折りたたみ式でキーボード付きの新CLIE「CLIE NRシリーズ」徹底レビュー：
（4）カメラ編

【国内記事】

2002年4月4日更新

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10万画素の能力は出ているが，あくまでも雰囲気を伝えられるレベルの画質

　内蔵カメラのスペックは，発表の時のニュースに書いた通り。このスペックは既に販売されているメモリースティック型カメラモジュール「PEGA-MSC1」とほぼ同じである。PEGA-MSC1は「色合い，詳細さともにかなり低いレベルであり，またフォーカスも甘いためメモ代わりに使うのも難しい」という評価だったが，PEG-NR70Vはどうだろうか。

　PEG-NR70Vの試作機を使って撮影したのが下の画像である。サイズは320×240ピクセル，画像形式はJPEGにしている。なお，誌面の都合上，ページ内には横幅を300ピクセルにリサイズ（解像度変更）したものを掲載している。画像をクリックする表示されるのが実データだ。

テーブルの上にあるミニカーに，30センチまで近づいての撮影。ピントが甘い。時刻表を撮影してメモ代わり，というような使い方も難しそう

部屋の隅にあるぬいぐるみを撮影。被写体との距離は1メートル程度。人の顔を撮影するときはこのくらいの距離になる

部屋の様子を撮影。雰囲気は表現できている

夜景。明暗の階調表現力が乏しく，ほとんど意味不明

　結果は全体的にぼんやりとしてピントが甘く，色調も単調で，階調表現が苦手なようだ。画質はPEGA-MSC1と同レベルであり，PEG-NR70Vのカメラも「あくまでも雰囲気を伝えるための道具」と考えた方がよさそうだ。

　ところで，10万画素というとカメラ付き携帯電話などのカメラで同等のスペックの製品が発売されている。携帯電話のカメラで撮影したデータよりも，320×240ピクセルのPEG-NR70Vの画像がきれいに見えないのは「サイズに比べて画素数が少ない」からである。

　ピントの甘い画像をシャープ感のあるものにする手として「小さくリサイズ（解像度変更）する」という方法がある。フォトレタッチソフトなどを使い，例えば縦横半分の160×120ピクセルにリサイズすれば，シャープ感が出て，見栄えもよくなる。ただ，CLIE単体でこのリサイズ処理はできず，PCで行わなければならない。

　では，最初から「160×120ピクセル」で撮るようにするどうなのだろうか。デジカメによってはイメージセンサの中央部分だけを使って小さく撮影するものもあり，これだとリサイズによる画質向上は見込めない。しかし，PEG-NR70Vのカメラはきちんと10万画素を使って160×120ピクセルで保存してくれるようで，フォトレタッチソフトを使ってリサイズしたのと同じような画質の画像を得ることができた。小さくてもきれいな画像が欲しい人は最初から小さいサイズで撮影するのも手である。

320×240ピクセルで撮影したデータを縦横半分の160×120ピクセルにリサイズしたもの。これなら携帯電話のカメラと画質に違いはない

最初から160×120ピクセルで撮影したもの。上とほぼ同じ品質。これはつまり10万画素を使って160×120ピクセルの画像を作っていることを意味する

値段分は楽しめる。しかしCLIEという優れたベースには物足りなさも

　撮影した画像はPictureGear PocketやPhotoStandで表示したり，CLIE Paintで編集したりできる。CLIE Mailで画像付きメールを送ったり，画像対応のアドレスに貼り付けたりもできる。こうしたアプリで利用する前にトリミングやレベル補正といった簡単なフォトレタッチ処理ができるとより嬉しいのだが，これは今後の対応や，サードパーティ製品に期待しよう。

　画像を取り込むだけで終わらせないあたりは，ソニーらしくもあり，PDAとカメラならではの連携プレーである。ただ，6万円もする電子機器であれば，もっと実用的かつ便利に使える仕様であってほしいとも思う。

　画質にしても現時点で35万画素クラスはほしかったところだ。また，ライブラリの仕様によると静止画しか扱えないようだが，DSPと連携してムービーを扱うことができれば，携帯電話やPHS，Bluetoothを使ったビデオチャットなどもできるのではなかろうか。

　カメラを付けるとプラス1万円で，その価値はある。しかし，値段以上の価値は，いまのところないようだ。

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[濱田宏貴，ITmedia]

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