分解して分かった「Xperia Z3」の“プレミアム端末学”:バラして見ずにはいられない(1/3 ページ)
人気の「Xperia Z3」にはどんなパーツが使われ、どんな製法で生産されているのか。ソニーモバイルがプレミアムモデルと位置付けるZ3の分解を通じて、その開発哲学に迫った。
一般的に、スマートフォンのグレードはハイエンド、ミドルレンジ、ローエンドの3種類に大別されるだろう。しかしスマホ人気が沸騰し、ハイエンドを遥かに上回る価格であっても飛ぶように売れる製品や、これまでには考えられなかった低価格の製品も登場するようになった。
その結果、ハイエンドの上位グレードといえる「プレミアム」、そしてローエンドよりさらに安い「エントリーモデル」という価格帯も誕生し、おおむね5つの価格帯に分けることもできる。
今回紹介するソニー モバイルコミュニケーションズの「Xperia Z3」は一括価格が9万円近い(NTTドコモの場合)。“プレミアムグレード”のスマホは一般的に600~650ドル以上の価格帯と言われており、約700以上ドルというのはプレミアムの中でも上の方だ。ブランドとして高価格路線を行くことに加え、他のグレードでは採用が難しい高額な部品や機構も使用されている。今回はプレミアム端末ならではの部品や材料、採用された技術について論じたい。
最上級のチップセット
チップセットとは、スマホや携帯電話の主要な機能を担当する主要なICの一式を指す。主要なICとは具体的に、3GやLTEといった各通信方式で送受信を行う通信用ICの「RFトランシーバ」、無線信号と端末内で処理するための信号を変換する「ベースバンドプロセッサ」、情報を処理し端末全体を制御する「アプリケーションプロセッサ」、バッテリーから供給される電力を管理する「電源管理IC」の4種類である。
1つのICで複数の機能を兼ねるのがチップセットであり、必ずしも4つのICがあるとは限らない。実際、Xperia Z3にはベースバンドプロセッサとアプリケーションプロセッサを統合した米Qualcomm製のチップセット「Snapdragon801 MSM8974AC」が使われている。Qualcommはチップセット市場で大きなシェアを持つのがであり、シェアが約7割と大きいことに加え、有力な特許を多く保有している企業だ。
MSM8974ACは演算ブロックを4基搭載するクアッドコアのプロセッサであり、動作周波数も2.5GHzと、発表時点では最も高速な部類の製品である。標準的なクアッドコアプロセッサの価格は約18ドル=2160円前後(1ドル120円換算、以下同)と言われており、最速クラスのMSM8974ACはさらに高価な部品と予想される。
またXperia Z3のLTE通信速度は最大150Mbpsである。従来、高速通信を実現するために2つのRFトランシーバを積んでいたが、Xperia Z3ではQualcomm製のRFトランシーバ「WTR1625L」1つで下り150Mbpsを実現した。通信用ICを統合することでコストは下がったと予想されるが、最新技術が詰まった高性能で高価なICを使っているのは間違いないだろう。
専用パネルを使ったディスプレイ
Xperia Z3が搭載する5.2型フルHD(1080×1920ピクセル)表示の液晶パネルは、ジャパンディスプレイ製である。液晶パネルにはサイズさえ合っていればどの製品にも使える汎用タイプと、製品に合わせてカスタムデザインされるものがある。プレミアム端末の多くはカスタムデザインの専用のパネルを使用しており、価格は高いが製品に向け最適化されている。
TFT液晶のTFTとはThin Film Transistor、つまり薄膜トランジスタのことで、液晶パネルには無数のトランジスタが組み込まれている。これらを駆動するために細長いICが液晶内に埋め込まれており、さらにその中には各種メモリが搭載され、補正用データを格納したり一時的にデータをプールする役割がある。価格はタッチパネルを含めて約30ドル=3600円前後と予想される。
関連記事
- 「バラして見ずにはいられない」バックナンバー
綱渡りもそろそろ限界? iPhone 6/6 Plusの分解で見えたAppleの“危険水域”
画面の大型化、NFCや気圧センサーの追加、対応周波数の大幅アップなど、ハードの進化が話題となったiPhone 6/6 Plus。分解してその中身を見てみると、部品メーカーの奮闘ぶりが見て取れた。“光学式手ブレ補正要らず”なXperia Z3のカメラ――「デジカメレベル」の性能に迫る
以前から高感度な写真を撮影できることに定評のあったXperia Zシリーズのカメラが、Z3ではさらに進化した。そのポイントは「高感度撮影」と「手ブレ補正」。これら2つを中心に、Xperia Z3のカメラで注目すべき点を聞いた。「Xperia Z3」でパープルを採用しなかった理由は?――デザインとカラーの意図を聞く
従来のオムニバランスデザインを進化させ、さらに洗練された「Xperia Z3」。インタビューの第2回では、デザインとカラーのこだわりを聞いた。ホワイトは前面も白く塗装した理由、そしてパープルを採用しなかった理由とは――。Z2から約0.9ミリ薄く、約11グラム軽くできた秘密とは?――「Xperia Z3」の中身はこうなっている
Xperia Z3を手に取ると、Xperia Z1やZ2から薄く、軽くなっていることを実感する。それでいて、機能は進化しているのだから驚きだ。Xperia Z3の厚さ約7.3ミリ、重さ約152グラムは、どのような工夫で実現したのだろうか? インタビュー第1回では商品企画と機構設計の担当者に話を聞いた。「Xperia Z」 日本の技術が可能にしたソニー独自の“中身”を分解して知る
名前だけで勝負できるメーカーとなると、本当に限られてくる。その数少ないメーカーの1つがソニーだ。Xperia Zが抜群の人気を誇るその理由を中身から見ていこう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.