韓国で人気のソーシャルギフト、日本での普及には何が求められているのか:佐野正弘のスマホビジネス文化論(1/2 ページ)
ネットでギフトを贈り合う“ソーシャルギフト”。韓国などでは人気だが、日本でままだまだ広がっていない。ソーシャルギフトを展開している各事業者は、どこに普及の鍵があると見ているのだろうか。
インターネットを介して簡単なギフトを贈り合う“ソーシャルギフト”。韓国などでは人気サービスとして定着しているが、日本では伸びているとはいえ、大きな知名度を獲得するには至っていない。ソーシャルギフトを展開している事業者は、どこに普及の鍵があると見ているのだろうか。
韓国で高い人気を誇るソーシャルギフト
「ギフト」と聞くとお中元やお歳暮などを想像する人が多いかもしれないが、最近では友達同士で、より小さな贈り物を気軽に贈り合う機会も増えている。“ソーシャルギフト”は、インターネットを経由してちょっとした贈り物をするのを支援する仕組みだ。
ソーシャルギフトを使えば少額の品から手軽に贈り合うことができるし、相手の住所や名前などを知らなくても、メールアドレスを知っていたり、SNSなどでつながっていたりすれば、気軽にギフトを贈ることができる。SNSの友達にオンラインで年賀状を送ったことがあるなら、それに近い感覚で利用できるサービスといえば分かりやすいだろうか。
このソーシャルギフトが、特に人気となっているのが韓国だ。韓国ではソーシャルギフトの利用率が他の国と比べてもひときわ高く、「giftishow」「Gifticon」などいくつかの人気サービスが生まれているほか、韓国で人気のメッセンジャーサービス「KakaoTalk」(カカオトーク)も、ソーシャルギフトサービスで高い売上を獲得していると言われている。
そうしたことから、ソーシャルギフトを日本でも広げようという動きが、現在積極的に進められている。実際、韓国で急成長したソーシャルギフトサービスが、日本市場に参入する動きが進んでいる。2014年8月には、「Gifticon」を運営するSK planetの日本法人であるSK planet Japanが、ソーシャルギフトサービスの「cotoco」のサービスを開始。また12月には、giftshowを運営するkt mhowsが、日本のバリューコマースと提携して「Gift Smart」の提供を開始した。さらに韓国のNHNを親会社に持つLINEも、今年4月より「LINE ギフト」でソーシャルギフト事業に参入している。
日本でも急拡大を見せるソーシャルギフト市場
ソーシャルギフト市場開拓に向けた動きは日本企業も進めており、その代表格となるのがギフティだ。ギフティはKDDIのインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo」の第1期生として参加した企業で、2011年3月にサービスを立ち上げた後、同年12月にはKDDIからの出資を受けるなどして、ソーシャルギフト事業を拡大してきた。
現在では自社サービス「giftee」によるコンシューマー向けのソーシャルギフト事業だけでなく、企業がソーシャルギフトを提供しやすくする法人向けプラットフォーム「eGift System」も展開。20万を超える会員規模を獲得するなど、国内のソーシャルギフト事業者としては代表的な企業の1社となっている。
そのギフティは8月5日にメディア向けのラウンドテーブルを実施。日本におけるソーシャルギフトの現在の動向について、さまざまな企業の代表者から説明がなされた。
市場調査やマーケティングなどを展開する矢野経済研究所の高野順次氏(ICT・金融ユニット)によると、既存の商品券やギフトなどの市場は、法人によるキャンペーンなどのニーズが下支えして大幅な減少している訳ではないが、ほぼ横ばいで推移しているとのこと。それに対してソーシャルギフトを含めたeギフト市場は、2014年度時点で82億円と、前年度比で182.2%の伸びを示し急成長を遂げているという。
この伸びには、特定の企業がeギフトを大量に活用したことが影響したとしているが、個人間でのスモールギフトに活用されるケースが増えていることも、伸びの下支えになっているという。eギフトが拡大している背景として、高野氏は「テクノロジーの進化、中でもブロードバンドによるオンラインの利便性が進んだことと、スマートフォンによるモバイル利用の拡大、そしてSNSの発達によってコミュニケーションの質と量が増えたことが大きい」と話している。
eギフトの今後について、高野氏は「2020年には1100億円を超える水準まで拡大する」と予測する。その理由として、紙の商品券やギフト券などがオンラインへ移行していく可能性が高いこと、福利厚生にeギフトを活用する流れが進んでいること、ギフトと同時に相手に贈るメッセージの自由度が高く、デザイン性の高い内容や動画などを取り入れられることで、効果的なギフトができて新しいニーズを創出してくれることなどが挙げられている。高野氏によると、矢野総合研究所でも社員の福利厚生にeギフトが使われるようになっているそうだ。
そうしたことを複合的に捉え、高野氏は今後、法人によるeギフトを活用したオンラインキャンペーンでの利用が増加し、それを受け取った人がeギフトの存在を知ることで認知度が高まり、個人間で利用する文化が浸透することにより、eギフトが普及するのではないかと話している。
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