「CLDC HotSpot」で携帯Javaが10倍速に──mobidecJavaアプリケーションを高速に動かす適応型コンパイラ技術「CLDC HotSpot」の提供や、CLDC/MIDPの次バージョンなど、携帯Javaの次の標準仕様が見えてきた
サン・マイクロシステムズのソフトウェアOEM本部シニア・システムエンジニアの門間純一氏が8月29日、東京・青山で開催されている「mobidec 2002」で講演。携帯向けJavaの今後の進化について語った。 進化の方向は大きく2つ。APIの高機能化とパフォーマンスの向上だ。
パフォーマンスの向上には、ARMのJazelleや(2001年12月の記事参照)、日立製作所の「SH-Mobile」など(6月25日の記事参照)ハードウェアを使う方法が1つ。そのほかにソフトウェア的な手法もある。 サンが開発し、6月に出荷した「CLDC HotSpot」は、Java高速化のためのソフトウェアソリューションの1つだ。もともとは「Project Monty」と呼ばれていたもので、VMに組み込まれた小さく高速な適応型コンパイラを使ってJavaの実行を高速化するもの。 CLDC準拠のJavaVMは、サイズが“キロバイト”であることからKVMと呼ばれるが、この「KVMを見直してMontyというVMに作り直した」(門間氏)。ここには、高速化処理のメインとなる適応型コンパイラが組み込まれており、アプリケーション実行時のボトルネック部分を動的にコンパイルし、ネイティブコードに変換する。 そのほか、最適化されたインタプリタ、コンパクトなオブジェクト処理、高速ガベージコレクターを採用することで、CLDC1.0.3と比較して約10倍の高速化を果たしたという。 すべてをネイティブコードに変換するよりも効率のよいコンパイルが特徴の1つ。「ループ箇所をネイティブコードにコンパイルすると、かなりパフォーマンスが変わってくる」(門間氏)。コンパイル後のコードは当然ハードウェア依存であり、「次世代端末の採用にARMが多かった」ことから、32ビットのARMプロセッサをサポートする。
CLDC HotSpotは、アプリックスのJavaVM「microJBlend」もバージョン2から対応を予定している(8月27日の記事参照)。
APIの高機能化は、携帯型ネットワーク情報機器用の基本ライブラリCLDC(Connected, Limited Device Configuration、用語)と、インタフェースなどを定義したプロファイルであるMIDP(Mobile Information Device Profile、用語)のバージョンアップで行われる。それぞれ「もう少しで最終スペックが確定する」(門間氏)状況だ。 CLDCはバージョン1.1となる。浮動小数点のサポート、三角関数のサポート、弱参照 (weak reference)機能が主な機能アップ。 MIDP2.0はかなりの拡張が施される。J-フォンやauはMIDP1.0を採用しているが、機能面が貧弱なためさまざまな部分で独自に拡張を行っている。それらを標準規格にまとめるという意味合いもある。主な拡張は以下の通りだ。
OTAプロビジョニングは、ダウンロード環境の標準化を図るもの。「これまでのMIDPでは、ダウンロードするためのタグの記述がキャリアによって異なっていた。“どこからでもダウンロードできる”という標準化が機能していなかった」(門間氏)。 ユーザーインタフェースの拡張では、コンポーネントの配置の自由度が増す。これまで縦にしかコンポーネントを置けなかったが、「MIDP2.0では、HTMLのTableのように、コンポーネントを配置できる」(同氏)。 ゲームAPIは「スプライトなどのゲームを描くために必要な機能を入れている」(同氏) ドメインセキュリティモデルは、セキュリティレベルに応じてアプリケーションが利用できる機能を制限できる仕組み。アプリケーションに署名や証明書がないと、電話帳へアクセスできないなどの仕組みが構築できる。
関連記事 ![]() 次世代のCLDCではセキュリティマネジャの搭載など、MIDPではHTTPS通信のサポートなどが検討されているようだ ![]() 後ろからMicrosoftが攻めてこようとしている。だがSun幹部によると「MIDP」の新版では、携帯電話機メーカーが独自の拡張機能を構築したがるケースは減少するはずだ ![]() アプリックスの携帯向けJavaVM「microJBlend」を搭載した端末が1000万台を突破した。Java搭載携帯電話の約半数に当たる。年末には携帯向けJBlendのメジャーバージョンアップを行うことも明らかにした ![]() 第3世代を待たずして、携帯に独立したCPUが搭載されるのは時間の問題になってきた。日立のアプリケーションプロセッサ「SH-Mobile」を搭載した携帯電話は既に登場済み。来年には数割の端末がSH-Mobileを搭載してくるだろうと、日立は自信を見せる。Javaの高速化、美しい3D、そして動画再生と携帯の機能は一段と進化を遂げる 関連リンク ![]() [斎藤健二, ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. ![]() モバイルショップ
FEED BACK |