「着うたで排除勧告」の裏にあるもの(2/2 ページ)
着うたが独占されている? 公取委がレコード会社に排除勧告を行った。背景には、着うたと着メロの著作権処理方式の違いや、そもそも音楽の流通経路をどう考えるかという問題がある。
今回の排除勧告をめぐって、公取委とレコード会社の間ではいくつか意見の相違がある。
1つは、そもそもレコード会社5社がレーベルモバイル以外に許諾を行っていないか、という部分。もちろん、原盤権を持つ権利者が楽曲使用を希望した事業者に許諾を行うかどうかは、原則自由。ただし、一切認めない……となると事情は多少変わってくる。
レコード会社の中でもいち早く勧告への不応諾を表明した(3月24日の記事参照)エイベックスグループは、この点で事実の誤認があると指摘する。
「公取委が立ち入り捜査に入る以前(2004年8月の記事参照)から、我々はレーベルモバイル以外の事業者に許諾を行っている。そもそも、エイベックスとレーベルモバイルの関係は“非独占委託”である旨、契約書にも明記している」(エイベックス広報)
ただし、具体的にどれほどの許諾が行われたかについては、明らかにされなかった。公取委は、まさにこの点をつく。
「大手レコード会社がどのくらい許諾をしているのか、それについても調査の過程でつかんでいる。ここでは申し述べられないが、審判の場で明らかにする」(公取委の担当者)
もう1つ、ポイントになりそうなのが5社が「共同して」使用許諾を認めなかったのかという問題。
そもそも5社は、協業体制を築くためレーベルモバイルを立ち上げている。ある程度協調することは当然だが、これが“自らも許諾を拒否し、ほかの人間にも拒否するよう促す”関係となると独禁法でいう「共同の取引拒絶行為」となる。
では、こうした申し合わせがあったのか。実は、公取委の捜査では、証拠となりそうな合意書は見つからなかった。ただし公取委は「共通の『認識』は持っていた」として、5社が違法であると主張している。
ネット配信の流通経路はどうなる?
今回の議論のゆくえは、音楽業界に大きな影響をおよぼすかもしれない。一部の音楽業界関係者のあいだでは、この問題が着うた、着うたフルはもちろん、広く「音楽のネット配信のあり方」に影響する――との見方も出ている。
そもそも音楽のネット配信は、楽曲の流通経路をどう管理するかが問題になる。各レコード会社が原盤権を集中させたサイトが1つあり、そこから多くの楽曲がダウンロードできるという配信形態は、権利者にとって目がいきとどきやすい。ユーザーにしても、「あのサイトならたいていの曲が揃っている」というサイトが存在することは望ましい。
しかし、この場合当該サイト以外の音楽配信経路は認めない……ということにもつながる。これは音楽の流通形態として不自然だとの見方もあるだろう。
もちろん、公取委は着うたの問題を上記の議論と結びつけて考えていない。「PC向けの音楽配信と、着うたは違うものと認識している。そうした話にはコメントしかねる」(公取委の担当者)
いずれにせよ、今後は関係者のさまざまな思惑を背景に、公取委内で審判手続きが行われることになる。ここでの結論として出された審決は、行政処分に相当する効力を持つことになる。
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