Mobile：「技術よりマーケティング」──CDMA2000 1xネットワークをKDDIは活かせるか？（2/2）

【国内記事】

2002年3月12日更新

　FOMAに対するアドバンテージを強調したいKDDI。しかし発表会に集まった記者の目は“対J-フォン”に向いていた。

　現在ドコモに次いで業界2位の座を保っているau（KDDI）だが，J-フォンに急速に追い上げられているからだ。その差は約12万。このままいけば近々にも逆転すると見る関係者も多い。

2001年4月から2002年2月までの，au（KDDI）とJ-フォンの契約者数（TCAより）。写メールが話題になるにつれ，100万以上離れていた数字は，わずか12万まで迫ってきた

　予想以上にFOMAの普及は遅く，関係者の間でも「まだしばらくはFOMAを意識する必要はない」という声が聞かれる。CDMA2000 1xが最終的にはFOMAと戦うことになるとしても，今求められているのはJ-フォンの写メールと戦えるサービスと端末だ。

　J-フォンとの戦いで，忘れてはいけないのは写メールの存在だ。なぜ写メールがここまで普及したかといえば，「写メールは技術というよりも，マーケティング面で成功した」とKDDIの小野寺氏が分析する通りだろう。

　カメラを搭載した「A3012CA」も，記者からは「写メール」と呼ばれてしまい，「うちのは写メールではないのですが……」と答える一幕も。

　単に技術で見た場合，CDMA2000 1xがJ-フォンのPDCネットワークよりも優れているのは明らかだ。メールの通信速度だけを見ても，J-フォンが上り9.6Kbpsなのに対してCDMA2000 1xでは64Kbps。実に5倍以上だ。

　ムービー写メールでも15Kバイトのファイルしか添付できないJ-フォンと異なり，auのメールシステムは現在でも100Kバイトの添付が可能。A3012CAでは，J-フォンの「J-SH51」では不可能だったVGA画像のメール添付も行える。

　KDDIは「今後はカメラ付きの機種が増えていくだろう」（小野寺氏）とし，さらに夏頃にはカメラのムービー対応を進めるという。KDDIの場合，ムービー写メールと同じクオリティならば6倍の長さのムービーファイルを送信できることになる。

　強力なネットワークとメールシステムを持つKDDIは，端末のスペックさえ上げていけば，さまざまな機能が搭載できる。しかしPDCというネットワーク上の制約のあるJ-フォンでは現在以上の機能を求めるには第3世代を待たなくてはならないだろう。

　KDDIが優れたネットワークを持つに至ったのは，CDMA2000 1xからではない。cdmaOneの頃からPDCを機能においては凌駕していた。

　これだけ技術面で優位性を持ちながら，KDDIがJ-フォンに追いつかれたのは，まさにマーケティング面にある。J-フォンがこの半年でカメラ対応端末を急速に投入してきたのに対し，KDDIはカメラ内蔵を否定してきた。ZDNetの取材に対しても，「カメラは外付けで十分」という回答をしていた。

　しかし，KDDIが本気でカメラに取り組むならば，このままJ-フォンの逆転を許すことはないだろう。A3012CAでは，画像メールの送信時に「J-フォン向けに画像を変換」することもでき，ほぼ写メールの上位互換として利用できるからだ。

　既に写メールのユーザーは300万人を超えた。この市場に本格参入するKDDIとしては，画像メールに慣れたユーザーに対して逆に「写メールと相互に画像を送り合うことができ，さらにKDDI同士なら高画質」をアピールできる。

　“写メール”のようなコミュニケーション機能の場合，単純に機能が上でもユーザーは喜ばない。どれだけ多くの人とやりとりできるかがカギになる。

　ムービーメールへの対応時も，可能であればJ-フォンと上位互換性を保つのが成功へのポイントになるのではないだろうか。何しろ，ネットワーク面でKDDIは圧倒的に有利な位置にいるのだ。

　そのときには，「だんだん仲間になる。auに変えたくなる」（KDDI）という構想も，現実のものになるだろう。「今回はマーケティングを優先する」（小野寺氏）というKDDIの舵取りに期待したい。

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[斎藤健二，ITmedia]

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