ALPで世界市場開拓、ACCESS鎌田氏が講演:Linux+ミドルウェア+アプリケーションを提供
ACCESSは10月19日、同社の最新技術などを紹介するイベント「ACCESS DAY 2007」を開催。取締役副社長兼CTOの鎌田富久氏が、ACCESS Linux Platformなど、最新の取り組みについて紹介した。
携帯電話やモバイル端末、家電向けのWebブラウザ「NetFront Browser」の開発で知られるACCESSは、今後拡大するネット対応機器の組み込み市場に対して、OS、ミドルウェア、基本的なアプリケーションまでを含むプロトコルスタック「ACCESS Linux Platform」(ALP)を提供する計画だ。
10月19日、東京で開催された「ACCESS DAY 2007」で講演した同社取締役副社長兼CTOの鎌田富久氏が、ACCESSの最新の取り組みについて紹介した。
重要性が増す組み込み端末でのプラットフォーム
NetFront製品を搭載した端末の累計出荷台数は先月(2007年9月)に4億台を突破。特に直近の1億台については9カ月という短期間で出荷しており、「1秒間に5.2台という速いペース」(鎌田氏)だという。背景の1つとして開発コスト削減や開発期間短縮への強い圧力があるという。「従来の端末開発ではメーカーがアドホックにアプリケーションを作ってきたが、徐々に“プラットフォーム”でベースを共通化していく流れが本流になってきた」。 PCとケータイの違いもある。「PCと違うのは、ケータイでは1つ1つのアプリケーションの切れ目をユーザーが気にしないこと」で、起動や終了という明示的操作なしに相互連携が必要になってくる。そうした環境ではテストが難しいため、プラットフォームとして提供するほうが有利になるだろうという。
また、携帯電話も含めて、今後デジタル家電のような機器はマルチタスクで動く必要が増す。そうなったときに有利なのがLinuxだという。「必要なのはCPUのMMUを使ってメモリ保護ができるようなモダンなOS。CPUも単独のものから複数搭載したものが増えるのでスケーラビリティも必要。そうなると選択肢は少なく、LinuxかWindowsしかない」。
Linuxの強みはコミュニティがあること、という。新しいデバイスにどこか1社だけでだけで対応させるのは大変だが、OSSでは共通の土台で開発が進む。「Linuxでは全体のエコシステムが整っている。だからLinuxが選ばれている」のだという。ALPではミドルウェアやアプリケーションも提供するが、サードパーティーに対して開発を呼びかける。すでに北米や中国では開発者向けイベントを行うなど、「プラットフォーム全体で競争力があることが重要」という。
多様なUIを載せられることもALPのような“プラットフォーム”のメリットだ。鎌田氏は「iPod touch以来、フィンガータッチの要望が増えている。それ以外にも、インターネットにフォーカスしたもの、ウィジェットを多用したもの、3Dのビジュアル効果を多用したものなど、多様化するユーザーインタフェースをサポートしていく」とした。
ALP+配信ソリューションで世界市場を開拓
すでに欧州大手キャリアのOrangeがALPの採用を決めており、現在はOrage側のニーズを採り入れた“キャリアパッケージ”を共同で開発している最中だという。日本のケータイでは必須となった待ち受け画面のほか、「Orange TV」「Orange Music Service」など配信サーバも含めてキャリアにソリューションを提供できるのがACCESSの強みだという。
中国市場ではChina Unicom、Smartoneなどと契約済みで、配信サーバと端末側のアプリケーションをセットにしてSONY BMG、ワーナーミュージックなどの楽曲を配信するサービスを行っているという。鎌田氏は「DRM付き楽曲フル配信に対するニーズは高く。世界のマーケットを開拓していく」とした。
2020年には700億のデバイスがネットに接続
2008年をピークにSymbian OSの伸びが鈍化する。それと入れ替わるようにLinux搭載端末が台頭する。鎌田氏は、調査会社ABI Researchの予測データを紹介した。Linux搭載端末の出荷台数は2011年以降は30%を超える成長率となり、2012年にはLinux搭載端末が3~4億台に達する(2007年時点では数千万台の前半)という。
日本では、PCを使わずケータイだけでネットにアクセスするユーザー数は約7000万人。インターネットユーザー8700万と比べても大きな数で、モバイル端末でのネット利用がこれほど普及した地域はいまのところほかにない。しかし、「PCは高級品で8割とか9割の普及率が望めない途上国では携帯電話での情報アクセスに期待が集まっている」とし、「こうした分野で貢献していきたい」と話す。
2012年には70億人の世界人口の約半分、35億人がケータイでネットを使うことになるだろうと鎌田氏は予測する。また、2020年までにネットに接続された機器は人口の約10倍、700億台を超えることになる、ともいう。鎌田氏は、そうした膨大な数のデバイスが相互接続する時代に、シチュエーションによって異なるデバイスをシームレスに使えるような世界を実現したいと同社のビジョンを語った。
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