インタビュー

“P”が変えたこと、どうしても変えられなかったこと(前編)開発陣に聞く「P904i」(2/3 ページ)

ワンプッシュオープンに折りたたみボディ、そしてカスジャケ。今までの“P”の特徴を受け継ぎつつも「何か新しい。何か変わった」という印象を受ける端末に進化したパナソニック モバイル製のFOMA端末「P904i」。そのデザインにどんな意図を込めたのか、P904i開発チームに聞いた。

実は「カスジャケはなくてもいいのでは」とも

歴代の“P”の一部。左からP900i、P901i、P904i、P902iS、P903i。とくにP902iSまでは、4つのビスとレンズの“5つのマル”が際だち、ロボットのような“顔”を形成していた

 周防氏らは今回、デザインチームに「カスジャケは“P”の価値。これはなくさないでほしい。でもデザインの印象ががらっと変わるようなものにしてほしい」とリクエストした。

 “P”のアイデンティティであり、デザインの軸になっていたカスタムジャケットを残しつつも、見た目の印象を大きく変化させたい──。なかなか矛盾したリクエストのように思えるが、デザイン担当の古宮氏はそれほど深く悩むことはなかったようだ。

 「P900iから受け継いできたこのデザインの特徴として、カスジャケとカメラのレンズがあります。カスジャケを留める4つのビスと中央にあるカメラのレンズの“5つのマル”。じっくり見ると“ロボットの顔”のように見えますよね。これに思い入れがある人にとっては愛着のある“顔”で、変わってほしくないと思ってしまうのかもしれません。しかし、歴代の“P”を担当したわけではない僕自身は、じつはそれほど愛着がなくて(笑)」(古宮氏)

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 古宮氏の考えは「変える、変えない」ということではなく、“ごく普通にデザインすればいいのでは”というニュートラルなことだった。

 「正直言いますと、当初は“カスジャケはなくてもいいのでは”とも思っていました。あるいはカスジャケがあったとしても悪いように固執せず、今までとはまったく違う形で表現できるようなものにしたいと思いました」(古宮氏)

 歴代の“P”端末は、カスタムジャケットを装着しない「ノンジャケ」スタイルにできるモデルも存在したものの、基本はカスタムジャケットを装着するスタイルだった。

 対してP904iはノンジャケスタイルが基本型。単体でデザインを完成させ、“じつはカスタムジャケットも使えるよ”という考え方で開発された。もしP904iの開発チームの全員がカスタムジャケットのみに固執していたら、この変化はなかったのかもしれない。

 結果、P904iは単体でも完成されたデザインをまとい、カスタムジャケットはまったく異なる“顔”や個性を演出するためのアイテムとして採用するイメージになっている。

デザインモックの1例に採用されていた二つ穴のビス。汎用の盗難防止用ビスを流用したとのことで専用のねじ回しでないと外せないもののようだが、通常の六角穴ビスと比べるとボディ全体のイメージもやや異なって見える

 “単体で完成型”を、という考えはビス1つにも表れている。例えばカスタムジャケットは4つのビスで留める。そのビスを廃したらどうなるか。でもカスタムジャケットを容易に装着するにはビスが必要。それならば“ビスもデザインしてしまおう。そうすればノンジャケスタイルでもビスがアクセントになる……など。

 ちなみにビスの色は、従来機は総じてシルバーだったが、黒基調のアスファルトは黒色のビス、ピンク基調のローズはピンク色のビスといった具合にボディカラーに合わせたものを採用する。ノンジャケスタイルでも単体のデザインの完成度を下げたくなかったための施策だ。

 「ビスそのものの形状でも遊べればいいなとも思っていましたが、ユーザーの実用性を考えて従来の六角穴のものに落ち着きました」(古宮氏)

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