Mobile:NEWS 2002年8月29日 02:17 AM 更新

「CLDC HotSpot」で携帯Javaが10倍速に──mobidec

Javaアプリケーションを高速に動かす適応型コンパイラ技術「CLDC HotSpot」の提供や、CLDC/MIDPの次バージョンなど、携帯Javaの次の標準仕様が見えてきた

 サン・マイクロシステムズのソフトウェアOEM本部シニア・システムエンジニアの門間純一氏が8月29日、東京・青山で開催されている「mobidec 2002」で講演。携帯向けJavaの今後の進化について語った。

 進化の方向は大きく2つ。APIの高機能化とパフォーマンスの向上だ。

適応型コンパイラで速度向上──CLDC HotSpot

 パフォーマンスの向上には、ARMのJazelleや(2001年12月の記事参照)、日立製作所の「SH-Mobile」など(6月25日の記事参照)ハードウェアを使う方法が1つ。そのほかにソフトウェア的な手法もある。

 サンが開発し、6月に出荷した「CLDC HotSpot」は、Java高速化のためのソフトウェアソリューションの1つだ。もともとは「Project Monty」と呼ばれていたもので、VMに組み込まれた小さく高速な適応型コンパイラを使ってJavaの実行を高速化するもの。

 CLDC準拠のJavaVMは、サイズが“キロバイト”であることからKVMと呼ばれるが、この「KVMを見直してMontyというVMに作り直した」(門間氏)。ここには、高速化処理のメインとなる適応型コンパイラが組み込まれており、アプリケーション実行時のボトルネック部分を動的にコンパイルし、ネイティブコードに変換する。

 そのほか、最適化されたインタプリタ、コンパクトなオブジェクト処理、高速ガベージコレクターを採用することで、CLDC1.0.3と比較して約10倍の高速化を果たしたという。

 すべてをネイティブコードに変換するよりも効率のよいコンパイルが特徴の1つ。「ループ箇所をネイティブコードにコンパイルすると、かなりパフォーマンスが変わってくる」(門間氏)。コンパイル後のコードは当然ハードウェア依存であり、「次世代端末の採用にARMが多かった」ことから、32ビットのARMプロセッサをサポートする。


CLDC HotSpotの入ったVMの構造(左)。適応型コンパイラの動作(右)は以下のようになる。バイトコードをインタプリタが1行ずつ並べ、プロファイラがボトルネックを検知。コンパイラがボトルネック部分のバイトコードをコンパイルする

 CLDC HotSpotは、アプリックスのJavaVM「microJBlend」もバージョン2から対応を予定している(8月27日の記事参照)。

大きな拡張が施されたMIDP2.0──もうじき登場

 APIの高機能化は、携帯型ネットワーク情報機器用の基本ライブラリCLDC(Connected, Limited Device Configuration、用語)と、インタフェースなどを定義したプロファイルであるMIDP(Mobile Information Device Profile、用語)のバージョンアップで行われる。それぞれ「もう少しで最終スペックが確定する」(門間氏)状況だ。

 CLDCはバージョン1.1となる。浮動小数点のサポート、三角関数のサポート、弱参照 (weak reference)機能が主な機能アップ。

 MIDP2.0はかなりの拡張が施される。J-フォンやauはMIDP1.0を採用しているが、機能面が貧弱なためさまざまな部分で独自に拡張を行っている。それらを標準規格にまとめるという意味合いもある。主な拡張は以下の通りだ。

HTTPSおよびセキュアネットワーキングのサポート
Socketsおよびdatagramsによるネットワーク接続
OTA(Over The Air)プロビジョニング
Pushアーキテクチャーのサポート
ユーザーインタフェースの機能拡張
ゲームのAPI
サウンドAPI
ドメインセキュリティモデル、アプリケーションへの署名および証明書の検証

 OTAプロビジョニングは、ダウンロード環境の標準化を図るもの。「これまでのMIDPでは、ダウンロードするためのタグの記述がキャリアによって異なっていた。“どこからでもダウンロードできる”という標準化が機能していなかった」(門間氏)。

 ユーザーインタフェースの拡張では、コンポーネントの配置の自由度が増す。これまで縦にしかコンポーネントを置けなかったが、「MIDP2.0では、HTMLのTableのように、コンポーネントを配置できる」(同氏)。

 ゲームAPIは「スプライトなどのゲームを描くために必要な機能を入れている」(同氏)

 ドメインセキュリティモデルは、セキュリティレベルに応じてアプリケーションが利用できる機能を制限できる仕組み。アプリケーションに署名や証明書がないと、電話帳へアクセスできないなどの仕組みが構築できる。



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関連リンク
▼ mobidec 2002

[斎藤健二, ITmedia]

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