目指したのは4Kではなく“最高画質”――ソニーモバイルが「Xperia Z5 Premium」で越えた壁:開発陣に聞く「Xperia Z5 Premium」(2/3 ページ)
スマートフォンでは世界初となる4Kディスプレイが注目を集めている「Xperia Z5 Premium」。なぜこのタイミングでの搭載を決めたのか? 肉眼でどこまでフルHDとの違いを識別できるのか? 消費電力は大丈夫? ソニーモバイルの開発陣に疑問をぶつけた。
4KとフルHDの違いは肉眼で分かるのか
―― 4Kディスプレイをどう楽しんでほしいと考えますか? 想定している利用シーンを教えてください。
板倉氏 まずは、2300万画素のカメラで撮った4Kコンテンツを、そのままの解像度で楽しんでほしいですね。また、4Kコンテンツ自体がまだこれからという状況なので、現段階では、YouTubeをはじめとしたコンテンツを、アップスケーリングしながら楽しんでほしいと考えています。
―― 正直なところ、4KとフルHDコンテンツの違いが肉眼ではよく分かりませんでした(発売前の試作機で確認)。拡大するとディテールは分かりますが。
尾崎氏 拡大するのはコンテンツの粗さをチェックしていることになるので、見方としては正しくはないですね。
―― どのへんに着目すれば、フルHDと4Kの違いを体感できますか?
尾崎氏 曲線や斜めの線が、一番解像感が出るところなので、精細な描写ほど違いが分かります。また、解像度だけを突き詰めているわけではありません。偏光板に特殊な処理をしていて、斜めからのぞき込んだ際も、黒が従来機種よりも締って見えます。これはZ5やZ5 Compactには取り入れていない、Xperia Z5 Premiumの差分ですね。
板倉氏 例えば、エッフェル塔、東京タワー、スカイツリーなど、幾何学的な模様は、フルHDだと表現しにくい部分があって、少しでもカクカクすると、“ディスプレイが映し出すもの”として捉えられがちです。4Kだと、現実的に物がそこにあるかのような臨場感が表現できます。
―― 写真や動画に“線”が多いと、より4Kの美しさを体感できると。
尾崎氏 はい。「猫のひげ」なんかもそうですね。デジタルで作られた表情ではなく、目の前に存在するかのように感じられます。
―― 今回の4Kディスプレイには、ソニーさんがテレビで培った技術も生かしているのでしょうか。
尾崎氏 (Xperiaに搭載している、写真や動画を鮮やかに表示する)X-Reality for mobileは、テレビ向けに提供されていたものを、スマートフォンに向けにアレンジしたものです。テレビほどリッチな駆動処理はありませんが、テレビ向けの軽量化した形で載せています。
Z5シリーズの進化点として、X-Reality for mobileをオンにすると、色が鮮やかになるのと同時に、調整の仕組みを、テレビで使われているものに近づけています。具体的には、色の1つ1つを要素として切り出して、強弱のチューニングを行っています。これまでは、青を強くすると多少緑が影響を受けたりしました。完全に色を分割するのは難しかったのですが、細かい要素をチューニングできるような仕組みになっています。
―― テレビの開発部隊も、今回の4Kディスプレイの開発には参加していたのでしょうか。
尾崎氏 アドバイスはいただいていました。そもそも4Kをうたう条件から始まりました。
―― 条件を満たすために苦労したところは?
尾崎氏 技術面でいうと、明るさですね。スマートフォンはさまざまな環境に持ち出すので、屋外でも見えないといけません。テレビよりも明るさが求められるので、ソニーモバイルとして、「一定の輝度を満たす」という条件がありました。
ディスプレイを5.5型にした理由
―― ディスプレイのサイズを5.5型にした理由を教えてください。例えば「Xperia Z Ultra」のように、6型の選択肢はなかったのでしょうか。
板倉氏 日本以外に視野を広げると、いろいろなサイズの要望があります。特に日本では小さいものが求められるという傾向があります。あまり極端に大きくしすぎると、広くあまねく使ってもらうのに影響が出てしまう一方、東南アジアをはじめとした地域では、「大きいと高級感がある」という価値観を持つところもあります。むしろ5.5型は小さすぎで、6型の方がステータスが高いという価値観もあります。
そこで、日本人が持っても違和感がなく、大画面がステータスとされている地域でも受け入れてもらえる、絶妙なバランスを考えて5.5型としました。
―― 地域によって画面サイズのバリエーションを変えることは?
板倉氏 複数のサイズはモックアップも作って検討はしましたが、現状はこのサイズのみです。
―― タブレットで4Kディスプレイはどうでしょう。いっそう迫力を感じられると思います。
板倉氏 そういう計画があれば、はい。
―― そもそもタブレットではなくスマートフォンから4Kディスプレイを実現させた理由は?
板倉氏 スマートフォンの中で突き抜けた商品を持ちたいというポートフォリオ上の考えと、技術の成熟が相まった結果です。内部でタブレットよりも先にスマホで4Kをやろうという議論はなかったですね。同じ時期でタブレットの話をしていれば、おのずとそうなったと思います。
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