており,最高速度が異なっている。回線交換が64Kbpsなのは,技術的な問題というよりも“64Kbpsに抑えた”と考えるべきだろう。周波数帯域を占有しつづけてしまう回線交換方式の場合,あまりデータ転送速度を上げると必要となる周波数帯域も増え,音声通話などにまで影響が出る可能性があるからだ。

 では,ユーザーが支払う通信料金はどのくらいになるのだろうか? NTTドコモは「現状のPHSの料金は安すぎる」と発言したこともあり,64Kbpsの回線交換方式ではPHSよりも低価格になることは考えにくい。

 パケット方式の場合,「料金体系は検討している」と語られるだけで,具体的な数字は明らかになっていない。ただし,複数の関係者が「10分の1以下にはしなくてはいけないだろう」と述べており,目安の数字と考えることはできる。

 これらを元に,たとえば音楽配信を行う場合にどのくらいの通信時間と通信料金がかかるのかを考えてみよう。ビットレート128Kbpsでエンコードされた5分間の音楽データではどうなるだろうか?

 このグラフだけを見ると,FOMAのパケット料金は十分実用的に見えるかもしれない。しかし,歌謡曲を一曲ダウンロードするのに700円以上かかる計算になる。しかも,パケット料金が現在の10分の1になると仮定した上でだ。これに楽曲データの料金(現在は300〜350円)を加えると,シングルCDと同レベルの負担になってしまう。

画質は6倍,料金30倍

 今度は1分間の映像をストリーミングで視聴した場合はどうなるだろうか? 同様に,FOMAのパケット料金がDoPaの10分の1となると仮定して計算してみる。

方式 料金
M-stage(PHS) 15円
FOMA-パケット 460円

 画質は,FOMA-パケットのほうがPHSの6倍程度向上する。しかし料金は30倍だ。

 FOMAの384Kbpsという通信速度を活かすならば,現状のパケット通信料の10分の1では論外だ。たとえ100分の1にしても,PHSのコストパフォーマンスにはおいつかない。

 「それならFOMAの回線交換を使えばいいのでは?」という意見もあるかもしれない。しかし,それならばPHSと通信料金や速度は同じで,かつPHSのほうが端末価格も安く,消費電力も少なくて済む。

映像前提の料金体系にはならない

 かといって,NTTドコモもFOMAのパケット料金を極端に安くするわけにはいかないはずだ。携帯電話の通話料金は年々安くなっており,音声通話による収益も下がっている。通信キャリアの収益の柱は,今後ますますデータ通信になる。通信料金は,一度安くしたら決して値上げはできない。10分の1でもすごいことなのに,それ以上の値下げを期待するのは難しい。

 実際,「FOMAの映像は,iモードのコンテンツに彩りを加える程度」「ビデオには表現力があるので短いものでよい」とNTTドコモは言っている。

 つまり,“映像をストリーミングで見ることを前提とした料金体系にはしない”ということだ。映像や音楽配信など,転送速度が高速になるために夢ばかりが広がるIMT-2000,FOMAだが,実際のところは単なる“高速なiモード端末”となる可能性が高い。

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[九条誠二,ITmedia]

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