カーナビ市場の黒船となるか──ナビタイム「WND」の狙いと戦略:神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)
携帯電話向けの「NAVITIME」やクルマの同乗者向けの「ドライブサポーター」といったナビサービスを提供するナビタイムジャパンが、運転者向けに提供する新デバイスが「WND」だ。社長の大西啓介氏に、ナビタイムの成長とWNDの狙いを聞いた。
WNDの料金/サービス体系は検討中
このようにナビタイムのWNDは、新たなカーナビゲーションの形態として期待されるものだ。しかし、その商品化については、サービス提供のスキームや端末ブランドの在り方、料金体系など、いまだ検討中で不分明なところも多い。特に通信サービスが軸となるナビゲーションサービスだけに、料金体系は気になるところだろう。
「料金体系をどうするかは、まだ確定していません。ただ、我々の希望としては、WNDの端末価格に(一定の)複数年間のコンテンツ料金と通信料は『込み』にして販売したいとは考えています。ユーザー感覚でいっても、カーナビゲーションを買って、端末購入費とコンテンツ料金、通信費が別々にかかるというのは負担感があるでしょうから」(大西氏)
カーナビと通信サービスの料金体系を見ると、トヨタ、日産、ホンダの大手3社のテレマティクスサービスは、新車購入時に装着するカーナビゲーションの価格に一定期間のサービス利用料金を「込み」にしている。ナビタイムのWNDも同様の料金体系をイメージしており、その実現に向けて模索しているという。
“つながるナビゲーションサービス”を目指す
PNDの市場が成長する中で、虎視眈々と投入時期を狙うナビタイムのWND。大西氏はその潜在市場規模について、どのように見ているのだろうか。
「WNDの潜在市場について指標的な数字があるかというと、今のところありません(笑) ユーザー数はプロダクトとサービスを育てることで、ロードバランスを見ながら増やしていくものだと考えています。むろん、それに合わせてサーバ側の増強も行います。ただ、我々が(通信型カーナビを投入する上で)有利なのは、すでにサーバが運用されていることですね」(大西氏)
また、携帯電話に加えてWNDなどさまざまな端末が登場することで、PC向けWebサービスとの連携など、NAVITIMEの“つながること”によるメリットをさらに訴求したいと、大西氏は話す。
「PCで旅行や移動のプランを作り、クルマに乗るときはWNDで(サーバに)つなぐ。電車と徒歩ならば、携帯電話のNAVITIMEを使うといったようにサービス連携をするメリットは強く打ち出していきたいですね。NAVITIMEのサービスは、通信があるからこそ可能になる『つながるナビゲーション』であることに意義があります。そこを強調していきます」(大西氏)
景況感の悪化にともない、自動車販売市場は低迷しているが、それでも日本では約7000万台の乗用車・商用車が走っている。これらのうち据え付け型カーナビが普及しているのは約2000万台程度だ。残りの5000万台は今も“カーナビなし”であり、ここに新たなナビゲーション市場が厳然として存在する。
また、情報サービスやコンテンツビジネスの視座に立つと、実際に街を走り回り、豊富なセンサー情報が得られてバッテリーの心配もないクルマは、モバイル通信でサーバに「つながるナビゲーション」にとって宝の山である。
ナビタイムのWNDがどのような姿で登場し、カーナビ市場をどのうよに変えていくのか。また、その進化の過程でどのようなサービスやビジネスを生みだすのか。それらは「クルマと通信サービスの連携・融合」の可能性を見る上で、非常に重要な取り組みと言えるだろう。今後の動向に注目していきたい。
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