新規、即解約。携帯をデジカメ代わりに使う若者たちメガピクセルカメラ付き携帯電話を、新規で購入してすぐに解約してしまうユーザーが出てきた。デジカメ代わりに使おうという意図だ。まだ数は少ないが、インセンティブシステムの矛盾を突く行動だ。
「メガピクセル携帯を買って、すぐに解約しました。デジカメとして使おうと思って……」。携帯の“通信以外”の機能がアップするなかで、若者がこうした行動を取り始めた。 「若い子は“自分撮り”をする。自分や周りの人を合わせて撮るには、普通のデジカメよりも携帯のカメラのほうが便利」だと、ある携帯雑誌編集者は分析する。携帯に慣れた彼らにとっては、普通のカメラよりも縦位置で撮影する携帯のカメラのほうが一般的で分かりやすいのだと言う。 これだけなら、カメラのとらえ方が変わってきたに過ぎない。ところが、「機種変更をするよりも、新規で買ってすぐに解約したほうが安い」(同編集者)ことが、問題を引き起こす。 通話やメール、Webアクセスなどと違い、カメラ撮影機能は解約しても引き続き利用できる。特に、505iシリーズに代表される外部メモリカード搭載端末では、電話番号が入っていなくてもデジタルカメラ同様に使えることから、クチコミでこうしたやり方が広がったと見られる。
これが問題となるのは、新規端末にインセンティブ(販売補助金)を付けて販売するというシステムの根幹に関わるものだからだ。 よく知られているように、携帯電話の店頭価格は端末の製造コストよりも安い場合が多い。具体的に言えば、5万円で作った端末が2万円で売られている。この差額の3万円を埋めるのが、キャリアが販売店に支払うインセンティブだ(2月6日の記事参照)。キャリアは一時的にコストを負担するが、契約者が長期間携帯を利用してくれれば基本料金や通話料で回収できる。この仕組みが、日本の携帯の爆発的普及と高機能化を支えてきた。 しかし、新規で購入したユーザーがすぐに解約するとなると、インセンティブモデルは崩れる。キャリアはメガピクセルカメラを赤字で販売しているのと同じことになってしまうからだ。
これは、今でこそ限られたユーザー間での問題に過ぎないが、カメラ機能が向上したり価格が低下したタイミングでは、大きな問題になりそうだ。 ドコモの504iSシリーズの価格動向を見ていくと、発売当初3万円前後だった価格が、約半年で1万円程度に下落した。505iシリーズも、505iSシリーズが登場する年末や、新型FOMAが出てくる来年頭にかけては1万円程度まで価格が下がってくることが予想される。 弊誌記事でメガピクセル端末と比較したカシオの100万画素デジカメ「EXLIM EX-S1」の価格は1万円後半。いずれ“デジカメを買うよりメガピクセル携帯を買って、解約したほうが安い”となるのは間違いない。 さらに200万画素化、光学ズーム搭載などによって、問題は深刻になっていく可能性もある。
もちろん、“新規即解約”により最も被害を受けるのは通信キャリアだ。対策としては、例えば電話番号が入っていないとカメラ撮影ができないようにするなども技術的には可能だ。 ※「最も被害を受けるのは通信キャリア」という点について、「新規即解約について最も被害を受けるのは代理店だ」というご指摘をいただいた。多くの場合、新規即解約を行うと、インセンティブの支払いが行われない。契約後、数カ月間の解約を禁じる、いわゆる“縛り”をキャリアが建前上禁じているにもかかわらず、行っている販売店があるのは、このせいだ。(8月12日付記) しかし今のところ大きな動きにはなっていないためか、「動向を見て数が増えるようなことがあれば対策も」(ドコモ広報部)と言うに留めている。 端末メーカーの中でも心配する声がある。「カメラのクオリティにはかなり力を入れた。(電話としてではなく)カメラとして使ってしまうユーザーもいるかもしれない。ウチはいいのだが、キャリアさんはどうするのだろうか」(メガピクセル携帯を開発したあるメーカー) これまで携帯電話は、“通信をより使わせる”ために進化してきた。ところが通信容量よりオーバースペックのカメラが搭載され始めたことで、通信キャリアだけでなく周辺の業界(例えばデジカメ業界)にも思わぬダメージを与える可能性が出てきた。 最初から解約するつもりで、新規購入するユーザーが出てきたのは、携帯高機能化が行き着くところまで行ったことを象徴しているのかもしれない。
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