オープン化を望むMVNO、キャリアは慎重な姿勢:「モバイルビジネス研究会」第4回会合
「モバイルビジネス研究会」の第4回会合で主に議論されたのは、MVNO事業を展開するにあたっての課題について。オープン化を望むMVNOに対し、MNOとなるキャリア側は慎重な姿勢を見せた。
SIMロックや販売奨励金の是非、MVNOの展開など、今後のモバイルビジネスのあり方を議論する、総務省主催の「モバイルビジネス研究会」が3月19日に開催された。第4回の会合にはウィルコムとインフォニックス、フューチャーモバイル、東日本旅客鉄道(JR東日本)の4社の代表がオブザーバとして参加し、モバイル業界のビジネスモデルについて意見を述べた。
今回の研究会で議題に上ったのは、MVNOをどうすべきかという点。最初にプレゼンテーションを行ったウィルコムの平澤弘樹執行役員は、「ケータイと同じでは、PHSはかなわない」(平澤氏)ことから、同社が“PHSならでは”の施策として積極的に推進してきた、定額制の料金プランやW-SIM展開、MVNO事業についてビジネスモデルを説明した。
平澤氏が特に時間を割いて説明したのが、同社のオープン化構造だ。バンダイの「キッズケータイpapipo!」や、「nico.」をベースにしたベネトン、家電量販店モデルなどを例に挙げ、W-SIMを採用することで、端末だけでなくアプリケーションやサービスまでも自由な仕様で、MVNO的に利用できる点をアピールした。
また、日本通信(2006年10月の記事参照)やニフティなどがウィルコムの通信回線を使って展開するMVNO向けの無線IP通信サービスにおいても「ウィルコムでは通信速度に応じて料金を設定しているのが特徴。MVNO側で自由な料金設定が可能になっている」(平澤氏)とし、率先してMVNO事業を推進している現状を説明した。
サイボウズ子会社のインフォニックスで、MVNO参入事業者をサポートするMVNE(Mobile Virtual Network Enabler)事業を展開する藤田聡敏常務取締役は、「MVNEの視点からの問題意識と提案」というテーマでプレゼンテーションを行い、MVNOに参入する上でどんな問題があるのかを説明した。
今日のMVNOのビジネスでは「特定のセグメントを対象に、付加価値をつけた通信サービスを提供したい」と思って日本メーカー製の独自端末を開発しようにも、1ロットあたりの台数が30万台からとリスクが高すぎる点を指摘。また海外メーカー製端末で開発しようにも、プラットフォームはオープンながらユーザーインタフェース面で限界があるため「手詰まり感」が出てしまっているという現状も明かされた。
藤田氏が問題として挙げるのは、ソフトウェア開発プラットフォームがオープンではないために、独自のサービスが展開できないという点。そのため、PCのように開発者制限の排除やAPIの公開をすべきと訴えた。
フューチャーモバイルの木下眞希代表取締役は、“日本にも携帯電話の統一プラットフォームが必要”という観点から、韓国製携帯が躍進した要素の1つともいえる標準アプリプラットフォーム「WIPI」(記事1、記事2参照)の日本版の必要性を説く。世界でノキア端末が売れている背景には、「プラットフォームが1つなので、サービスが均一化していて展開しやすい」点があると指摘。また韓国製端末が海外で急激にシェアを伸ばした理由も「韓国政府が主導で、ソフトウェアの標準プラットフォームを作成したことが大きかった」という見方を示した。
こうした海外の成功事例から、日本でもキャリアを横断する形の携帯電話向けソフトウェアの標準プラットフォームを推進する必要があるという考えだ。端末内リソースを解放し、サービスプロバイダが開発したアプリでも、端末内のハードウェアをいじれるようにすることが必要だという。また、「音声、SMS/MMS、インターネットアクセスといった基本機能は、オープンな仕様にすることも不可欠」と付け加えた。
最後に登場した東日本旅客鉄道(JR東日本)の小縣方樹常務取締役は「運輸業におけるMVNO的業態」として旅行会社を例に挙げ、運輸業と旅行会社が手を組んだことで、市場が大きく成長したという事例を紹介した(3月19日の記事参照)。
参入条件の明確化を望むMVNO、キャリアは慎重姿勢
プレゼンテーションに続いて行われた自由討議もMVNOの話題が中心となった。
フューチャーモバイルから、「現状、MVNO事業を手がける際、MNO(回線を卸す通信キャリア側)との接続料が明らかにされていない。個別に交渉するのではなく、参入条件も明確化されているのがいい」という意見が出た。
これに対してNTTドコモやソフトバンクは「現在の段階では、MVNOは規模の違いやビジネスモデルなどが千差万別。事例が少なく、一律に決められない。条件やパターンを作れる状況にないので、個別に対応している状態」と説明。「ある程度、体系化できれば、条件を明確化することも可能ではないか」という見解を示した。
また、端末の標準化については、KDDIが「現在は、まだキャリア間でプラットフォームや技術の競争をしている段階。ただし、チップの範囲内では標準化を進めており、アプリケーションについても、BREWなどの導入でコンテンツプロバイダが参入しやすくしている」とした。NTTドコモも「端末プラットフォームの標準化は、セキュリティの問題がある。iモードはコンテンツプロバイダと協議しながら、中身を解放しつつある」と、早急な標準化には慎重な構えを見せた。
第5回の会合は、オブザーバにイー・モバイル、マイクロソフト、ぐるなび、三井物産、ACCESSを迎えて4月6日に行われる予定だ。
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