Mobile:NEWS 2002年9月25日 01:34 AM 更新

成功したiアプリの“海外進出”はなるか?

国内では1500万もの普及を果たしたiアプリだが、海外展開にあたっては、“Write Once Run Anywhere”を掲げるJavaの1つとして、世界標準との互換性が問題になってくる

 現在1499万人がNTTドコモのJava──iアプリ対応端末を利用している。うち240万台は最新の「504iシリーズ」だ。国内では確実に成功を重ねているiアプリだが(8月29日の記事参照)、海外への進出はたやすい道のりではなさそうだ。

 パシフィコ横浜で行われているJavaOneのドコモの講演では、iアプリの現状と今後の展望が語られた。登壇したのは、コンテンツを束ねるiモードビジネス部コンテンツ担当部長の山口義輝氏と、端末企画を担当するIMT移動機企画担当の山田和宏氏、そして海外戦略を見るグローバル事業推進室の山下哲也担当課長だ。

 「合格、とは言えないまでも落第ではない、及第点の端末ができたと思う」と山田氏は504iシリーズを評する。携帯のJava仕様においては、限りないパフォーマンスとメモリを求める声もあるが「まずは安価にしないとプラットフォームになるだけの台数が出ていかない」(山田氏)と、機能と価格の兼ね合いが重要であることを強調する。

 端末の仕様決めに当たっては、まず第一にコンテンツ制作者の立場から考えたとも明かす。「一般サイトの掲示板もよく見させていただいている。JAR30Kバイト、スクラッチパッド100Kバイトの比率も、皆さんの意見を元にした」(山口氏)。

 確かにiアプリは成功の途上にあるといえるだろう。504iで行った28.8K化もうまくいった。山下氏も「サクサク感が裏目に出て、第3世代携帯よりも速くなってしまった。おかげで第3世代が売れない……」と冗談交じりに語ったほどだ。

iアプリは、“世界のiアプリ”になれるか?

 しかし今後iアプリを世界に展開して行くと、“いつかたどった道”を再び繰り返すことにもなりかねない。世界標準であるMIDPが、採用端末を増やしているからだ。

 ドコモのJavaは「DoJa」と呼ばれ、モバイル向けの標準仕様であるMIDPが策定される前にサービスを開始している。MIDPはもうじきバージョン2.0に進化するが(8月29日の記事参照)、当然DoJaとの互換性はない。

 iアプリが世界展開を進めれば、世界標準であるこのMIDPとの争いになるのは避けられない。ちょうど、iモードがWAPと争ったのと状況が似ている(2001年2月の記事参照)。

 ドコモの考えは、WAPと同様MIDPでは“ビジネスになるプラットフォーム”は簡単には立ち上がらない、というものだ。「(MIDPでは)端末メーカーさん同士の競争があって、(メーカー同士が)差別化を図ろうとしている」と山下氏。確かに、海外向けの携帯Java開発者も「メーカーごとに仕様が異なっていて困る」と漏らす。

 キャリアが提供するJavaアプリケーションがすべての端末で動いてこそビジネスが成り立つのに、端末メーカーごとに仕様が異なってはうまくいかないというわけだ。

 そのため、iアプリの海外進出はDoJaを輸出する方向で進められる。「(iアプリでは)デベロッパーにビジネスのチャンスができて、ユーザーに使ってもらえる世界ができた。iモードJavaの経験を元に、Run Anywhereでさらに大きなプラットフォームとしてビジネスができるようにする」(山田氏)。具体的には来年、アジアにiアプリ端末を投入する予定だ。

 将来的にはMIDPに移行する考えもあるようだが、現時点では先は見えない。移行する際には、一時的にコンテンツの互換性が取れなくなることもあり得る。

 世界標準を待つことなく、独自規格で先行してデファクトスタンダードを獲得する──それがドコモの戦略だった。iモードではWAPを後目に躍進したが、いざ海外に出てみると「思ったほど調子がよくない」(海外にコンテンツを展開するコンテンツプロバイダ)。

 もっとも、MIDPでも互換性が取れているとは言い難い部分もある。当初「MIDPを採用することで、アプリケーションの互換性が保たれる」といわれたが、KDDIとJ-フォンのJavaには互換性はない(2001年4月の記事参照)。

 さらに他キャリアとの差別化の意味も含め、さらなる高機能化が求められるのが携帯Javaだ。逆にいえばこれは、ますます独自色を強めているということを意味する。MIDPを採用しているJ-フォンでも、世界展開にあたっては独自拡張の部分をどうするのかは問題とされている部分だ。

 MIDPが世界標準として普及するのか。はたまたiアプリがiモードのように世界で旋風を巻き起こすのか。携帯Javaの動向からは、まだまだ目が離せない。



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[斎藤健二, ITmedia]

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