テレビとモバイルの連携──それぞれの思惑:地デジ+モバイルが生み出す世界(1)(3/3 ページ)
地上デジタル放送の開始を機に、モバイルサービス事業者らが相次いでテレビと携帯電話をつなぐソリューションを発表。携帯電話を介して放送と通信が融合するという、新しい市場の開拓に乗り出す姿勢を見せている。各社が目指すサービスイメージや、放送局側の動きなどを追いながら、新しい市場を展望する。
意見が分かれるテレビ関係者
テレビ局側としては、1セグ放送が開始され、携帯電話でテレビ放送を受信できるようになれば、番組の露出が高まり、視聴機会や視聴時間の増加が期待できる。しかしその反面、テレビ視聴中にインターネットへ逃げてしまい、広告効果などが半減してしまうのではないかという懸念もあり、携帯との協力についてはテレビ局内でも意見が分かれているようだ。
テレビ朝日デジタルコンテンツセンターの西勇哉プランニングプロデューサーは、テレビに携帯電話が連携する役割を3つ挙げる。まず1つが事業展開で、新しいプラットフォームにおいて、オンラインでコンテンツの販売などを行っていくこと。そして第2が広報宣伝。第3が、番組をより楽しくする演出ツールの役割だといい、前述のIQ診断番組「テスト・ザ・ネイション」を例に挙げた。
また西氏は、携帯電話がテレビと融合することで、視聴者の反応を把握できるという点に最も関心があるという。これまでは相手の見えないままの番組制作であったが、手軽にネットへアクセスできる携帯電話によって、いつでも、どこからでも即レスポンスが返ってくる環境が整うのだ。
昨年12月には、テレビ朝日も独自にシステムを開発し、TCP/IP接続される地上デジタルデータ放送を利用した、携帯電話への誘導試験サービスを開始した。データ放送画面上で指定される欄に、テレビのリモコンを使って携帯電話メールアドレスを入力・送信操作すると、メール配信サーバに通知され、テレビ朝日専用の携帯サイト「テレ朝 com・plete!」のアドレスを記載したメールが携帯電話に送られてくるというものだ。テレビ番組に関連する詳細情報の取得や、データ放送を使ったショッピング番組の申し込みといった場面での利用が期待されるという。
とはいえ、インデックス、大日本印刷、サイバードらが開発したような携帯電話と連動する新しいソリューションをテレビ放送各局が競って導入しているわけではなく、様子見とする意見も多く聞かれる。あるテレビ関係者は、「可能性は感じているが、それらのソリューションを使って、どれだけ価値あるサービスが実現し、クライアントやユーザーにどれだけメリットを感じてもらえるのかは未知数。個人情報の保護なども配慮しながら、慎重にビジネスモデルやシステム導入の検討を進めたい」と未だ慎重な姿勢を崩していない。
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