付きあってみたらいい人だった。そんな携帯です──開発陣に聞く「W43CA」(後編):「W43CA」開発者インタビュー
「A5512CA」の顔や「W41CA」のペンギンなど、最近のカシオ携帯で注目を集めているのが、待受画面やメニュー画面などのプリセットコンテンツ。「W43CA」でも、そのこだわりは健在だ。
今や、カシオ計算機製端末の“お家芸”ともいえるのが、待受画面やメニュー画面などのプリセットコンテンツだ。開閉するたびにさまざまな表情を見せる「A5512CA」の「顔」や(2005年5月の記事参照)、ユーモラスなしぐさが楽しい「W41CA」のペンギンは(3月2日の記事参照)、ユーザーからの熱い支持を集めており、そのこだわりは「W43CA」(8月28日の記事参照)でも健在だ。
インタビューの後編では、プリセットコンテンツへのこだわりやW43CAの目指した方向性ついてカシオの開発陣に聞いた。
“普通で品格がある”プリセットコンテンツを
W41CAのペンギンで注目を集めたカシオ端末のプリセットコンテンツだが、この部分を強化し始めたのはA5512CAからだったと、カシオ計算機 第四デザイン室長の井戸透記氏は振り返る。
「携帯電話全般を見たときに、当時のプリセットコンテンツはグラフィックデザインとしてレベルの低いものが多かった。カレンダーの写真のような南の島の写真が入っていたり、微妙なイラストだったり……。一方で、お金を払って購入するコンテンツは、作り手の個性が出ているものや、アート志向のものが多い。普通に使って品格がある携帯の画面デザインが少なかったのです」(井戸氏)
そこで、まだ他メーカーが本気で取り組んでいなかったプリセットコンテンツのデザインに本腰を入れた。「うちは、まだこれからのメーカーなので、他メーカーが作らないもの、だけど確実にお客さんが求めているものを作ることにこだわっている」(井戸氏)。プリセットコンテンツの開発もその一環だ。
端末と連携した画面デザインを徹底するため、組織も変更した。「当時、デザインセンターの中でも画面デザインを手がけるところとプロダクトをデザインするチームは別だったのですが、それだとどうしてもイメージやこだわりに差が出てしまう。A5512CAからは、(端末デザインを手がける)第四デザイン室で画面のほとんどをデザインするように組織を変え、プロダクトとがっちり手を組んで作っています」(同)
こうして生まれたのが、A5512CAの待受Flashの「顔」だ。開閉するたびに異なる表情を見せるだけでなく、時間との連動によるしぐさの変化も楽しめるこの待受Flash画面は、購入ユーザーから絶大な支持を得たという。「KDDIの中で画面デザインの満足度調査を行ったときに、同時期に出た端末の中ではA5512CAがトップでした。プリセットコンテンツをダウンロードコンテンツに変更しない比率もトップであるなど、がんばって作ったものが評価されたのは本当にうれしかった」(同)。このプリセットコンテンツへのこだわりはW41CAのペンギンでも踏襲され、“プリセットコンテンツにこだわるカシオ”を印象づけた格好だ。
「顔」がさらに表情豊かに、ペンギンもゲスト出演
新端末のW43CAでももちろん、プリセットコンテンツへのこだわりは健在だ。A5512CAユーザーがWINへの移行を検討する時期であることも考慮して、顔の待受Flashをバージョンアップしたものを搭載した。「顔の数がA5512CAの2倍以上に増え、季節やイベントとの連携にも対応しています。夏だと飛んでくる蚊を手で払ったり、花火をしたり。クリスマスにツリーが出てきたり、大晦日に年賀状を書いたりもします」(井戸氏)
新たなコンテンツとして用意したのは、「携帯の中に1つの街が入っているようなイメージ」の「街」だ。1つの街が3つのエリアに分けられ、開閉するたびに違う場所で違う人々が動く様子を見ることができる。背景は端末の時計と連動しており、朝、夕方、夜に変化。「朝は犬の散歩をしている人がいたり、昼はカフェのランチサービスに行列ができていたり、夜はどろぼうが歩いていたり……。背景が変わりながら、街の住人がいろいろなことをしている様子が繰り広げられるのです」(同)
そしてW41CAのペンギンテイストを感じさせるのが、デジタル時計。画面の右上に表示されるデジタル時計を、シルエットで描かれる動物たちがさまざまな方法で変えていくというものだ。
「時間を変えるためのいろいろなネタを仕込んでいます。キツツキが壁をつついて、ガタガタ揺れているうちに時計のパネルが落ちて時間が変わったり、イノシシがぶつかる衝撃で時間が変わったり……。W41CAで人気だったペンギンもちょっとだけゲスト出演しています」(同)
「つきあってみたら、いい人だった」──そんな携帯です
W43CAには、ソニー・エリクソン・モバイル「W43S」のあかりのようなような見た目のインパクトがあるわけでもなく、ワンセグを搭載した日立製作所の「W43H」や三洋電機の「W43SA」のような飛び道具的機能があるわけでもない。
しかし、ドコモから移行しても同じ感覚で利用できるEZニュースフラッシュやデコレーションメール、au固有の新サービス「EZチャンネルプラス」などの機能がバランスよく装備され(8月29日の記事参照)、2.6インチのワイド液晶も備えている。そして端末を開くたびに楽しい気分にしてくれる待受画面が用意されている。いずれも使い込むうちに、そのよさが実感できる要素だ。
「外見はちょっと地味だけど、つきあってみたらいい人だった──。W43CAはそんな携帯です」(井戸氏)
ちょっと地味といいつつも、その質感にはこだわりがある。「パールやメタリックが入っていた方が質感が高く見え、細かい表面の凹凸や成形のアラも隠せるのですが、W43CAではあえてごまかしが効かない全光沢のソリッドカラーを選びました。W43CAは文房具や雑貨のような存在をイメージしており、これらのものにパールが入っていることは少ないからです」(井戸氏)。レッドポストはスリーコート(三度塗り)仕上げで、一般的な二度塗りより手間もコストもかかっているという
“ハイエンドカメラのカシオ”は復活するか
カシオの携帯カメラに対する最近のアプローチは、“スペック上の高画素より機動性や撮った後の使い勝手を重視する”という方向で、3.2MピクセルCCDカメラを搭載した「W31CA」(2005年5月の記事参照)以上のカメラスペックを持つ端末はリリースしていない。
ただauのラインアップにシャープが加わったことで、auシャープ端末 vs. カシオ端末の「ケータイカメラ頂上決戦」に期待するユーザーも多い。
高画素カメラを搭載した端末の開発について、カシオ計算機はどのように考えているのだろう。
「W43CAは、A5512CAを使っていて、“これがWINだったら”と思う人にとって便利な機能を考えて作っていますし、タフネス携帯が欲しくて乗り換えられずにいた方々に対してはG'zOneシリーズを開発しました。高画素カメラを搭載した「W21CA」「W31CA」ユーザーが次に乗り換える機種が分かりにくいことは私たちも認識しています」(井戸氏)
携帯電話の開発にはキャリアの意向も影響するため、明言は避けたが、高画素カメラ端末の開発に含みを持たせるコメントだった。
関連記事
多機能な中に“普段着”の使いやすさを──開発陣に聞く「W43CA」(前編)
「W41CA」のスペックを引き継ぎながら、auのWIN向け新サービスの多くに対応したのが「W43CA」。開発陣は、使うほどに味が出る文房具のような端末作りを目指した。QVGAでのムービー撮影は可能か――「W43CA」
「W41CA」の使いやすさはそのままに、新サービスに対応し、各スペックを向上させた「W43CA」。ポケベル対応やフォントサイズ、画像編集機能など使い勝手についての質問が寄せられた。持ちやすさ、使いやすさ、楽しさを追求した2.6インチワイド液晶搭載機──「W43CA」
ロングセラー端末「W41CA」の後継機となる「W43CA」は、W41CAの楽しさ、使いやすさを継承しつつ、auの最新サービスにもしっかり対応した端末だ。どんな端末なのか、写真で紹介していこう。“ペンギン”のためにキャリアまで変える人
ケータイのデザインが“最重要”なポイントなのは、このところのトレンド。でも、メニュー画面や待受画面の良し悪しも、非常に重要なデザインだ。ワンセグ対応「W43H」とスタンダードな「W43CA」、9月21日から発売
KDDIは9月21日から、ワンセグが視聴可能な日立製端末「W43H」と、各種新サービスに対応したスタンダードなカシオ製端末「W43CA」を発売する。有機ELを採用したサブディスプレイの視認性は──「W43CA」
誰にでも使いやすく、親近感がわくオーソドックスなデザインを目指したという「W43CA」。まずは、その質感やサブディスプレイの視認性など、ボディ周りからチェックしていこう。ポケベル入力に対応しているのは?──「auの秋冬モデル」
「au秋冬モデルの“ここ”が知りたい」第1弾は、どの機能がどの端末に装備されているのかをチェックした。“穴”を埋めてMNPに臨む――auの新サービス8種
テレビ電話、デコレーションメール、待受画面へのニュース配信、アドレス帳やメール、写真の無料バックアップサービス……auが秋冬モデルで打ち出した新機能は、かなりMNPを意識したものだ。8つの新機能の詳細について、詳しく紹介しよう。Rev.A対応、デザインケータイなど総勢12機種──auの秋冬モデル
KDDIが12機種の秋冬モデルを発表。EV-DO Rev.A対応機やデザイナーズ携帯など多彩な端末をラインアップしており、初のシャープ製携帯もお目見えした。デコレーションメールやテレビ電話などの新サービスも登場する。【スペック表・サービス対応表追加】コンパクトボディに128万画素カメラ──「A5512CA」
カシオ計算機製の「A5512CA」は、コンパクトなボディに128万画素カメラを搭載した1X端末。フレンドリーデザイン対応で、約80デシベルのアラームブザーを装備する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.