「デザインのau」が目指す携帯の未来:KDDI&トータルプロデューサーの坂井氏に聞く(2/2 ページ)
「デザインのau」として市場を牽引したKDDIは今後、携帯のデザインをどのように進化させるのか。2006年秋冬モデルで「DRAPE」を手がけ、次期モデル以降に投入する端末群をトータルで監修するウォーターデザインスコープ代表 坂井直樹氏の考え、そしてKDDIが氏を“迎えた理由”を聞いた。
「DRAPE」は、一般モデルのデザインを底上げした最初の“象徴”
W47Tと適切な距離を保つという制約の中でプランニングされた、「DRAPE」のデザインコンセプトは、“プレミアム”“ラグジュアリー”、そして成熟を意味する“マチュア”という、3つのキーワードが軸になっている(2006年8月29日の記事参照)。
「景気が戻ってきて生活に余裕が出てきたこともあり、社会全体に本物志向というか、プレミアムやラグジュアリーを求める風潮が出てきた。一方で日本では、シンプルミニマムなトレンドが非常に長く続いている。そのトレンド自体はまだ続くと思いますが、今回はあえて意図的に、それとは少し違う方向にふってみました」(坂井氏)
坂井氏がDRAPEのコンセプトワークで意識したという「あえて意図的なデザイン」は、今後のauの携帯を語る上で欠かせないキーワードになりそうだ。
氏は昨今の携帯を「技術的に成熟する一方で、デザインが全体的に似通ってきている」と感じている。
「携帯は技術的に成熟しサイズもコンパクトに、一方でデザインの自由度も高まってきている傾向があります。もちろん端末メーカーはやはり売れる製品を作りたいですから、現在のニーズをくみ取ってシェアがとれるところを狙ってくる。その結果、どうしても似てくるというか、僕にはすごく狭い範囲にたくさんのデザインがあるように見えます」
「こういう流れは自動車などでも一緒で、工業製品のデザインは常に“同一化と再編”を繰り返しています。携帯は今、同一化のピークですが、ユーザーにはもっと多様な要求があるはず。例えばDRAPEは“大人”を意識したデザインですが、大人っぽいデザインを若い人が望むということもあるし、逆にカジュアルなデザインを好む年配の人もいます。そういう自由さも持ちながら、適切にセグメントされた枠組みの中で、あえて意図的にデザインの方向性をバランス良くコントロールしていくのが、僕らの役割だと思っています」(坂井氏)
しかし、その方法は決して「“auのデザインはこうだ”という考えを、メーカーに押しつけるものではない」(坂井氏)。「それぞれのメーカーの多様性、自由さも大切。その中で、我々がサポートできるところはしていく」と、全体的なコンセプトは軸に据えながらも、端末メーカーならではの個性も盛り込むシナジー効果を狙う。
また水野氏も「ひとつに固めてしまうのではなく、方向性を提示させていただいて、各メーカーさんからスペックやターゲットも踏まえて提案していただく。お互いに意見をやりとりしながら、最終的にデザインを詰めていきたい」と今後の展開を語る。
よほどのヘビーユーザー、あるいは業務上必要でない限り、基本的に所持する携帯は1人1台。ユーザーはその“たった1台”の携帯を選ぶために、ショップに足を運ぶ。だからこそキャリアは「その人にとってベストな1台を提供できるように」(坂井氏)端末を用意する必要が今後、永続的に生じてくる。
手に取って間近に見て触れる機会が特に多い携帯は、充実した機能も当然だが、とりわけ自分が気に入ったデザインをまとっていることは、所有する満足度の向上に大きな影響を与える。このことは、KDDI代表取締役執行役員副社長 中野伸彦氏が特に重要と述べる「auファンにさせる」ことへの大きな一因にもなるだろう。
「同じようなものをたくさん作っても仕方ない。すべての人に全部の機種を気に入ってもらう必要はないんです。もちろん数もある程度は必要でしょうが、それよりも各ユーザーに適切なバリエーションをいかに揃えるかが重要。また、筐体のデザインだけでなく、インタフェースやコンテンツ、ストアデザインまで、僕らの目から見るとやることはまだまだたくさんありますから、それを少しずつお手伝いし、形にしながら、auのブランドイメージを打ち出して行ければと考えています」(坂井氏)
今回関わったのは基本的に「DRAPE」のみだったが、2007年に投入する次期モデルでいよいよ坂井氏がトータルプロデュースを手がける製品群が登場する。au design projectというコンセプトを提示することで、「デザインのau」というイメージを得ることに成功したKDDI。コンセプトモデルだけでなく、今後は通常の端末でもそのイメージをいかに膨らましていけるか、auの携帯は“デザイン”を軸にそこまで先を見ている。
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