WiMAXの技術としての魅力:ワイヤレスジャパン2005
モバイル業界で、WiMAXが注目を浴びている。関心を集める理由はどこにあるのか。「ワイヤレスジャパン」会場で、同技術の特徴が解説された。
モバイル業界で、WiMAXが注目を浴びている。平成電電やYOZANが同技術を使ったサービス開始を発表しているほか、KDDI、ソフトバンク、イー・アクセスといった事業者も興味を示している。これほど関心を集める理由は、どこにあるのだろうか。
13日に開幕した「ワイヤレスジャパン2005」のカンファレンス、「4G+IEEE802ワイヤレスフォーラム」では、WiMAXの技術上の特徴が解説された。詳細を見てみよう。
下り最大75Mbps、上り最大19Mbps
WiMAXには、固定向け無線の「IEEE802.16-2004」とモビリティ重視の「IEEE802.16e」がある。前者は2004年6月に標準化されており、後者は2005年9月に標準化完了予定だ。
通信速度は、いずれも下り最大75Mbps。ただこれは「どれくらいの帯域幅を利用するのか」に応じて状況が変わる。さらにWiMAXは、HSDPAなどでも採用されている“適応変調方式”を採用しているため、受信状態によってQPSK、16QAM、64QAMといったように変調方式を変える。当然ながら、これによって通信速度も変わる。
以下は、米Intelが公開している802.16-2004の伝送速度の表だ。
上りは最大19Mbps。下り通信が高速であることが注目されがちだが、上りも比較的高速だ。「Webカメラでハイビジョン映像を撮影して、アップできる。そんなことができる無線技術は、ほかにないのではないか」(YOZANの執行役員、小松宏輔CTO)
通信距離が長いのも、WiMAXの特徴だ。特に802.16-2004は、半径最大50キロをカバーする。これは、同技術がある方向を指定して電波を送受信する(指向性を持たせる)アンテナ技術「アダプティブ・アンテナ」をサポートしていることに関係がある。
複数のアンテナを利用し、その放射パターンを組み合わせて指向性を高める「ビームフォーミング」を実現することで、通信距離を長くすることが可能になっている。
さらに、プロトコルスタックの物理層がMIMOに対応している。これにより、単アンテナのシステムと比較して同じデータ・レートで広いエリアをカバーできるほか、カバー・エリアを狭く絞ればトレード・オフの関係でデータ・レートを引き上げることも可能だ。
WiMAXは、QoS面でも配慮されている。ARQ(Automatic Repeat Request:自動再送要求)に誤り訂正符号を加えた技術「ハイブリッドARQ」(3月24日の記事参照)に対応しており、「帯域の優先制御が可能。3Mbpsの映像なら3Mbpsをバチっと守ることができる」(前出の小松氏)。暗号化にも対応しており、802.16-2004の段階でトリプルDESとAESに対応。モバイルでは、さらなる認証機能強化が必要といわれている。
国内ではどの帯域を利用する?
国内でWiMAXサービスを提供することを考えたとき、課題になるのは「まだWiMAX用の帯域が確定していない」ことだ。
技術仕様上は、802.16-2004が11GHz帯より下の帯域、モビリティ重視の802.16eは6GHz帯より下の帯域を使うものとされている。もちろん、モビリティ重視の802.16eの場合、障害物を回り込んで通信できるように、より低い帯域を使うほうが望ましい。
諸外国の周波数動向は、以下のとおり。米国などは、複数の帯域をWiMAX用に割り当てている。
国名 | WiMAX帯域 |
---|---|
米国 | 2.5GHz帯、3.5GHz帯、5.8GHz帯 |
韓国 | 2.3GHz帯(*) |
英国 | 5.8GHz帯 |
フランス | 3.5GHz帯 |
ドイツ | 3.5GHz帯 |
オーストラリア | 3.4~3.5GHz帯 |
13日のワイヤレスジャパン2005講演では、YOZANの高取直社長が「WiMAXに必要なのはクワッドバンド、トライバンドの開発。4.95GHz、3.5GHz、5.8GHzのトライバンド、それに2.5GHzを加えたクワッドバンドとしていきたい」と話している(7月13日の記事参照)。
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