苦境のボーダフォン、社長交代の真相(2/2 ページ)
業績低迷をうけ、社長交代に踏み切ったボーダフォン。現社長の津田氏は現状をどうとらえているか、なぜ組織にモロー氏という新社長が必要だったのか。
モロー氏は前出のとおり、現在Vodafone UKで社長を務める人物。サリーン氏が気軽に首をすげかえられる人物ではない。それでも津田氏の直訴を受け容れたのは、「日本市場の重要性をそれだけ認識しているからではないか」(津田氏)という。
こうした経緯から、モロー氏には相応のポストを用意しないわけにはいかない。今回の「社長交代」劇には、そんな津田社長の意図が隠れている。なお、津田氏は「『社長』という名前にこだわりをもってボーダフォンに入社したわけではない」とコメントしている。
会場では、津田氏とモロー氏の役割がどう異なるのかという点に質問が集中した。
津田氏は、モロー氏はVodafoneグループで要職を歴任しており、世界の通信事情に精通していると話す。一方で自分は国内の携帯キャリアの動向に詳しく、またそれを期待されてボーダフォンに入社したとコメント。“国内+海外”双方の知識を駆使し、両輪で事業を進めるほうがパワフルだと話す。
津田氏はまた、モロー氏がVodafoneグループ内で顔が利くほか、本国とのやり取りを行う際、言葉の壁もないと話す。日本法人と英Vodafoneとの“調整役”としての役割を期待している側面もあるようだ。
番号ポータビリティを控えて
津田氏は、ボーダフォンが今後取り組むべき課題は多いと話す。発売が遅れていた3G端末のラインアップが揃ったとはいえ、「それだけでは2月、3月の契約者数は改善しないだろう」。
ボーダフォンの冬商戦向け3G端末は“コンバージェンス”すなわち世界市場の中での端末ラインアップの共通化に重点が置かれているというのが津田氏の見方。しかし、日本市場がほかの欧米市場と異なることが、英Vodafoneでも理解されつつあるという。
「今年の夏に出るものは、より改善されるはず」
端末企画力のほかにも、解決すべき課題は多いと津田氏。現在は、なぜボーダフォンが受け容れられなかったかという理由を熱心にピックアップしているところだという。「ネットワークエリア、通話品質、端末機能、料金プランなど、原点に戻って見直す」
2006年には、携帯市場シェアに衝撃をもたらすと予測される番号ポータビリティが開始される。現状の勢いのままで番号ポータビリティを迎えては、ボーダフォンの業績低迷がさらに加速するおそれもある。津田氏は「(番号ポータビリティまで)長い時間が許されているわけではない」――と、緊張感を持って話した。
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