MVNOの定款化を迫るイー・モバイル千本氏、ドコモは反発:「モバイルビジネス研究会」第5回会合(2/2 ページ)
「モバイルビジネス研究会」の第5回会合には、3月31日に携帯電話事業を開始したばかりのイー・モバイルから千本倖生会長が登場。MVNOを活性化するための具体策を提案した。
MVNO事業活性化には「定款化」が必要不可欠
プレゼンテーションに続いて行われた自由討議では、端末のコストと、MVNOの活性化について議論が集中した。
研究会の構成員が各キャリアに投げかけたのが「キャリアやメーカーは、(端末の)開発コストがかかって値段が下げられないという、言い訳をしている。今後、プラットフォームやリソースの共通化は、どのようにしていくつもりなのか」という質問だ。
それに対してNTTドコモは「端末の開発だけではく、テストにもコストがかかっている。リソースの共通化は緊急の課題と認識しており、ドコモでは日本だけでなくモトローラやボーダフォンとも提携し、LiMo Foundationを立ち上げるなどの施策で共通化を進めている」と説明した。
KDDIは「ソフトウェア開発コストは全体に増大にしている。しかし、KDDIではワンセグなどの高機能化が進む一方で、KCP(KDDI Common Platform)によって端末ベンダーとソフトを共有化したことで、2年間で納入価格は10%も下げることができた」と、同社の共通化への取り組みとその有効性をアピールした。
MVNOに関しては、イー・モバイルの千本会長のプレゼンテーションのなかで、「定款化」という意見があったことで、定款化の必要性や3分15円という卸売価格は妥当なのかという質問が構成員から挙がった。
千本会長は、「新規参入事業者は、常に支配的業者にいる市場に入っていかなければならない。戦艦大和のようなドコモがいるところに、漁船のイー・モバイルが入っていくのは、とても大変なこと。ADSLやFTTHの時もそうだった。定款化し、環境を整備してもらわないと、小さいところが小さいままで終わってしまう。3分15円という根拠は、大きいMNOに対抗できる現実的な設定。MNOが赤字を出してまでもやってもらう必要はない」と、イー・モバイルが2008年に予定しているNTTドコモとのローミング(4月3日の記事参照)を踏まえたと見られる考えを述べた。
構成員からの「MVNOを定款化するのは、ドミナント(支配的)企業だけか、それとも3社一斉に導入すべきか」という質問に千本会長は「まずはドミナントだけ」と、ドコモに導入を迫った。ドコモは「シェアを減らし続けており、50%を超えているからといってドミナント企業と言われるのは心外。シェアだけでなく、収入、利益も落としている。MVNOに関しては十分に可能性のあるビジネスモデルだが、定款化や導入を義務化されるのには反対したい」と抵抗感をあらわにした。
千本会長はさらに「ADSLの接続料は800円から180円、さらに120円になった。MVNOでもまずはドコモの卸売り料金を提示してもらい、その妥当性をオープンな場で議論していったらいい」と、定款化については一歩も譲らなかった。
モバイルビジネス研究会、各キャリアの感想は
この5回目をもって、オブザーバが出席する会合が最後となるため、3キャリアが、販売奨励金やSIMロック、MVNOに関する総括を述べた。
ドコモは「この会合に参加して、いろんな意見があることを実感させられた。ただ、どの案をとっても、すべての人が満足するものはないだろう。インセンティブの不公平感は認識しており、是正するよう前向きに検討中だ。この業界の競争はいまの3社、4社だけではなく、インターネットを巻き込んだ市場になりつつあり、従来の固定通信市場とは違うと認識している。ぜひ我々も今後も成長を続けたい」とした。
KDDIは「販売奨励金は、課題もあるが、急成長を支えた原動力になったのは間違いない。一定の役割の評価はすべきだが、不公平感の指摘は確かに正しい。SIMロックを単独で議論するのは意味がなく、販売奨励金とセットで考えるべきだ。見直しの時点に来ているのは理解しているので、工夫しながら協議を進めていきたい。MVNOは、垂直統合だけでは限界がある。成功事例を作れるように推進していく」という考えを述べた。
ソフトバンクモバイルは「SIMロックの解除については前向きに検討したい。目的は利用者の選択肢を広めることにあるが、特定の事業者だけが導入しても何もメリットもない。SIMロックはすべての事業者が同時にやることによって、公平性が出てくると思う。インセンティブについては、弊社は割賦販売があるので、それによって解決できている。MVNOは付加価値のあるサービスが出てくると思うし、すでに複数の会社と協議しているしている」として、新スーパーボーナスなど、すでに他社よりも先駆けて導入していることをアピールした。
最後に座長である斉藤忠夫東京大学名誉教授は、「世界で仕様が決まっても、昔は国内にはNTTとKDDしかなく、両社が勝手に仕様を決めたので、日本国内で仕様を統一する場がなかった。しかし、世界のWiMAXの動向を見ると、各国に仕様を決めるフォーラムがあり、きっちりと機能している。現状、こうした組織が日本にはない。日本仕様を統一する組織をつくるといったことをやらなくてはならない」と日本規格の環境を整備すべきという考えが示された。
4月26日に開催される次回のモバイルビジネス研究会は、構成員だけの会合となる。
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