Mobile:NEWS 2003年6月27日 10:55 PM 更新

FOMAでどうなる? モバイルマルチメディア「Vライブ」

ドコモのFOMAには、TV電話以外に3つの動画系サービスがある。iモードから閲覧するiモーション、64Kデジタル通信を使った「M-stage visual」、TV電話システムを使った「Vライブ」だ。比較的低コストでリアルタイム動画配信が可能な「Vライブ」の今後の展開をドコモに聞いた。

 FOMAの契約者数の伸びが見え始めた。加えて、夏モデル以降のFOMA端末では「TV電話機能」が標準搭載となる。今回は、その可能性を広げるサービスの1つ「M-stage Vライブ」(用語)の現状、今後の展開などを探るため、NTTドコモのクロスメディアビジネス部映像配信担当課長である神谷真治氏に話を聞いた。

 FOMAに向けて映像ストリーミング配信を行う「M-stage Vライブ」(以下、「Vライブ」)。2002年4月から試行サービスが行われ、2003年5月より正式に商用サービスがスタートした(4月24日の記事参照)。

 NTTドコモが別途提供している動画配信サービス「iモーション」「M-stage visual」(PHSおよびSH2102V)と異なる最大の特徴は、テレビ電話用規格である3G-324M(用語)に対応し、ライブ映像配信を実現したこと。比較的低コストで簡易なシステムによって、個人単位でミニ放送局となり、リアルタイムな映像や情報を発信できる。

 また、サーバに映像コンテンツを貯めておき、オンデマンドに配信することも可能。長時間の映像を配信できるのも、他の動画配信サービスと棲み分けされる点だ。「iモーション」のようにベストエフォートサービスであるパケット通信を使う場合、環境によって速度が上下する場合があり、映像配信の際に不安定さが現れる。

 それに対し、「Vライブ」は回線交換を介し、確実で安定した速度(現状、下り回線64K)を出しながら、品質の良い映像と音声の配信が可能となった。インターネットストリーミング転送プロトコルはRTP。「iモーション」「M-stage visual」同様、映像圧縮方式にMPEG-4(6月23日の記事参照)、音声圧縮方式にはAMR(用語)が使われている。

 端末側に要求されるのは、FOMA端末でもビジュアルタイプかどうかということ。すなわち、TV電話対応のFOMA端末でなければ、「Vライブ」を試聴することができない。しかし、「夏モデル以降はFOMA端末もすべてTV電話対応になり、FOMAであれば誰でもVライブを見ることができる。今後は市場の裾野が広がり、さまざまな利用シーンでの活用が見込まれる」という。

自由度の高い映像コンテンツ配信環境

 FOMA用のVライブサービスは「Freeチャンネル」「Member'sチャンネル」「Openチャンネル」と3種類ある。

 「Member'sチャンネル」は限定されたメンバーに対し、セキュリティの高い環境の中で映像を配信できるサービスで、FOMAのみならずPDA端末への配信も可能。また、必要であればドコモがコンテンツ課金の収納代行を行う。利用用途としては、プレミアム性の高い限定的な映像配信が想定される。

 「Freeチャンネル」では、メンバーを限定せず自由に映像を配信。視聴する側もインフォゲート契約(ドコモのモバイルマルチメディアサービス契約。月額使用料:100円)が必要なく、気軽に視聴できる。ただし、PDA端末に向けた配信やドコモが収納代行するサービスはない。「Openチャンネル」はPDA端末のみに向けた配信サービスで、FOMAは対象外となる。

サービス概要FreeチャンネルMember'sチャンネルOpenチャンネル
FOMAテレビ電話機能の視聴×
PDAとドコモPHSの組合せによる視聴×
ライブ映像配信
録画映像配信
複数映像を時間枠で切替えながら配信
ドコモによる収納代行×
インフォゲート契約不要

 現状、FOMA用のVライブサービスにおいて、映像コンテンツを集約するようなポータルサイトは用意されていないため、コンテンツプロバイダは、自ら配信のPRや告知を行う必要がある。ドコモが収納代行するにあたっては、コンテンツ、サービス企画内容の審査が伴うが、従来の「iモード公式サイト」へ登録するための審査とは性質が異なり、公共の良俗に反するコンテンツではないかどうかをチェックするのみ。自由度の高い映像コンテンツ配信環境を提供し、市場における新しいサービスの掘り起こしと活性化を図る狙いもあるようだ。  

試行サービスでの反響

 「2002年4月から行われていた試行サービスにおいては、さまざまなジャンルのコンテンツを試行錯誤的にあたりをつけて映像配信した。その中で割とヒットしたジャンルとしては、競艇、競輪系。ライブで見たいというニーズに確実に応えられること、そしてチケットの販売促進という面でも効果を発揮した。ライブ映像配信という利用シーンが本当に存在することを、改めて確認することができた」。

 また、電話番号をダイヤルしてTV電話発信するという映像視聴時の操作の分かりやすさが好評だったという。

 一方、試行サービスの中で寄せられたコンテンツプロバイダからの改善要望としては、視聴前にインフォゲート契約という手続きを踏まなければならない点、そしてVライブ配信システムの運用コストの割高感があげられた。

 この要望を踏まえて、本年5月にスタートした商用サービスにおいては、「Freeチャンネル」での視聴であればインフォゲート契約を不要とし、専用線と比べて比較的安価に常時接続を可能とする、IP-VPN回線ネットワークを利用して配信できる選択肢も用意するなどの改善が行われた。さらに、今後も映像配信コストの低価格化に向けた検討を行っている。

ターゲットは「B to B」あるいは「B to B to C」

 「Vライブ」についてドコモは、「B to B」あるいは「B to B to C」といったビジネスモデルでの展開を進めている。「B to B」の利用例としては、広報PR活動、販売促進効果を高めるための活用、経営層から社員に対して経営事項の社内向けアナウンスの実施、株主総会の中継、ビジネスショーなどのイベント中継、そして実証実験においては道路河川の監視などがある。

 「B to B to C」においては、さまざまなジャンルのコンテンツを集約して持つアグリゲーターを支援し、エンターテイメント性のあるコンテンツ配信の環境を整備していくという。

 「瞬時に、そして直感的にリッチな情報を伝えることができる『Vライブ』の特性といったところで、まだまだ可能性を多く秘めていると思う。さまざまな産業間でのコラボレーション的な使い方、あるいは、映像を見ながらiモードなどで機器を制御するなどの応用も将来的には十分に考えられるでしょう。いろいろな利用シーンを開拓しながら普及に努めたい」とVライブの今後の可能性を話した。



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関連リンク
▼ M-stage Vライブ
▼ NTTドコモ

[中村実里, ITmedia]

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