BREWで何が変わる? 「A5304T」に見るBREWauの最新ムービー携帯「A5304T」は、ダウンロード型アプリケーションプラットホームとして“BREW”を採用した。BREWアプリケーションのいくつかを触ってみると「携帯独自の機能強化にも使えるのではないか」とすら思えてくる
BREWは、ユーザーから見ればauのezplus(Java)、ドコモのiアプリ同様、機種依存なく同じプログラムを実行できるアプリケーションプラットホームに位置づけられる。 auでは既に2001年にBREW端末であるGPSケータイ「C3003P」を投入している。GPSを利用したナビゲーション機能のヘディングアップ表示、地図の高速なスクロールや拡大縮小はBREWによって実現されたものだ(2002年3月の記事参照)。ただしBREW上で動作するアプリケーションはこの内蔵アプリケーションだけに留まり、一般ユーザーがBREWの存在を意識することはなかった。 A5304Tでは、既に相当数のアプリケーションが存在するezplusを廃してBREWを採用(1月29日の記事参照)。BREWをダウンロード型コンテンツのプラットホームとして推し進めていくとみられる。
ケータイにおけるJavaとBREWとの違いは、BREWのほうが、よりシステムに近い位置にあるという点。アプリケーションはJavaのようにVM(仮想マシン)上で動作するのではなく、ネイティブコードとして実行される。VMを必要としない分起動も高速で、実行速度という面でも明らかに有利だ。 もちろんネィティブコードで実行が可能なのはauの採用しているcdmaOne方式の特殊性もある。CDMA2000 1xのすべての端末がQualcomm製のベースバンドチップを採用しており、これがアプリケーションの実行も兼ねることが多い。つまりアプリケーションを実行するプロセッサは共通なのだ。残る機種ごとの差異をBREWが吸収すれば、アプリケーションはネィティブコードで済むわけだ。 BREWでは、アドレス帳やメールといった端末内のさまざまなデータにアクセスが可能で、ローカルデータを有効に活用できる。セキュリティモデルの違いともいえるが、BREWではキャリアに登録したアプリケーションのみ実行を許可することでセキュリティを保つ。 iアプリのように個人がアプリケーションを提供することが難しくなるが(1月31日の記事参照)、BREW上でJavaなど別のアプリケーションプラットフォームを動作させ、この上で自由なアプリケーションの動作を許すといった解決策もある。実行速度の高速性を生かして既にBREW上で動作するJavaVMも開発済だ(2001年2月の記事参照)。
au端末の中で、BREWに対応し、ダウンロードしたアプリケーションを実行できるのはまだA5304Tのみ(1月29日の記事参照)。従ってダウンロード可能なアプリケーションはまだ極めて少ない。またJavaとBREWの両方が実行できる端末が存在しないため、速度面での厳密な比較は難しい。
今回は、内蔵BREWアプリケーションの1つである「ハートメール」にフォーカスを当ててみた。メディアソケットが提供するハートメールは、アニメーション付のメールなどを送信できるアプリケーションで、iモード向けにはiアプリとしても提供されている。 A5304Tとiモード端末のハートメールはまったく同じ機能ではないが、サービス内容は似通っている。携帯電話のJavaとBREWの比較にはもってこいの存在だ。ここではA5304Tの内蔵アプリを「BREW版」、筆者の「P504i」でダウンロードして利用するiアプリを「Java版」と称させてもらい、比較してみた。
BREW版とJava版の相違点は使い勝手に大きく現れている。どちらもメール作成時には送信先アドレスの入力にアドレス帳を利用できる。しかしJava版がハートメール専用のアドレス帳なのに対し、BREW版はケータイのアドレス帳をそのまま利用できる。標準のEメール(@mail)を作成する場合と同等の使い勝手だ。
さらにBREW版では標準のEメールでの送信履歴も利用できる。要するに送信先アドレスの入力は標準のEメール作成時と同じなのだ。ハートメールで送信したメールのは送信履歴に反映されないなど、ちぐはぐな感もあるが、便利に使える。
頻繁に行うことではないが、Java版ではケータイのメールアドレスはユーザーが入力する(iアプリではなくiモードで)必要がある。これに対してBREW版ではアプリケーションが自動取得するため、この必要はない。
ハートメールにおけるBREW版とJava版の違いは、ケータイ内部のアドレス帳を参照できるか、メールアドレスを自動取得できるかの違いでしかないといえばそれまで。しかし実際の利用時にはこの差は大きい。 今時、携帯電話だろうがPCだろうが、メール作成時にメールアドレスを手入力することはほとんどない。この手間だけでも、普段のEメールの代わりにハートメールを使おうという気持ちになれない人が多いのではないだろうか。
BREW版が優れているというより、このアプリケーションはBREW版でようやくが当たり前の使い勝手になったともいえる。ゲームなどはともかく、コミニュケーション系のアプリケーションでは、端末内部のデータにもアクセスできるBREWのメリットは非常に大きいはずだ。 今回筆者がA5304Tのハートメールに触れて思ったのは、「これなら端末標準のアプリケーションを置き換えるのも可能では」ということだ。例えばauの最新端末はすべてPIM機能も備えているが、PCとは専用ソフトを用いた簡易同期であり、PDAのそれには及ばない。BREWならPDAのようにPCと完全に同期できるPIMを提供することも可能だろう。 またメールソフトなどでも、もっと強力な振り分け機能を提供することも可能になるだろう。 ここに挙げた2例は筆者が携帯電話に熱望している機能でもあり、auの実装されたBREWで実現可能な機能かどうかは明白ではない。しかしA5304Tの登場がそういう期待を抱かせてくれたのは事実だろう。 関連記事 ![]() auの「A5304T」が対応したBREW。しかしBREWとは何なのだろうか。Javaとはどこが違うのだろうか。一般ユーザーの視点と、携帯アプリケーションのビジネスプレイヤーの視点からまとめてみた ![]() KDDIがBREW端末「A5304T」を発表した。BREWによって、アプリケーションの世界流通、企業向けアプリケーションの開拓、コンシューマ向けの快適なアプリケーション環境を狙う。Javaとは異なり、今後ローエンド機にもBREWを搭載していく予定 ![]() KDDIは、アプリケーションプラットフォーム「BREW」に対応した「A5304T」(東芝製)を2月下旬に発売する。携帯電話最大クラスの2.3型TFT液晶を搭載するほか、31万画素のCCDカメラ、撮影補助用のライトも備えたムービー端末だ ![]() KDDIのBREW対応端末「A5304T」によって、大きく利便性が増すのはGPS機能だ。内蔵されたNAVITIMEのアプリケーションによって、地図を高速に描画。2.3型の大画面とも相まって、快適な“徒歩ナビゲーション”を実現する ![]() 速度アップともう1つ、プッシュ配信が可能なのが、BREWの大きなメリットだ。BREWならではの機能を使って、野球とサッカーの情報をリアルタイムに配信するのが、エキサイトが提供する「実況エキサイト・スポーツ!」である [坪山博貴, ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. ![]() モバイルショップ
FEED BACK |