Mobile:NEWS 2002年10月3日 07:29 PM 更新

W-CDMA陣営の失速に懸念〜KDDI小野寺社長

CEATECの基調講演でKDDIの小野寺社長は、W-CDMAの失速を「CDMA2000 1x陣営にとっても問題」と懸念した。自社の3G展開については余裕しゃくしゃくの様子だった

 ロードマップ通り、順調に3Gへの展開を進めるKDDI。CEATEC3日目の基調講演に立った小野寺正社長の話題はブロードバンドの将来像や“パーソナルゲートウェイ”としての携帯電話まで豊富だったが、やはり第3世代携帯電話(3G)の進展と今後の展望が話の中心となった。

 もっとも自社の展開には余裕たっぷりの様子で、講演で時間を割いたのは、KDDIの3G成功の理由よりも、むしろ“W-CDMAがどうしてうまくいかないのか”の方。「これはCDMA2000 1x陣営にとっても問題。3G普及のためには、W-CDMAの成功によって世界的にコンテンツの開発が進まなければならない」とその失速ぶりを懸念して見せた。

KDDIから見た、W-CDMA失速の原因

 同社長によれば、W-CDMAがうまくいかないのには「3G免許の高騰」「莫大な設備投資」などもあるが、根本的なところで2つの理由がある。


 1つは、方式自体が古いというものだ。小野寺氏は、「W-CDMA方式は10年前のアナログの時代に考えられたもの。IPベースが中心の現状にそぐわない」と持論を展開(3月29日の記事参照)。「W-CDMA陣営も、(HSDPA:High Speed Downlink Packet Accessという)パケットに特化したものを研究している」と、無線通信においてもパケットが主流になりつつあることを強調した。

 KDDIが2003年に導入予定のCDMA2000 1x EV-DOでは、基地局から直接IP網に接続し、高速かつ低コストを実現できるのが特徴(7月19日の記事参照)。将来的には「両陣営共にパケット」(小野寺氏)に進むと見られる。

 もう1つは、「市場の成熟」である。特に、2Gから3Gへの移行においては、市場の成熟を念頭に入れないとうまくいかないというのが小野寺氏の考えだ。

 「(3Gへの移行においては)バックワードコンパチビリティ(下位互換性)は必須。アナログ(1G)からデジタル(2G)に変わった時とは、状況が全く異なる」(小野寺氏)。ドコモ関係者はたびたび「3Gへの切り替えも、アナログからデジタルのときと同じだ」と言うが、当時のように利用者もまだ少なく、エリア展開も不完全だった時代とは状況が違うというわけだ。

 下位互換性では、ドコモと、もう一方のW-CDMA推進派であるGSM陣営で状況が異なる。GSM陣営はW-CDMAの導入に当たって「コアネットワークを(GSMとW-CDMAで)共用できる方向で進めた」(小野寺氏)。

 それとは対照的に、「(日本のW-CDMAは)残念ながらPDCとは、コアネットワークも無線区間も別のものになった。全くの別物だ」と、FOMAにはインフラの連続性がないことを指摘する。

 また、W-CDMAのメリットといわれる国際ローミングに関しても、「GSM陣営では国際ローミングをW-CDMAの目的にしていない。3Gで(わざわざ)国際ローミングを言うのは日本だけ」と手厳しい。

 GSM陣営では、そもそも日本と韓国を除く世界各国がGSM方式を採用。国際ローミングは当たり前の話だ。下位互換性を重視し、W-CDMAにおいてもGSMとのデュアル端末を基本としている。また「英国では総計2兆円」(小野寺氏)といわれるように、3G免許の取得に多額の費用がかかることから、W-CDMAサービスをあきらめたり、スタートを延期する通信キャリアが続出している。

 いわばドコモが成功するかどうかを、世界中が見守っている状態が続いている。「ドコモの責任は大きい」と小野寺氏は言う。

テレビ電話よりも「ムービーメール」

 小野寺氏は3Gでのテレビ電話についても言及。同氏によれば、「ムービーメール」という名称で動画をメールで送信できるサービスを始めたKDDIが(8月26日の記事参照)、「なぜリアルタイムのテレビ電話をやらないのか?」という質問を最近よく受けているという。

 同氏の答えは「テレビ電話は、かけるほうはいいが、受けるほうは、どういう状況で受けるか分からない。むしろメールで(動画を)受け取って、好きなときに見えるほうがいい」というもの。テレビ電話に対するニーズは今すぐ対応しなければならないほど、まだ高くはないと見ている。



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[斎藤健二, ITmedia]

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