“P”が変えたこと、どうしても変えられなかったこと(前編):開発陣に聞く「P904i」(1/3 ページ)
ワンプッシュオープンに折りたたみボディ、そしてカスジャケ。今までの“P”の特徴を受け継ぎつつも「何か新しい。何か変わった」という印象を受ける端末に進化したパナソニック モバイル製のFOMA端末「P904i」。そのデザインにどんな意図を込めたのか、P904i開発チームに聞いた。
“P”らしさとは何か──。折りたたみボディに開けやすいワンプッシュオープンボタン、Bluetooth、音楽やゲームなどのエンタテインメント機能の豊富さ、そしてカスタムジャケットを想像するユーザーは多いだろう。その多くは「P900i」から受け継がれ、“P”端末のアイデンティティになっている。
では今回、ドコモが2007年の夏商戦向けモデルとして投入する「P904i」にどのような印象を受けただろうか。
P904iは、そのデザインにどんな意図を込めて開発した端末なのか。パナソニック モバイルコミュニケーションズのP904i開発チームにその真相を聞いた。
「P904i」開発チーム。左からデザイン担当のパナソニックデザイン社AVCNモバイルグループコミュニケーションチーム主任意匠技師 古宮幸昌氏、商品機構設計グループ設計第二グループ主任技師の山本孝一氏、プロジェクトマネジメントグループプロジェクトマネージャーの萩原裕照氏、デバイス・ファーム開発グループAVファームウェアチーム主幹技師の横山洋児氏、商品企画グループ主事の周防利克氏
「そろそろ飽きられてきているのかも」という思いも
「そろそろ、変わり映えしない──平たくいうと飽きられてきているのかもという思いが正直ありました」(周防氏)
“P”のアイデンティティの1つに「カスタムジャケット」がある。これはP900iで初めて採用した仕掛けで、背面パネルの色やデザインを、容易かつ自由に着せ替えられるものだ。
このカスタムジャケットは非常に好評だった。今でこそ、1機種に20色ものカラーバリエーションを用意する携帯や、ユーザーが好みでカスタマイズできる着せ替えパネル付き携帯が登場し、ボディ形状もスライドや回転2軸、サイクロイドボディなどの形状そのものに特徴のあるものも増えたが、当時は携帯のみで“自分好み”の個性を演出できるものは少なかった。そのため、カスタムジャケットは大きな注目を集めた。そのカスタムジャケットを軸にしたデザインは継承され、ハイエンドモデルの“P”端末にはなくてはならない特徴として浸透した。
しかし車などと同じく、携帯もデザインの流行は変化する。「カスタムジャケット」の軸は、多少のコンセプトの差こそあれ、デザインの根本は変わらないということにもなりえる。変わらないことは“安心感”につながるが、流行の移り変わりが激しい携帯業界にあって、“飽きられる”という不安が生じるのも当然だ。ちなみに当時、国内の出荷台数シェアで上位を競っていたNECも同様の悩みを抱えてたようで、「“変わらない安心感”はいつの間にか、“変わらないことへの不満”へと変化してしまっていたのかもしれない」(「N904i」のデザインインタビュー記事参照)と述べている。両社が同じように悩み、模索していたのは興味深いところだ。
今回、P904i開発チームは開発における根底のテーマとして“いかに新しく見せるか”を掲げた。
「もちろん新しくするからといっても、奇をてらったものにしてはいけません。こんなの“P”じゃない。前の方がよかったのにといわれてしまうようではすべてが台無しになりかねません」(周防氏)
「“王道の進化”。新しいスタンダードデザイン。P904iはそのようなものに取り組んでいかなければならないと考えました」(萩原氏)
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