Mobile:NEWS 2003年11月4日 09:55 PM 更新

Nokiaカンファレンスに見る欧州携帯市場動向

欧州でも携帯のマルチメディア化が進み始めている。カメラやブラウザを搭載した新端末が続々リリースされ、ユーザーの購買意欲も高まりつつある。通信インフラは3GよりEDGEに注目が集まっているようだ。

 Nokiaは10月末に、仏ニースで年次カンファレンス「Nokia Mobile Internet Conference 2003」(NMIC)を開催、新しい携帯端末5モデル(10月29日の記事参照)やネットワーク事業の新戦略を発表した。

 欧州モバイル市場はここ数年、不況が原因でオペレーター各社の3Gの提供が遅れるなど明るい話題が少なかった。だが、この第3四半期にNokiaやSonyEricssonが好決算を発表したことなどから、徐々に楽観論が強まっている。そんなタイミングで開催された世界最大手端末メーカーのカンファレンスは、業界が再び活気を取り戻しつつあることを印象付けるものとなった。


仏ニースで開催されたNokia Mobile Internet Conference 2003

満を持して登場した新マルチメディア端末

 新端末の目玉となったのは、同社が“Media Device”という新しいカテゴリを与えた「Nokia 7700」(10月29日の記事参照)だ。同社初のテレビ機能付き携帯電話で、外観は640×320ピクセルの大きめな画面を搭載したタブレット風だ。FMラジオ、カメラなどの機能も備えており、NokiaのSymbian OSベースの最新プラットフォーム「Series 90」が搭載される初の端末となる。7700の価格は500ユーロで、2004年第2四半期に発売の予定だ。


Symbian OSベースのテレビ付き携帯電話Nokia 7700

 フルキーボードを備えた人気機種「Nokia 6800」の後継となる「Nokia 6810」「Nokia 6820」も発表された。6800ラインは、テキスト入力や電子メール機能が特徴のビジネスユーザー向けの端末だが、新製品では待望のBluetoothを搭載し、6820はカメラも装備している。6810、6820の価格はそれぞれ250ユーロと320ユーロで、発売は2004年第2四半期、同第1四半期の予定。


開くとフルキーボードが現れる6820

 新風を吹き込んだのは、カメラを内蔵した折りたたみ式端末の「Nokia 7200」。Nokiaにしては珍しく、ファッション性を意識した仕上がりだ。Nokiaといえば、使いやすさや“正統派”といったイメージが強いが、7200では、独Siemensらが昨年来追求しているデザイン性、ファッション性強化の動きに追随したといえる(3月26日の記事参照)。価格は450ユーロで、発売は2004年第1四半期の予定。

 続々と発表された新製品のテーマは、やはりマルチメディアだろう。他社同様、Nokiaも音声からマルチメディアにフォーカスを強めているが、戦略が具体性を帯び始めた。最近の動きとしては、10月初旬に出荷開始した初のゲーム機能付き携帯電話「N-Gage」(10月7日の記事参照)をはじめ、WebブラウザではノルウェーのOperaと提携し、人気の「Nokia 6600」シリーズなどでデフォルトでOperaブラウザを搭載する(10月28日の記事参照)。また、米Hewlett-Packardと連携して、Bluetooth経由で携帯端末から直接プリントアウトを可能にするソフトウェアも開発した。

 Nokiaの勢いは、需要サイドからも支えられている。これまで、このような携帯端末の多様化・多機能化に対して需要が喚起できていないことが指摘されてきた。特に欧州ユーザーは、日本のユーザーほど先進性を求めないといわれている。だが、ここにきて需要と供給の差は縮まってきたようだ。

 例えば日本の“写メール”のようなサービス。欧州でも大成功を収めたテキストメッセージング(SMS)の後釜として期待を集めており、“MMS(マルチメディア・メッセージング・サービス)”として各オペレータが提供を開始している。市場も今年中盤より本格的に立ち上がりつつある。

 同時に、ユーザーのカラー画面やカメラ内蔵型端末への関心は、興味レベルから実際の購入へと移行しており、これらが年末のクリスマス商戦のキーワードとなることは間違いない。Nokiaでも、来年は1億台のカラー画面端末を販売できると見ている。ちなみに、ゲーム端末のN-Gageは、発売後最初の2週間で40万台を販売している。

3Gよりも現実的? EDGEとPTTの拡大を見込む

 無線技術面からみると、フォーカスは3GではなくEDGEにあたっている。欧州市場における3Gは現在、英Hutchison 3Gが英、伊などで3Gサービスを展開しているものの、ヒットにはなっていない。Nokiaは3G端末として「Nokia 7600」(10月15日の記事参照)などを発表しているが、オペレータの展開に歩調を合わせ、ここ1−2年はEDGEを主軸にするようだ。

 例えば、7700はGSM/GPRS/EDGEのトライバンドをサポートしている。Nokiaによると、現在EDGE(用語参照)をサポートする機種は8モデルだが、将来的には全GPRS/W-CDMA端末でEDGEをサポートする計画だという。同社は、2005年までに1億台のEDGE端末の出荷を見込んでいる。

 新しい動きとしては、プッシュ・ツー・トーク(PTT)がある(5月22日の記事参照)。PTTは米国で成功しているウォーキー・トーキー型の通話技術で、ボタン一つでグループや個人と対話ができる。Nokiaは今回のカンファレンスで、ネットワーク事業部においてGSM/GPRSオペレータにPTTソリューションを提供すると発表。端末としては、7700がサポート機種となる。PTTは欧州ではまだ知られていないが、欧州モバイル市場を牽引するNokiaが推進することで、音声版SMSとして受け入れられる可能性が出てきた。

 同社はその他にも、多機能を備えた「Nokia 6230」、ハンズフリー端末「Nokia 610 Car Kit Phone」やヘッドセットなどの製品を会期中に発表している。



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[末岡洋子, ITmedia]

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