FOMAはどうして電池が持たないか?サービスエリアは拡大し,端末の価格もこなれてきたものの,“待ち受け55時間”というバッテリー駆動時間の短さは相変わらずFOMAのウィークポイント。しかし,FOMAのチップセットには消費電力に関しても「工夫する余地がかなりある」と東芝の担当者は語る。
NTTドコモが2001年10月よりサービスを開始した第3世代携帯電話サービス「FOMA」。順調にエリアも拡大しているが(1月31日の記事参照),普及への課題は数多い。 ドコモが1月25日に開催した会社説明会で,津田志郎副社長はFOMAの課題として次の3つを挙げた。
立ちはだかるバッテリーという壁この中でも,大きな問題はバッテリーの“持ち”だ。現在発売されている3種類のFOMA端末は,いずれも連続待ち受け時間が55時間。最新のPDC端末に比べると,10分の1という短さだ(2001年9月の記事参照)。 バッテリーの容量に差があるわけではない。例えば「FOMA N2002」の740mAhというバッテリー容量は,平均的なPDC端末よりも20%以上多い。ディスプレイなども動作していない待ち受け時で差があるということは,これはFOMAの通信方式自体が“電力を食う”ということである。 ではどうしてFOMAの通信方式──W-CDMAは電力を食うのか。「W-CDMA方式のチップセットはまだ研究開発段階」と語るのは,東芝のW-CDMAチップセット担当者だ。
技術展にはエンジニアリングサンプルという東芝製W-CDMAのチップが展示された。“小型な”ことを特徴としているが,PDCのチップセットと比べるとまだまだ大きい。 PDCのベースバンドチップに比較して,「回路規模が全体で10倍〜100倍になっている」と説明員は話す。この回路規模の大きさが,電力を食う原因の1つになっている。 「Pentiumに匹敵する」(説明員)という規模だというから,消費電力についても想像がつく。チップは0.18μmプロセスで製造されているというが,今後の半導体技術の進歩に期待したい部分でもある。 「回路規模に応じて,リーク電流が発生する。(消費電力を増大させる)リーク電流を抑えていかなくてはならない」(説明員) もう1つの原因は,W-CDMAという技術が誕生したばかりでこなれていないところにある。 「今のW-CDMAは,回路を(理論通り)そのまま作っている段階。まだアルゴリズムも研究開発段階だ」(説明員)。PDCやcdmaOneのチップも,細かく電力制御を行うなどの改良を積み重ねて,次第に消費電力を減らしてきた。W-CDMAでも「インテリジェントな制御を工夫する余地が,かなりある」(説明員)。
端末側だけでなく,基地局側の改善もチップ側での低消費電力へのチャレンジには,基地局側のサポートも必要不可欠だ。 W-CDMAでは,PDCなどのTDMA方式と異なり,「パイロット信号や制御信号などが多重化されて乗ってくる。さらに(複数の基地局からの電波を利用する)レイク受信も処理しなくてはならない」(説明員)。 PDCでは,通話をしていない時にはパイロット信号や制御信号をチェックしていればよかった。W-CDMAでは,通話を含めたさまざまな信号が,広い周波数帯に拡散され,混ざり合って送信される。端末側では,拡散された波のなかから計算して必要な情報を取り出さなくてはならない。「何十本というフィンガーを同時に処理しなくてはならない」(説明員) 基地局の密度がもっと上がってくれば,近くに基地局があって送信電力が強いことを前提に,消費電力を抑えるように制御することも可能だと説明員は解説する。 なお,通信速度の向上にも消費電力がからんでくる。FOMAの通信速度は,現状下り最高384Kbpsだが,「現在は電波の問題で2Mbpsの速度を実現できていないが,近々できるようになる」(NTTドコモの立川敬二社長)と説明されている。しかし通信速度が高速化するに従って,消費電力も増してしまう。 「音声通話では125ミリワットだが,(より高速な通信を使う)テレビ電話では250ミリワット」(説明員) 確かに2Mbpsの通信速度を実現することは可能だが,ここでも消費電力が大きな課題。「個人的には,2Mbpsは(消費電力が問題にならない)車載用ではないかと考えている」(説明員)
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