Mobile:NEWS 2003年5月15日 00:10 AM 更新

BREWの生い立ちと目指すもの

BREWとはいったい何か。マルチプラットフォームを前提としたJavaとは異なり、Qualcommのチップ上でOS的な役割を果たすべくBREWは生まれた

 「JavaとBREWは比較すべきものではない」と常々話すクアルコムだが、それはBREWの生い立ちにも関係がある。

 BREW発表から遡ること3年前、当時、QualcommはCDMA端末の製造を行っていた。「端末を作っていた時、次から次へと端末を供給しなくてはならない。しかしキャリアごとに仕様が違う。(ソフトウェア開発を何とか効率化したいという)社内の切迫したニーズからBREWを作るに至った。その点が、Javaなど汎用のコンピュータのプラットフォームとの違いを表している」とクアルコムジャパンの山田純専務は話す。


デジタルハリウッドとクアルコムが開催する「BREW JAPAN SEMINAR 2003」を記念したトークセッションには、KDDIやクアルコムのほか、コンテンツを手がけるバンダイネットワークス、ナビタイムも出席。BREWへの期待を話した(左から、KDDIコンテンツ本部長の高橋誠氏、クアルコムジャパン専務の山田純氏、バンダイネットワークスの高橋豊志常務、ナビタイムジャパンの大西啓介社長)

 そもそもはPCにおけるOSのような存在を目指して開発されたのがBREWだ。「BREWは携帯のOSに近いレイヤーにあって、Javaよりも生の部分に触れられる、パソコンでいうOSに近いのではないか。本質的にはJavaの下にある土台のようなものだ」(山田氏)。

 これができるのは「世界のCDMA端末を構成しているチップセットの8割近くはクアルコムが提供しているもの」(山田氏)だからだ。クアルコムのMSMチップ専用のOS、それがBREWだとも言える。

 「CDMA端末では、端末の内部構造が極めて均質化、等質化している。それがCDMAの特徴。うまくやれば、扱いやすい等質的なプラットフォームを作りやすい市場だ」と山田氏。

 当初からマルチプラットフォームでの動作をうたってきたJavaとは、生い立ちから大きく異なるわけだ。


「我々にとっては安い端末にも入ることが大きい」〜KDDI

 こうしたBREWプラットフォームを、CDMA事業者であるKDDIが採用するのは自然な流れだ。しかし、実際は端末開発に絡む微妙な事情もあった。

 一般に、アプリケーション機能はハイエンド端末に搭載される。CPUやメモリにハイエンドな部品が求められるため、コストがかさむからだ。ところが、BREWの場合、「若干非力なMSMチップの中でも、アプリチップと同等のパフォーマンス」(KDDIコンテンツ本部長の高橋誠氏)を得られる。

 これが、ユーザーに受けそうな機能はハイエンド端末に限らず、全端末に搭載していくというKDDIの戦略にマッチした。「去年から今年にかけてのKDDIの戦略は、ユーザーに響きそうな機能は全部の端末でやるというもの。ムービーと同じように、すべての端末にアプリケーションを載せてしまう。最初はJavaでやったのだが、少々厳しかった。(今後は)MSMチップだけで動くBREWをやっていく」(高橋氏)。

BREWがWAPに代わる存在に?

 高橋氏がBREWに期待するポイントは、“パーソナルゲートウェイ”としての役割だ。これまで携帯電話からネットにアクセスするには、Webブラウザを使いキャリアのゲートウェイを経由する必要があった。

 ところがBREWではキャリアのゲートウェイを経由せず、外部にアクセスできる。高橋氏はBREWを使うことで、キャリアから完全に独立したポータルが作成できるのではないかと見る。BREWがWAPに代わる存在になるというわけだ。

 「これからはショッピングサイト用のアプリケーションを1個作ってあげればいい。これは明らかにゲートウェイの開放。アプリケーションを使った開放ということだ」。


 このためには、特にBREWの起動の速さが生きる。“起動の早さ”で比べたら、BREWはJavaを圧倒的に凌ぐからだ。「たぶん、Javaの4分の1から5分の1の時間でBREWアプリケーションが立ち上がる」とバンダイネットワークスの高橋豊志常務は話す。

 さらにBREWのほうがWebへのアクセス自体も高速だ。BREWに含まれるiHTMLビューワというモジュールを利用することで、BREWでもWebサイトが表示できる。ナビタイムの大西啓介社長はこれを評価する。「WAPのゲートウェイを通らないので、高速だ」。

 BREWが動く端末は、世界中で50機種、800万台に達しているという。しかし、日本ではまだ2機種目が発表されたばかりだ。それでも、BREWに関わったコンテンツプロバイダの評価は高い。

 「これからはBREWが圧倒的に有利だと思う。容量が増えてくると、速度が絶対に要求される。Javaのようなインタプリタは限界が来る」とバンダイネットワークスの高橋氏。さらに、「我々が欲しいと思うレベルのJavaプログラマはあまりいない。C言語を使えることでプログラマの数が増える。もうJavaには戻れない」とも。

 KDDIは当初の方針通り、BREW端末の数を増やすと話しており、年末にかけてBREWがアプリケーションプラットフォームの中心になってくるのは間違いないところだ。



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[斎藤健二, ITmedia]

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