「インテルがいま訴求していることは、すでにやっている」──ARM、big.LITTLEとMaliをアピール
アームは、英ARM本社の幹部による「big.LITTLE処理」と「Maliグラフィックス」説明会を行った。
2002年にはマルチコアもコア単位の制御も実装済み
アームは、10月8日に英ARM本社の幹部による「big.LITTLE処理」と「Maliグラフィックス」に関する説明会を行った。big.LITTLEは、モバイルプロセッサーに処理性能が高いコアと省電力に優れたコアを混載して、システムの負荷が少ないときは省電力コアだけを有効にし、負荷が多い状態になったときには高性能コアも有効にすることで、システム全体で省電力と高い処理性能の両立を目指した技術だ。
英ARM本社 プロセッサ部門 マーケティングプログラム担当ディレクターのイアン・スマイス氏は、ARMの技術がコンシューマーを含めて幅広い領域に拡大し、ARMのプロセッサーをローエンドデバイスやウェアラブルデバイスに搭載するだけでなく、家庭電化製品や車にも使うなどコンシューマー向け製品に幅広く採用しているほか、サーバやハイエンドインフラ向けシステムでも使われている現状を紹介した。
スマイス氏は、ARMを搭載したデバイスをハブにして、1つのデータをすべてのデバイスで共有できることがARMアーキテクチャの優位点とした上で、ARMの技術を使うパートナーメーカーによって技術的な進化を実現した製品が数多く登場していると語る。スマイス氏は、エンドユーザーに近いパートナー企業がユーザーの意見を反映しながらARMアーキテクチャを進化していることが重要という。ARMの役割はこのようなパートナーメーカーがユーザーのリクエストに合わせて選べるプロセッサーとグラフィックスコアを幅広く提供することと述べている。
スマイス氏はARMのビジネスで中核になるのは「パートナーシップ」であると説明し、実質的にパートナーシップによって動いているARMのビジネスモデルとエコシステムがほかの半導体メーカーにはない特徴という。ARMが開発したプロセッサをパートナーメーカーが機会をとらえて採用することで次世代の製品を開発し、ARMはそのフィードバックを受けて次世代のARMを開発するのが、ARMの考えるエコシステムの“好ましい循環”だ。
ARMの新しい活用方法はパートナーメーカーに依存するとスマイス氏は話している。ARMはパートナーメーカーがどのように使うのかに関与できないので、彼らはARMが考えていないデバイスに搭載することもあるという。例えば、Cortex-A9は、モバイルプロセッサーとしてハイエンドスマートフォンへの搭載を想定していたが、パートナーメーカーの中には、車載システムや企業用サーバに搭載するケースもあるという。
スマイス氏は、インテルが最近になってアピールするIntel Speedstepやマルチコアといった技術について、ARMは2002年からDVFSという技術ですでに実装していたように、モバイルで必要になる機能については、すでにインテルの先を進んでいると語る。
説明会では、MTK6589Tを搭載するスマートフォン(TCLのIdol X S950)とインテルの“Clover Trail+”世代のAtom Z2580を搭載したレノボの「K900」で行ったベンチマークテストの結果を比較して、ARMアーキテクチャが処理性能と消費電力で優れていることを紹介した。
ARMデバイスでも必須となったグラフィックス性能
スマイス氏と同じ英ARM本社に所属するメディアプロセッシング部門 パートナーマーケティング担当上級副社長のデニス・ラウディック氏は、グラフィックスコアのMaliについて説明した。グラフィックスコアとしてMaliを組み込むパートナーメーカーは、特にAndroidデバイスを中心として増えているという。Maliシリーズで最も採用例の多いのはMali 400シリーズだが、2011年の出荷数が5000万個だったのが、2012年には3倍の1億5000万個に達し、2013年でもこのペースは変わっていないという。
スマートフォンなどでMaliの採用例が増えている理由として、デニス氏は、スマートフォンでもフルHD解像度やリアリティの高い画質への対応をユーザーが求めることで、従来より高い描画性能が必要になったほか、グラフィックスコアを並列演算処理に使う「グラフィックスコンピューティング」の需要も増えていると説明した。
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